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令和6年度、国土交通省の新たな取り組み/国土交通省 小林太郎氏

国土交通省総合政策最前線

こばやし たろう/昭和46年6月生まれ、大阪府出身、東京大学法学部卒業。平成6年運輸省入省。23年国土交通省鉄道局総務課貨物鉄道政策室長、24年航空局航空ネットワーク部航空ネットワーク企画課航空交渉室長、26年一般財団法人運輸政策研究機構国際問題研究所主任研究員(在ワシントン研究室次長)、29年国土交通省大臣官房参事官、令和元年7月観光庁国際観光部国際観光課長、2年観光庁観光戦略課長、3年独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構監査・事業監理統括役、5年7月より現職。
こばやし たろう/昭和46年6月生まれ、大阪府出身、東京大学法学部卒業。平成6年運輸省入省。23年国土交通省鉄道局総務課貨物鉄道政策室長、24年航空局航空ネットワーク部航空ネットワーク企画課航空交渉室長、26年一般財団法人運輸政策研究機構国際問題研究所主任研究員(在ワシントン研究室次長)、29年国土交通省大臣官房参事官、令和元年7月観光庁国際観光部国際観光課長、2年観光庁観光戦略課長、3年独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構監査・事業監理統括役、5年7月より現職。

 われわれの生活をはじめ、産業、経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症が収束する中、疲弊した産業、経済の回復に向けた国土交通省の取り組みにはどういったものがあるのか。また「令和6年能登半島地震」をはじめ、近年、激甚化・頻発化する自然災害への備え、さらにデジタル社会の実現に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素社会に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進、そして「2024年問題」などについて、本年度の取り組みを振り返りつつ、次年度(令和6年度)の取り組みについて国土交通省総合政策局政策課の小林課長に話を聞いた。

国土交通省総合政策局政策課長
小林 太郎氏


コロナ禍を越えた令和5年度、国土交通省の施策

――令和5(2023)年度もさまざまな施策を進めてきた国土交通省。新型コロナウイルス感染症(以下:新型コロナ)もようやく落ち着きをみせる中、国土交通省の進めてきた令和5年度の施策についてお聞かせください。

小林 令和5年度を振り返ると、コロナ禍の厳しい3年間を乗り越えて、経済回復への明るい兆しが見えた一年となりました。まず国土交通省では、「経済財政運営と改革の基本方針2023」に基づき、未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現に取り組んできました。未来投資という点では、例えば、世界水準のデジタル社会の形成に向け、その基盤となる地理空間情報の充実をはじめ、インフラ分野のi-Construction、建築・都市の3次元モデル、交通・物流分野のMaaS、自動運転など、各分野でのデジタルトランスフォーメンション(DX)を進めてきました。また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けても、住宅・建築物の省エネ化、次世代自動車の普及、世界に先駆けたゼロエミッション船の開発や国際ルール作りなど、グリーントランスフォーメーション(GX)も積極的に進めてきました。

 一方で、昨今の物価高や、いわゆる「2024年問題」など、解決すべきさまざまな課題にも直面した年でもありました。このため、昨年11月に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき、まず物価高への対応として、資材価格の高騰なども踏まえた公共事業の実施に努めてきましたし、子育て世帯などに対して、高い省エネ性能を有する質の高い新築住宅の取得を支援するなど、必要な対策も講じてきました。また、「2024年問題」への対応として、物流や建設業でも、いよいよ来年度から時間外労働の上限規制が適用されることになりますので、長時間労働の是正や生産性向上などの働き方改革はもちろん、賃上げなどの処遇改善に取り組んできました。

 そして、令和6年の幕開けと共に発生した能登半島地震や、気候変動に伴い激甚化・頻発化する大雨や台風などの自然災害によって、各地で大きな被害が生じた年にもなりました。このため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、風水害や大規模地震などへの対策をはじめ、予防保全型のインフラメンテナンスなどによる老朽化対策、デジタル技術の活用に力を入れて取り組んできました。

 このほかにも、知床遊覧船事故を受けた旅客船の安全・安心対策の実施、新たな観光立国推進基本計画の策定、地域公共交通のリ・デザインのための新たな仕組みの構築、国土形成計画の策定など、本年度もさまざまな施策を展開してきました。

――2023年5月、緊急事態宣言の解除とともに新型コロナも収束の気配をみせています。改めて新型コロナによる影響、そして収束による政策・施策の変化にはどういったものがあったのでしょうか。

小林 新型コロナの影響によって、陸・海・空すべての輸送分野が危機に瀕したわけですが、なかでも深刻な影響を受けたのが「観光」でした。特にインバウンド事業は、海外からの客足が完全に途絶えてしまい、その継続が危ぶまれるような状況にまで陥りました。

 そうしたなか、本年度は反転攻勢、まさに観光立国の復活に向けて大きく歩みを進めることができました。足許の数字でも、2023年の訪日外国人旅行者数は約2507万人と、コロナ前の19年と比べて約8割まで回復しました。ここで中国からの旅行者数を除くと、実はすでにコロナ前を上回る水準に達しています。また、23年の訪日外国人旅行消費額は、円安・物価高の影響などもあって約5・3兆円と過去最高を記録しました。これは観光立国推進基本計画の目標(訪日外国人旅行消費額5円)を早期に達成したことになります。

 一方、あまりに急激なインバウンド回復であったことから、一部の地域や時間帯などによっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響、あるいは、旅行者の満足度の低下といった、いわゆる「オーバーツーリズム」の問題も生じました。

 このため、今後は三大都市圏沿いのゴールデンルートのみならず、地方部への誘客をより一層推進する必要があります。そのためにも、全国各地の観光地の魅力や付加価値を高めたり、その地域ならではの特別なコンテンツを磨き上げる取り組みの支援を通じて、持続可能な観光地域づくりを進めていかなければならないと考えています。