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【レポート】月島機械株式会社

新技術の確立によって地域資源循環社会の構築を目指す

 「最良の技術をもって産業の発展と環境保全に寄与し、社会に貢献する」という企業理念を掲げ、1905年の創業以来、産業の基盤となる装置・プラント設備や日常生活に欠かせない上下水道設備、さらには環境保全設備など、常に社会とそこに暮らす人々の想いに「技術」をもって応えてきた月島機械(中央区晴海、福沢義之社長)。なかでも近年多くの関心を集める事業・取り組みに水環境事業の下水処理施設(汚泥処理)分野がある。

 月島機械の取り組む汚泥処理には、①濃縮、②消化、③脱水、④乾燥、⑤脱水・乾燥、⑥焼却、⑦低温炭化による燃料化――があるが、⑤の脱水・乾燥については、国土交通省の進める下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)にも採択されている。

 2020年度のB-DASHプロジェクトに採択された「中小規模広域化におけるバイオマスボイラによる低コスト汚泥減量化技術実証事業」(事業実施者:月島機械・日鉄セメント・高砂熱学工業・室蘭工業大学・室蘭市共同研究体、実証フィールド:北海道室蘭市蘭東下水処理場)は、中小規模の下水処理場に脱水乾燥システムとバイオマスボイラを設置し、汚泥減量化効果やライフサイクルコストの削減を実証するとともに、広域汚泥処理や地域バイオマスの活用についても検証する事業。

 これまで、自治体の財政を圧迫する脱水汚泥処理費用を削減し、下水汚泥を肥料や燃料として有効活用することや中小規模の下水処理を効率的に管理する手法として広域汚泥処理が検討されているものの、汚泥の有効活用設備についてはスケールメリットが期待できないため事業採算性が取れない点、広域処理については、集約した拠点における設備の建設費用が大きいこと、化石燃料などのエネルギー使用量が増加する――などの課題があり、中小規模処理場間における広域汚泥処理の普及展開は進んでいなかった。

 そうした中、本事業では中小規模の下水処理場におけるエネルギー自立化、および広域化を促進するために低コストの脱水乾燥システムとバイオマスボイラを組み合わせた設備を適用することによって下水処理場内での熱利用を推進するとともに、汚泥を減量化することで汚泥処理に関わる委託費を削減。さらに近隣の下水処理場の汚泥に加え、木質などの地域バイオマスを活用することで、地域資源循環型広域化モデルの構築を図ることができるとしている。

 月島機械は本事業のうち、低コストの汚泥減量化技術を確立し、広域化モデルを構築するとともに、設備の設計・施工、および運転管理を含めたシステムの全体構築を担当。本事業を通じて中小規模下水処理場の下水汚泥の有効利用を促進し、ライフサイクルコストを縮減する広域化システムを確立することで地域資源循環社会の構築を推進するとしている。
(月刊『時評』2021年2月号掲載)