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地域経済最前線/関東経済産業局

「伴走型支援」がもたらす地域経済の未来

関東経済産業局長  ・⻆野然生氏
関東経済産業局長 ・⻆野然生氏

昨年夏から関東経済産業局で始まった、「伴走型支援」が注目を集めている。官から民への一方通行的支援を改め、官民連携による対話を軸とした〝個々に寄り添う支援〟によって中堅・中小企業経営者の課題設定と自走式解決を促すこの手法は、事業者の意識・組織・戦略を変革するだけでなく、行政支援の新たな分野を開拓するイノベーションとしての側面を持つ。福島復興支援の膨大な経験をもとに同支援に着手した⻆野局長に、そのポイントを語ってもらった。(このインタビューは、2020年2月19日に行われ、3月23日に最終校正を行いました。)

〝行政手法のイノベーション〟


―――まずは管内の景況からお伺いしたいと思います。


 ⻆野 昨年2019年前半の景況は「緩やかに改善」していたのですが、後半から相次ぐ台風の影響、暖冬、そして今年に入り新型コロナウイルスの影響で、現在は「足踏みがみられる」と、基調判断を下方修正している状況です。


―――やはり新型コロナウイルの影響は少なくないと。


 ⻆野 世界的に感染が拡大する中で、サプライチェーンやグローバル市場への影響、さらには株価など金融市場にも大きな影響が出ています。国内においても自粛ムード等の中で消費活動が大幅に減退、3月時点で多方面にわたり経済への厳しい状況が続いております。われわれとしては状況の推移を注意深く見守りながら、中小企業対策に万全を期す所存です。


―――その中堅・中小企業対策として昨年から、「伴走型支援」という新しい施策に着手なされたとか。まずは「伴走型支援」を着想された背景からお聞かせ願えれば。


 ⻆野 これまでの中小企業支援策は、どちらかと言うと「事業者が窓口に来たら相談に乗る」あるいは「補助金などの支援策を紹介する」といった、いわば役所側の理屈での対応であり、事業者とは一時的で一方通行的な関係が多かったと思います。しかし当事者である経営者側からすると、経営の改善を図ろうにもどうすればよいのか、具体的にどこに行って何を相談すればよいのか分からないという方も多く、有効な支援につながりにくい面がありました。つまり、これまでの行政は、本当に事業者目線、住民目線に立っていたのか、というのがそもそもの問題意識です。


 私自身は、前職で福島に移り住み被災地の復興支援に携わってきました。原発事故で被災した約5000の中小企業を個別に訪問、寄り添って事業再開を支援するチームを運営し、結果的に、支援を受けた事業者の多くの方が古里や避難先で事業再開するに至りました。しかも、多くの方が支援の過程で自らの事業への意欲を高め、腹を固めて事業を開始されており、その後社業を発展させています。この経験から得られたことは、役所側が事業者側に目線を合わせ、一緒に考えながら対話していくプロセスこそが大事であり、これにより事業者自身が何らかの気付きを得て自立に向けて動き出す、それが会社の団結力や意欲を高め事業の成功につながるのだという事実です。


―――個別に支援するというアプローチが、具体的な成果につながったわけですね。


 ⻆野 はい、これは被災地の支援に限らず、どの地域、分野でも共通する普遍的な意味合いを持っていると思います。つまり、役所側が行政対象の相手側視線に立って行動することで、事業者や住民側のニーズにより明確に応えることができる、そして相手側も行政との信頼関係の中でモチベーションを高め、潜在的な力を発揮できるので、より良い結果が得られることが多いと思われます。最初は手間がかかりますが、ノウハウが蓄積してくれば効率的に取り組めるようになります。


 この経験と実績に基づくノウハウをもとに、現職に就任後、中小企業に対する「伴走型支援」という手法を開発し、昨年6月に「官民合同伴走支援スキーム」として試行的に開始しました。この方式は行政と事業者の「対話型支援」であり、行政手法に新たなイノベーションをもたらすものと考えます。


課題解決力よりも課題設定力を


―――では、「伴走型支援」のイメージやポイントについて、教えてください。


 ⻆野 これまでの中小企業支援は……(続きはログイン後)

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