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国土交通省総合政策最前線  令和4年度の新たな取り組み

おかの まさこ/昭和45年11月生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)。平成5年運輸省入省。13年経済協力開発機構(OECD)環境局(フランス・パリ)派遣、20年航空局管制保安部管制技術課航空衛星室長、21年東京大学総括プロジェクト機構特任准教授、25年観光庁総務課企画官、26年観光庁国際観光課長、28年国土交通省鉄道局都市鉄道政策課長、30年航空局航空ネットワーク部航航空事業課長、令和2年鉄道局総務課長を経て、令和3年7月より現職。
おかの まさこ/昭和45年11月生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)。平成5年運輸省入省。13年経済協力開発機構(OECD)環境局(フランス・パリ)派遣、20年航空局管制保安部管制技術課航空衛星室長、21年東京大学総括プロジェクト機構特任准教授、25年観光庁総務課企画官、26年観光庁国際観光課長、28年国土交通省鉄道局都市鉄道政策課長、30年航空局航空ネットワーク部航航空事業課長、令和2年鉄道局総務課長を経て、令和3年7月より現職。

発生から約2年が経過した新型コロナウイルス感染症。いまだ終息しないウイルスは、われわれの日常生活だけではなく、政策にも大きな影響を与えている。そうした中、ポストコロナに向けて国土交通省では令和4年度の政策の柱に「国民の安全・安心の確保」、「社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」、「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」を据えた。では具体的な内容はどういったものなのか。その内容について令和3年度の取り組みを振り返りながら、国土交通省総合政策局の岡野政策課長に話を聞いた。

国土交通省総合政策局
政策課長
岡野 まさ子氏

――令和3(2021)年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)がさまざまな面で影響を与えた年であったように感じます。そうした中、国土交通省として取り組まれてきた施策にはどういったものがあったのか、改めてお聞かせください。

岡野 まず2021年を振り返ると、緊急事態宣言下でなかったのは3月下旬から4月中旬、そして10月から12月とおよそ3カ月しかなく、そういう意味では一昨年以上に移動や行動に制限がかかった年だったといえます。そのため運輸・交通、観光業界は引き続き非常に厳しい状況にありました。また10月に緊急事態宣言が解除されたことで第三四半期は業績を持ち直した企業もありましたが、オミクロン株の蔓延を受けて、1月の業績は再度悪化している企業も多くみられます。

 例えば国内航空分野では、緊急事態宣言が解除された後、12月の輸送人員は新型コロナ以前の19年同月比で7割ほどまでに回復していましたが、1月にオミクロン株が蔓延したことで再度急落してしまっています。さらに国際航空分野については、水際対策の影響を受けて1割を切るような非常に厳しい状況が続いています。宿泊業などの観光事業も年末は回復傾向にあったものの、1月には再度落ち込みがみられます。

 こうした中で国土交通省の取り組みとしては、まず新型コロナで厳しい状況に立たされている事業者、先述した航空事業をはじめとする運輸・交通サービスや宿泊業を含む観光事業などに携わる事業者を支援し、事業の継続が確保されることを第一に取り組んできました。また、その上でポストコロナの新しい事業展開を見据えた投資促進も行ってきました。具体的には、経済対策にも盛り込まれていますが、各種支援策やデジタル化の推進、そしてカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みなどが該当します。

 もちろん新型コロナ対策以外にも、さまざまな施策を進めています。近年、自然災害が頻発化・激甚化していますが、そうした災害から国民の生命や財産を守るために、防災・減災を中心とした「国民の安全・安心の確保」については、引き続きしっかりと対応しており、20年12月に策定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に盛り込まれた施策を着実に実行に移しています。また、昨年7月には熱海市で大雨による土砂災害が発生しました。この土砂災害では〝盛土〟の問題が関心を集めました。そのため、国交省だけではなく、関係省庁とも連携し、今国会に法律案を提出するなど必要な対策を進めているところです。

 さらに防災・減災関係では、〝線状降水帯〟に関する施策もあります。次々と発生した積乱雲が帯状に連なり、大雨による被害をもたらす〝線状降水帯〟については、発生状況を知らせるだけでなく、今後はこれを早めに予測し、公表できるようにするため、予測精度の向などのための施策を前倒しで実施しています。

新型コロナの影響

――確かに2021年は新型コロナの状況を常に気にしていた年だったともいえます。では具体的に新型コロナが国土交通省の取り組みに与えた影響としてはどういったものがあったのでしょうか。

岡野 多くの取り組みが影響を受けていますが、顕著なものの一つにインバウンド事業があげられます。新型コロナ以前は、2020年の訪日外国人旅行者4000万人達成を目標に掲げ、毎年、訪日外国人旅行者が右肩上がりで増加し、その受入対策の充実が課題となっていたほどでした。しかし新型コロナによって旅行者数は激減し、インバウンド事業はその継続が危ぶまれるような状況になっています。

 とはいえ、新型コロナが終息し、インバウンドが息を吹き返したときにきちんと反転攻勢するためには、雇用を維持して事業を継続できるような体制を整えておく必要があります。さらにポストコロナを見越して、より魅力的な観光地にするために地域と一体となって観光地の高付加価値化を図ったり、観光地としての看板商品をつくれるようにさまざまな支援を行っています。このように新型コロナ対策とコロナ終息を見据えた施策など、いくつもの取り組みを交えながら、次を見据えた難しい舵取りをしている、そんな状況です。

令和4年度、国土交通省の取り組み

――そうした中、令和4年度に国土交通省として注力していく施策としてはどういった取り組みがあるのでしょうか。

岡野 基本的な考え方は令和3年度と大きく変わるものではありません。新型コロナの感染拡大に伴う移動や観光需要の減少に伴い、交通・観光関係事業者は未曽有の危機に直面しており、引き続き事業継続のための支援が必要です。これに加えて、気候変動の影響によって激甚化・頻発化している豪雨や大雪などの自然災害への対策も重要ですし、「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けたグリーン投資の加速、デジタル技術の積極的な活用、新たなライフスタイルを踏まえた分散型の国づくりなど、新たな時代のさまざまな要請にも適切に対応していく必要があります。

 このような現下の状況において、国民の命と暮らしを守り、社会資本整備や交通政策、観光政策、海上保安などの政策を通じて、国民の皆さまが安心して豊かな生活を送ることができるようにすることが国土交通省の使命です。このため、令和4年度は①国民の安全・安心の確保、②社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大、そして③豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり――の三つを柱として、取り組みを進めていこうと考えています。