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環境省/インド太平洋における脱炭素移行支援

多様な方式で広がるJC M

 環境省が推進する取り組みの一つがJCM(二国間クレジット制度)です。京都議定書におけるCDM(クリーン開発メカニズム)は国連条約事務局の下、途上国の排出削減で発行されたクレジットを先進国に移転または売買できる仕組みですが、手続きの煩雑さなどの問題点もあったことからJCMというスキームを2013年に立ち上げました。現在、17のパートナー国においてプロジェクトを実施中です。排出量削減目標は昨年1億トンに決定しました。発行されたクレジットで日本の取得分については、30年段階で温室効果ガス46%削減の目標にも活用できるという位置付けです。

 現在、民間企業のプロジェクトも環境省の補助スキームが支援することでJCMの事業として動いており、太陽光、小水力、都市、廃棄物、交通などさまざまな分野で実施中です。

 採択された案件は世界で205件、そのうち118件は運転を開始し、ベトナムやカンボジアなどでクレジット発行に向けて運営しています。今年度は30件、総事業費計310億円のプロジェクトを採択しました。大半が3カ年事業で3年以内の運転開始を目標に準備を進めています。

 日本がすべてを行うオールジャパンではなく、現地のパートナーと連携して広げるコアジャパンと呼ぶアプローチで進めている事業もあります。コア技術は日本が提供し、現地のメーカーが機器を作る。現地マーケットへのビルトインや、現地工場を作ることで多くの雇用を生むなど成功事例もあり、各地への展開を準備中です。

 また、日本の技術を海外で使う際の改良に対する支援として、コ・イノベーションによる脱炭素技術創出事業を行っています。相手国向けにリノベーションして現地で実証し、新しい技術やビジネスモデルを作るというプロジェクトで、2019年から21年にかけて採択を進めてきました。

 また環境省では国内で10の再エネ水素の実証プロジェクトを進行中で、その技術を活用した海外プロジェクトを今年度から開始する予定です。再生可能エネルギー由来の水素を作りJCM国で使うことで、日本での利用はもちろん、海外のマーケットも早期に作ることを考えています。再エネ水素を安く製造し、エネルギーコストが高い島しょ国に輸送して活用する実証事業もはじめており、今後3カ年事業として進める予定です。

 JCMに関して重要なのは、排出量を国際的に移転する市場メカニズムについて規定しているパリ協定の6条です。今までこの詳細ルールだけが決まっていませんでしたが、COP26でようやく合意に至りました。その交渉過程で、日本がJCMで実施した具体事例や2020年以前のプロジェクトで発行したクレジットの活用法と実際のインパクトの試算等を提供し、客観的な議論に大きく貢献しました。発生しうる問題等、実体論に合わせた議論を日本が主導し、今までの実績が世界の交渉に大きく活用されたのです。

 これを受け、11月26日に6条実施方針として三つのアクションを発表しました。

 一つ目はパートナー国の拡大。6条の詳細ルールに則したJCMの実績も認知され、早速議論を始めてます。

 次に民間資金を中心としたJCMの拡大です。環境省は資金支援スキームの一環でADB(アジア開発銀行)にJCM日本基金を設立し、拠出金は現時点で総額98億円です。ADBは基金を活用し、モルジブでは日本のバッテリー技術、モンゴルでは蓄電池とエネルギーマネージメントシステムが導入されました。他の国際機関にも連携を広げるため、今年から国連工業開発機関(UNIDO)にも拠出金を出してプロジェクトを作る予定です。

 また、民間企業からはクレジットを各企業の排出目標に活用したいという要望も高まっており、民間がボランタリーで進めていた環境事業をJCMの枠に乗せるガイダンスを作るため、各省と議論を始めています。

 市場メカニズムの世界的拡大が三つ目のアクションです。6条実施により年間90億トンのCO2削減が実現できうるという研究者の試算もあり、非常に大きなポテンシャルが見込めます。世界での市場メカニズムの普及と、その中での日本の技術の世界展開による排出削減を視野に、6条の理解向上や実施の推進活動を進めています。

JPRSIの設立と活用

 日本では2月末の時点で534の自治体が2050年までのカーボンニュートラルを表明しています。環境省ではその指針として「地域脱炭素ロードマップ」を昨年6月にまとめました。まず25年までに政策を総動員し、2030年までに既存の技術でゼロにできる地域をつくり、そのノウハウを他の都市に広げる。少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を作れば他の地域にも波及し、脱炭素ドミノが起きて50年を待たずにカーボンニュートラルが実現するという計画です。先行地域に対する交付金として年間200億円を22年度の予算要求に出しています。官民連携の出資・融資等による支援機構の設立も検討中で、そのための法改正案を国会に提出しました。

 都市間連携事業では現時点で13カ国41都市が参加し、21年度は19件が稼働中です。日本の17自治体が脱炭素化に向けて連携・協力をしており、東京都とクアラルンプール市、横浜市とダナン市の連携等が実施されました。コンソーシアムとして民間企業も参加したプロジェクトも実際に動いています。

 また昨年4月に日米首脳間で合意した日米気候パートナーシップに基づき、第三国の脱炭素社会への移行を支援する取り組みとして「日米グローバル地方ゼロカーボン促進イニシアチブ」を立ち上げました。まずは知見共有のため、3月9・10日に脱炭素都市国際フォーラムを日米で共催し、岸田総理からも都市の脱炭素化はゼロエミッション共同体の重要な要素と発信いただいたところです。今後はインド太平洋諸国での都市連携を日米で具体的に行う予定です。

 さらに官民連携でビジネス環境整備を進めるため、2020年9月に環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)を設立しました。環境というテーマで連携を図りたい企業や自治体、関係団体が参加しており、会員企業は製造業、建設業、金融業、商社、サービス業と多岐にわたっているのが特徴です。海外での動向等をセミナーやメルマガで発信したり、ADBや緑の気候基金(GCF)の調達情報や、日本の技術が生かせるプロジェクトの情報など、情報アクセス支援を行っています。

 企業の技術リストは日・英2カ国語で、企業ごと、分野ごとにまとめて発信しており、ニーズによって技術を見ることができるようになっています。会員企業が参加できる企業展示やオンラインでのビジネスマッチング、個別の案件形成も支援しています。外務省や在外公館にもJPRSIを活用してもらう体制を構築しており、現地政府や商工会議所からニーズがあった際は大使館が仲介する仕組みです。実際に在インド大使館、在ベトナム大使館を通じてマッチングを行っており、日インドネシアの環境ウィークでも2社の商談が成立しています。

 オンラインは直接対面とは感触が違って試行錯誤していますが、機会を広げるという意味で効果はあると考えます。今回のJCMで採択された案件の中には、過去のビジネスマッチングがきっかけとなったケースもありました。環境のテーマで関心を集めるという切り口はアプローチの一つとして今後も続けたいと思っています。

 環境省では、循環経済に関わる廃棄物分野の海外展開実現可能性調査事業や実証その他、さまざまな支援スキームがありますので、環境インフラに関するご相談をJPRSIにくだされば、ファイナンスやアプローチ法も含めてご紹介できると思います。
                                                (月刊『時評』2022年5月号掲載)