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緊急提言:危機下における明日への展望/保田博

防災の経験を糧に、 保健衛生の危機管理充実を

公益財団法人 資本市場振興財団顧問(元 大蔵事務次官)保田 博
公益財団法人 資本市場振興財団顧問(元 大蔵事務次官)保田 博

非常に狭くなった、世界

―――今般の新型コロナウイルス感染症が欧米を中心に世界各地で猛威を振るっています。こうした状況に対するご所感はいかがでしょうか。

保田 世界は本当に狭くなったなあ、と強く実感しますネ。私は35年ばかり大蔵省に勤務したのですが、その間を通じて通信、交通手段の発達により、ある意味では狭くなったとも言える世界の中にありながら、海外出張はともかく、海外勤務の経験が無く、自他ともに認める〝国内派〟でした。退官後の1994年、日本輸出入銀行総裁に就任したときも、周囲から〝マルドメ〟、などと呼ばれたものでした。〝ドメ〟はドメスティックの略語で、「国内」を意味しています。20世紀が終わろうという頃になって、主として国際社会を相手に仕事をする機関の職員にとっては、それまで仕事のほとんどを国内でやって来た私は、自分たちとは全く違う人種に見えたということでしょうネ(笑)。

 あれから四半世紀、世界の距離は格段に縮まりました。情報通信さらには交通手段の発達で、世界のどの国、地域の人とも昼夜の別なく連絡が取れるようになっただけでなく、ヒト、モノ、カネの相互往来も非常に緊密かつ活発になりました。今では、〝国内派〟〝国際派〟の意識の別など取り払われているのではないでしょうか?

 しかしそれ故に、今回の新型コロナウイルスの感染症がこれほど短期間に世界中に広がったことを考えると、世界が狭くなったということには、利便性の高まりと同時に、思わぬリスクもまた潜在していると痛感せざるを得ません。ある意味、グローバル社会の一側面を今回のパンデミックは如実に反映していると言えるのではないでしょうか。

―――この間、日本政府をはじめ各国はそれぞれ対策を講じていますが、とりわけ初期段階は手探り、試行錯誤をしているようにも映りました。

保田 それは、こうした平素ではなかなか想定しがたい緊急事態に対し、いかに対処すべきか、危機管理の在り方がいかに難しいかということの表れでもあります。

 分野は違えど危機管理という根源的なテーマに関しては私自身、在官当時に大いに苦労したことがあるだけに、今回のパンデミック対応においても、ある意味では狭くもなった世界の中で政府、そして行政がいかに困難な対応を迫られているのか、実によくわかります。