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物流のさらなる革新に向けて/国土交通省 髙田 龍氏

――改正物流法のほか、物流の革新に向けた取り組みとしてはどういったものがあるのでしょうか。

髙田 政府においては、23年6月に関係閣僚会議で決定された「政策パッケージ」に基づき、荷主・物流事業者間における物流負荷の軽減、物流産業における多重下請構造の是正、荷主企業の経営者層の意識改革・行動変容に向けた規制的措置についての法制化を含め、中長期的に継続して取り組むための枠組みの確実な整備を行っています。また「政策パッケージ」は、①荷主・消費者の行動変容、②物流の効率化、③商慣行の見直し――の3本柱で構成されていますので、この柱に沿って、政府の取り組みに触れておきます。

 第一に、荷主・消費者の行動変容に向けては、昨年は、消費者の行動変容を促す仕組みの社会実装を目指す「ポイント還元実証事業」を実施しました。また、本年6月以降「ラストマイル配達の効率化等に向けた検討会」を設置し、宅配ボックス、宅配ロッカー、置き配などの多様な受け取り方法のさらなる普及・浸透や宅配サービスの在り方の変革などについて、議論し、方向性を示しました。話がそれますが、この検討会では、地域の物流サービスの持続可能な提供に向けた環境整備についても方向性を示しています。

 第二に、物流の効率化に向けては、予算事業として支援しているものが多いのですが、自動フォークリフトや自動倉庫といった自動化・機械化設備の導入や、EVトラックなどの物流の脱炭素化を推進する、荷物を載せるパレットの標準的な規格・運用を取りまとめるなど、物流標準化やデータ連携の促進などにより、共同輸配送や帰り荷確保を促進してきました。またモーダルシフトの促進に向けた大型コンテナなどの導入支援や高速道路の利便性向上に向けたダブル連携トラックの運行区間の拡充、物流拠点の機能強化、デジタル技術を活用したサービスとして自動運転やドローン物流などの社会実装の加速に取り組んでいます。こうした取り組みに対し、われわれとしても必要な予算の確保にも努めたいと思います。

 第三に、商慣行の見直しに向けては、改正物流効率化法の施行に加えて、23年7月に設置した「トラックGメン」を、24年11月からは「トラック・物流Gメン」へと改組・拡充し、具体期には本省・地方運輸局などの物流担当部署、倉庫業者、各都道府県のトラック協会、総勢約360名規模への大幅な体制拡充を図ることで、情報収集機能を一層強化しています。

 本年(25年)は、10月と11月をGメンによる集中監視月間として、プッシュ型の情報収集などを積極的に実施し、適正な取り引きを阻害する疑いのある悪質な荷主などに対する是正指導を強力に実施しています。その際、Gメンと公正取引委員会が合同で荷主パトロールを実施することで、荷主などに対し、強いメッセージを発信しています。そして改正物流効率化法や中小受託取引適正化法などの周知啓発活動などの積極的な実施も行っています。

新たな「総合物流施策大綱」の策定と物流政策の今後の展望

――また2021年に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~25年度)」も本年が最終計画年度となることから、現在、新たな大綱策定に向けた検討会が開かれています。どういった議論が進められているのでしょうか。

髙田 わが国の物流については、30年度に想定される輸送力不足の解消や2050年カーボンニュートラルの実現、自動運転をはじめとする技術革新への対応など、大きな変革を迫られており、政府においては、輸送力不足が年々深刻化する30年までの期間を物流革新の「集中改革期間」と位置付けています。このような状況の中、物流を取り巻く諸課題への対応の方向性について検討を行い、今後の物流施策の在り方について提言を得るため、有識者により構成される国土交通省・経済産業省・農林水産省3省合同の「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」を25年5月に設置し、10月末までに6回開催しています。

 次期「物流大綱」では、物流改革の「集中改革期間」における物流を取り巻く課題に的確に対応できるよう、

・30年度に想定される輸送力不足に対応するための物流革新の新機軸の検討や輸送力見通しの再検証
・わが国の国際競争力の強化に向けたサプライチェーンの基盤強化
・災害などの有事に備えた強靱な物流の構築・確保

――などの取り組みを強力に推進する必要があり、国土交通省としては、関係省庁とも連携しながら、有識者検討会の提言を取りまとめ、次期「物流大綱」の策定を進めていきます。

――「2024年問題」を経て、また新たな岐路に立つ物流。最後に物流の維持・健全化、そしてさらなる発展に向けた今後の展望や政策実現に向けた思いや意気込みについてお聞かせください。

髙田 物流の「2024年問題」は、一過性の問題ではありません。人口減少・少子高齢化が進む中、むしろ年々深刻化する構造的な問題であり、個々の荷主や物流事業者、消費者が、企業や業界の垣根を越えて、今こそ物流革新の実現に向けて協力していかなければなりません。24年を契機として、官民の連携が進展し、継続的に対応していくことが肝要です。

 個人的には物流はまだまだ伸びていく分野、産業だと思っています。物流革新の取り組みが進むとともに、社会に実装され、国民生活の向上や経済の発展につながるよう、関係者と協力して施策を前に進めていきたいと思います。

――本日はありがとうございました。
                                                (月刊『時評』2025年12月号掲載)