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持続可能な物流を目指して/国土交通省 平澤 崇裕氏

フォローアップ会合での議論

――大綱が策定されて約一年が経過し、本年9月には「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)フォローアップ会合」が開催されました。会合ではどういった議論がなされたのでしょうか。

平澤 最新の大綱の売りは、施策の進捗状況を有識者や関係事業者を交えた政策評価の場で検証することが記載されている点、そして進捗管理については大綱の中でKPI(KeyPerformance Indicator:重要業評価指標)を設定した点にあります。そのため9月のフォローアップ会合では、まず大綱で掲げられたKPI、現在の指数についての確認を行いました。

 取り組みによっては既に目標値を達成しているもの、あるいはこれからというものもありますが、会合では、それらを含めて行政の取組状況、そして民間事業者の取組状況について取り上げさせていただきました。行政側としては、デジタル化への取組状況、具体的には港湾局からサイバーポートなどの取組状況について、また物流DXの事例集についての説明やドローン物流の社会実装に向けた推進の進捗などについての説明をさせていただきました。

 事業者側からは、先述した農水産物分野における標準化の取り組み状況や戦略イノベーション創造プログラム(SIP)で実施している地域物流の取り組みについて紹介していただきました。

――事業者の取り組むSIPで実施している地域物流とは、具体的にどういった取り組みなのでしょうか。

平澤 フォローアップ会合では、SIPスマート物流サービスのプロジェクト内で、セイノー情報サービスが進めている「地域物流」の取り組みに基づいた、地域ごとの共同集荷・共同配送、地域間を結ぶ基幹集約輸送網を効率的に活用する〝配送計画サービス〟について紹介していただきました。

 これは地域内・地域間物流を共同輸配送することで、物流が抱える課題、つまりは物流品質とコストのバランスが悪く利益率が低い、あるいは積載率の低下や担い手(ドライバー)不足、そしてCO2の削減――の解決を目指すというものです。既に社会実装されている取り組みであり、また参画する事業者が増えれば、取り組みもより進みますのでこうした好事例についてはしっかり横展開していきたいと考えています。

――われわれの生活において欠かすことのできないだけに物流には高い関心が寄せられています。最後に物流政策の今後の展望、そして政策実現に向けた想いや意気込みについてお聞かせください。

平澤 物流は、われわれの国民生活や経済活動を支える重要な社会インフラの一つです。その物流が今、非常に深刻な課題を抱えている状況にあります。日常生活に欠かすことのできない物流が持続可能なものになるように国土交通省としてもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

 そのためには、物流の抱える課題や現状を知っていただく必要がありますので、物流に関する広報を強化していければとも考えています。今年度、物流に関する広報についての調査事業を実施し、広報戦略的なものを立案できればと思っていますし、9月には持続可能な物流の実現に向けた検討会を経産省・農水省とともに立ち上げました。来年1月には中間とりまとめが発表できると思いますので、そうした取り組みについてもしっかりと広報していきたいと思っています。

 私は、これを実施すれば物流の課題を解決できるという簡単な特効薬はないと思っています。持続可能な物流の実現に向けて、政策や取り組みを進めるのと同時に、多くのステークホルダーが抱える思いと同じ方向を向けるように広報活動も進めることで〝物流を元気に〟、持続可能なものとなるようにしっかりと汗をかいていきたい、そう考えています。

――本日はありがとうございました。
                                              (月刊『時評』2022年11月号掲載)

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