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国土交通省/下水道政策最前線

新技術導入に向けた下水道政策の取り組み ―プロジェクト開始から10年。B-DASHプロジェクトのこれまでの取り組みと今後の展望―

国土交通省水管理・国土保全局下水道部長 植松 龍二氏
国土交通省水管理・国土保全局下水道部長 植松 龍二氏

 われわれが社会生活を営む上で必要不可欠なインフラの一つである下水道。しかし頻発化、激甚化する自然災害への対策をはじめ、施設の老朽化やストックの維持管理、また人口減少に伴う財政の圧迫など抱える課題は多い。そうした課題解決の一つに新技術の導入があり、国土交通省下水道部ではそのための取り組みとして「下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)」を推進してきた。
 プロジェクトの開始からおよそ10 年。改めて下水道事業の抱える課題、B-DASH プロジェクトの概要とこれまでの取り組み、そして今後の展望について国土交通省下水道部の植松部長に話を聞いた。

――社会生活を営む上で必要不可欠なインフラの一つでもある下水道。改めて、わが国の下水道を取り巻く現状と課題について、そして国土交通省下水道部の業務、取り組みについてお聞かせください。

植松 まず下水道についてですが、2019年度末現在、下水道処理人口普及率(下水道による処理人口/総人口)は約80%。浄化槽などを含めると汚水処理人口普及率は92 %と、その数字をみれば、汚水処理施設の整備は相当進んでいるといえます。しかし、いまだに普及の進んでいない地域(全国約1050万人)があるなど、地域によってばらつきもありますので、未普及の解消は大きな課題だといえます。また普及の進んでいる地域においては、下水道施設、増大するストックをどう維持管理・改築、あるいはそれらをいかに有効活用していくかという点も大きな課題だと思っています。

 また平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風、そして令和2年7月豪雨など、近年、全国各地で豪雨による甚大な災害が頻発していますし、地震についても大規模地震の発生確率リスクが高まっていますので、いわゆる防災・減災、国土強靱化対策も大きな課題になっています。
 このように地域的にみるとさまざまなニーズがありますが、総体的に、防災・減災、国土強靱化も踏まえて、下水道事業の持続性向上を図ることが求められています。そのため国土交通省下水道部としては、普及対策とともに、浸水・地震対策、老朽化対策、広域化・共同化、あるいはPPP(Public PrivatePartnership)やPFI(PrivateFinance Initiative)、そして下水道資源の有効活用や収支構造の適正化などの施策を総合的に推進しているところです。

新技術導入の促進に向けて

――下水道事業の推進施策。技術開発などをはじめ、その具体的な施策の内容にはどういったものがあるのでしょうか。

植松 地域によって、さまざまなニーズがあることについて触れましたが、人口減少や厳しい財政状況・執行体制などを踏まえて各施策を効率的・効果的に実施していくためには、新しい技術の活用は不可欠といえます。そのため国としてもさまざまな施策を実施していますが、まず挙げられるのが国自ら新しい技術の実証などを行っている「下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)」です。

 また、開発した技術の全国的な普及を促進するために、下水道施設に対する財政的支援の交付に際しては、消化槽や焼却炉などは一定以上の性能を有する施設のみに交付を限定する、また一定規模以上の施設整備については関連するB-DASH プロジェクトの技術が導入可能か検討していただくといった要件を設けています。

 そしてデジタル化、あるいはDX(Digital Transformation)化に向けては……(続きはログイン後)

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