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わが国のICT国際戦略/総務省 大森 一顕氏

総務省ICT政策最前線

おおもり かずあき/昭和44年12月13日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。平成5年郵政省入省、27年総務省情報流通行政局情報流通振興課情報セキュリティ対策室長、29年兼情報通信国際戦略局参事官(サイバーセキュリティ戦略担当)、同国際協力課長、国際戦略局国際協力課長、令和元年サイバーセキュリティ統括官付参事官(総括担当)、2年国際戦略局国際政策課長、3年7月より現職。
おおもり かずあき/昭和44年12月13日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。平成5年郵政省入省、27年総務省情報流通行政局情報流通振興課情報セキュリティ対策室長、29年兼情報通信国際戦略局参事官(サイバーセキュリティ戦略担当)、同国際協力課長、国際戦略局国際協力課長、令和元年サイバーセキュリティ統括官付参事官(総括担当)、2年国際戦略局国際政策課長、3年7月より現職。

 国際情勢の不安定化が増す現在、ICT(情報通信技術)は国家の経済・社会の存立において、不可欠な重要インフラだ。同時にICTの研究開発やグローバル展開はわが国競争力強化を図るためにも欠かせない。わが国は今どのようにICTの国際戦略、国際連携を計ろうとしているのか、大森課長に総務省関連分野の最新動向を語ってもらった。

総務省国際戦略局 国際戦略課長
大森 一顕氏

情報通信産業の国際状況

 本日は日本のICT政策における、総務省の担当分野について重点を置いてお話ししたいと思います。

 まずは情報通信産業に関する国際状況等の現状認識からご説明します。固定・モバイル共にブロードバンドの利用は拡大傾向が続き、例えば日本の場合、特にコロナ禍以後はインターネットトラフィックが急増して、コロナ禍以前は年率20%の増加だったのが、その後は18カ月で約2倍に増加しました。世界的に見てもIT支出は年間5%程度成長する見込みです。

 日本は国内ブロードバンドの整備状況が世界屈指で、固定系ブロードバンドに占める光ファイバーの割合は80・79%で韓国に次いで2位、人口100人当たりの回線数を基準とするモバイルブロードバンドの普及率は182・4で1位です。それに対し、情報通信産業は他の産業分野に比べて付加価値誘発額が高いものの年成長率はほぼ1%程度にとどまり、関連従業員数、関連研究者数・研究費、関連投資額は毎年ほぼ横ばい、つまり通信インフラの整備状況は非常に進んでいるものの、情報通信産業自体はそれほど成長していない、という状況です。一方で、ICTの財・サービスの輸出入は2010年代から輸入超過が拡大しています。また産業分野としては画像センサーや産業用ロボット、マシンビジョンなどに高い市場シェアを有している反面、通信機器類や移動体通信関連市場は大手のベンダーを擁する国々に比べてずれもシェアが低く、この点の成長が課題となっています。

 こうした背景のもと、世界と日本が抱える社会課題の解決と日本の技術・競争力の向上のため、ICTの研究開発からその社会実装、国際標準化、インフラ・システム・サービスの海外展開、国際的なルール形成までを分野横断的に一気通貫で取り組んでいく、これが総務省国際戦略局のビジョンとなります。

 国際社会の不安定化が増している中、デジタル分野の重要性はますます高まりを見せており、わが国の国際的なプレゼンス・影響力の維持・向上は極めて重大な国家的課題だと言えるでしょう。具体的には、①デジタル経済に関する国際連携、②経済安全保障の推進、③グローバル競争力強化(海外展開の推進)の三つの柱を通じ、デジタル分野のグローバルな課題に能動的に対応していくことが求められます。以下、各柱の状況と推進について見ていきたいと思います。

デジタル経済に関する国際連携

 2016年に開かれたG7香川・高松情報通信大臣会合において、国際社会における情報の自由な流通、AI、ICTによる包摂的成長等について議論を開始することが決定されました。以降の成果を踏まえ、日本としては引き続き、デジタル経済や国際的なルール形成に関する議論などに積極的に関与し、国際的な枠組み作りに貢献していく構えです。

 まず、国際ルール形成への取り組みについて。ここでは「人間中心」の考えを踏まえたAI原則、信頼性のある自由なデータ流通を表わすDFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)、そしてSDGs 達成に向けたデジタル技術活用、等が主な論点となります。このうちDFFTは、2019年G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合で日本から提案した概念であり、同年の大阪サミットにおいても当時の安倍元総理から発信がなされました。次いで本年にはGPAI(AIに関するグローバルパートナーシップ)日本会合が開かれ「人間中心」のAIを議論し、さらに来年のG7日本会合およびIGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)日本会合において、これまで進めてきた国際ルール形成への議論を一層深化させていくことが想定されています。

 GPAIとは、「人間中心」の考え方のもと、OECDのAI原則に基づき、「責任あるAI」の開発・利用を推進するため2020年6月に設立された、官民(マルチステークホルダー)による、国際連携イニシアティブです。本年1月時点で24カ国+EUが参加し、本年11月には日本が議長国として東京でGPAIサミットが開催されます。

 次に、二国間の政策対話の推進を図っています。代表的なのはやはり米国との対話で、昨年4月には日米首脳会談においてグローバル・デジタル連結性パートナーシップ(GDCP)の推進を図ることとなりました。日米で協力してグローバルに安全な連結性や活力あるデジタル経済を推進することを目的に、第三国連携、多国間連携、グローバルを視野に入れた二国間連携を推進していくものです。

 また米国やEU、東南アジア、豪州等とは定期的な政策対話を進めており、EUおよび英国とはそれぞれ協力枠組を構築しています。民間企業にも加わっていただき、官民会合を通じた官民連携の強化も図っているほか、来年日本ASEAN友好協力50周年を迎えるASEANと日・ASEANデジタル大臣会合も開催しています。さらに政策対話を通じた上で特定の国々とは協力覚書(Mo C)を結んでおり、直近2年間だけでもアジアを中心に5を超える国々と締結しました。

 そして、人的貢献も国際連携を強化する上で欠かせない要素です。直近でも2020年12月に行われたアジア・太平洋電気通信共同体(APT)事務局長選挙で近藤勝則・同事務局次長が当選、昨年8月の万国郵便連合(UPU)事務局長選挙で目時政彦・日本郵便㈱執行役員が当選しました。お二人とも旧郵政省出身で、特にUPUに関しては、計15ある国連の専門機関のうち日本は直近一つも各機関のトップに就任していなかったところ、同事務局長就任によってやっとその一角を占めるようになりました。さらに本年9月に行われる国際電気通信連合(ITU)の次期電気通信標準化局長選挙に尾上誠蔵・日本電信電話㈱CSSOを擁立(注:本講演後の9月30日実施の選挙において当選)するなど、関連する国際機関の要職に日本人の就任が近年相次いでいます。

 国際連携という意味では、G7は価値観の近い国同士で成り立っているものの、G20の場合は必ずしも同じ価値観を有する国ばかりではない、しかしG20は世界のGDPの85%を占める巨大経済圏であることから、そこにG7の〝自由でオープンなデジタル経済という価値観〟を拡張させていくことで、いかに世界的な経済成長を加速化させていくかが今後問われていくと言えるでしょう。

(資料:総務省)
(資料:総務省)

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