お問い合わせはこちら

集中連載「空の産業革命」実現に向けて

空に描く未来の姿
―ドローンの活用によって 新産業の創出と課題解決を目指す―

東京大学名誉教授未来ビジョン研究センター特任教授・鈴木真二氏
東京大学名誉教授未来ビジョン研究センター特任教授・鈴木真二氏

「空撮」などの影響で身近な存在となったドローン。現在ドローンは空撮だけではなく、物流、施設検査・点検、警備などにも活用できる新しい産業としても関心を集めている。そうした中、ドローン官民協議会の取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2019」では2022年度にはドローンのレベル4(有人地帯での目視外飛行)を目指すとしている。誰もが夢見た未来図の実現は近いのか。航空宇宙工学分野の第一人者であり、また「福島ロボットテストフィールド」の所長も務める東京大学の鈴木特任教授にドローンを取り巻く現状について話を聞いた。

――ドローンなどによる「空の産業革命」の現実に向けた動きが活発化しています。改めて日本の空を取り巻く現状、そして国際的な動向についてお聞かせください。

鈴木 無人航空機、いわゆるドローンなどは150㍍以下の空域を活動領域としていますが、人の乗せるような飛行機は離発着時などを除いて、このような低高度を使用しません。そのため、この低高度領域の新しい活用、またさまざまな産業への活用や取り組みを総じて「空の産業革命」と呼んでいます。

ドローンは、無人航空機として広く定義されていますが、現状、産業利用されているのは、バッテリーによるモーター駆動で、複数のプロペラ(通常、四つ以上)の回転数を制御して自由に飛ぶことができる――いわゆるマルチコプターが該当します。

マルチコプターは1990年代に出現していますが、その活用が広まったのは2010年にパロット(Parrot:仏)がホビー用に販売したことに端を発し、リチウムイオンバッテリーの実用化と半導体センサーや無線機器、CPUやカメラなど、分かりやすく例えるのならスマートフォンを構成する各機器の技術革新によって大きく花開いたといえます。そういった点からもドローンは飛行機を小型化したというよりは「空飛ぶスマホ」、あるいは「空飛ぶタブレット」といえるかもしれません。

そしてDJI(中国)が、高性能カメラを搭載して上空からの撮影、いわゆる「空撮」ができる機種を発売したところ、映像のSNS発信という世界的な文化と相まって急速に発展しました。

ドローンの活用については空撮がメインになっていますが、13年のクリスマスの時期にアマゾン・ドット・コムが注文したパッケージを届ける、いわゆる物流にドローンを用いたプロモーションが話題になりました。その後、わが国では工事現場の上空から撮影して工事の状況を把握したり、従来は人の手で行っていた測量を上空から複数の写真を撮影し、それを合成することで地形の3次元データをコンピュータで作り出すといった技術を開発。さらには橋梁やトンネルをはじめとしたインフラ設備の点検についてもドローンを用いれば作業を効率化できる、新しい産業の母体にもなりうるとして関心を集めています。

また物流については、18年度に国としてドローン物流が可能になる環境を整備するといった目標が立てられ、官民連携で取り組んできました。まだ過疎地などの無人地帯といった制限はありますが〝物を運ぶ〟という点については実証されつつあるというのが現状です……(続きはログイン後)

全文は、研究会員になることで読むことができます。

ログインはこちらから