
2026/01/19
社会経済活動を営む上で欠かすことのできない物流。しかし近年、運送の小口化や荷主ニーズの多様化に伴う需要過多、環境規制への対応、そして人口減少に伴う担い手不足などに端を発した物流の「2024 年問題」――など物流を取り巻く状況は大きく変わりつつある。物流の停滞が懸念された「2024年問題」から1年。一般的に物流危機といった状況は回避できたようにも感じるが、問題が顕在化するのはこれからだという声も聞こえる。では、物流危機の回避に向けて政府や物流事業者はどういった取り組みを進めてきたのか。物流を取り巻く現状と課題から物流課題の解決に向けた一連の取り組み、そして今後の展望について国土交通省物流・自動車局物流政策課の髙田課長に話を聞いた。
物流・自動車局物流政策課長 髙田 龍氏
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物流の「2024年問題」から1年。物流を取り巻く現状と課題
――国民社会や経済を支える重要な社会インフラの一つである物流。しかし近年、さまざまな要因から物流を取り巻く状況は大きく変化しています。物流の停滞や輸送能力不足が懸念された「2024年問題」から1年が経過しましたが、改めて物流を取り巻く現状と課題についてお聞かせください。
髙田 物流はわが国の国民生活や経済を支える重要な社会インフラであり、営業収入の合計は全産業の2%、従業員数は全就業者数の3%を占める重要な産業です。また、国内貨物のモード別輸送量は、トンベースでは自動車が9割以上、トンキロベースでは5割以上を占めており、日本の物流において自動車は非常に重要な役割を担っています。しかしながら、トラックドライバーの労働環境・雇用環境は厳しく、全産業平均と比較すると、年間労働時間は約2割長く、年間所得額は約1割低く、有効求人倍率は約2倍です。
このような中、物流産業を魅力ある職場とするためトラックドライバーに対する時間外労働時間の上限規制が2024年4月から適用され、一人当たりの労働時間が短くなることで、何も対策を講じなければ物流の停滞が生じかねないという、いわゆる物流の「2024年問題」に直面していました。
具体的には、時間外労働の上限規制について、36協定の締結を条件とし、臨時的な特別の事情がある場合には、上限を最大年960時間とする上限規制が5年間の猶予を経て適用されました。あわせて、トラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」が適用され、拘束時間などの規制が強化されました。
この規制により、長距離輸送業者は1日で移動できる時間が限られることになり、これに伴って運べる量が減少することで輸送力が不足し、これまでのようにものが運べなくなる可能性があると推計されたため、これらの課題への対応が急務となりました。
このような物流の「2024年問題」については、これまでのところ「政策パッケージ」(「物流革新に向けた政策パッケージ」23年6月策定)に基づく官民での取り組みなどの成果により、25年度に入ってからも、物流の機能を維持できていると認識しています。
一方で、荷待ち・荷役時間については、20年度と比べても平均約3時間のまま横ばいであることから、本年(25年)4月から施行された改正物流効率化法の荷主などへの規制の着実な執行など、短縮に向けた取り組みを強力に推進する必要があると考えています。
改正物流効率化法の概要、ならびに「政策パッケージ」取り組みの進捗
――荷待ち・荷役時間の短縮など現状の物流が抱える課題に対して政府は、改正物流法案を国会に提出し、成立。24年5月には改正物流法が公布。本年4月には、その一部が施行されています。では改正物流法の概要についてお聞かせください。
髙田 荷主や物流事業者などに対して、物流の効率化、多重取引構造の是正に向けた取り組みを義務付けるなどの規制を設ける「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」が24年5月15日に公布され、25年4月1日より一部を除き施行されました。
この法律により法律名を含めて改正された「物資の流通の効率化に対する法律」(改正物流効率化法)の規制的措置のポイントについてお話しします。本改正法は、荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置を努力義務として、その努力義務に対して国が判断基準を示し、その基準に基づいて指導や助言、さらに調査結果などを公表していく仕組みになっています。このうち、努力義務の具体的な内容については、すべての荷主・物流事業者に対する規制的措置として、物流効率化に向けて取り組むべき措置(積載効率の向上、荷待ち・荷役等時間の短縮など)が課されることとなりました。また、国が合わせて策定した判断基準(省令)により、積載効率の向上や荷待ち・荷役等時間の短縮などに向けて取り組むべき事項について、荷主・物流事業者ごとに具体化されています。
①積載効率の向上については、適切なリードタイムを確保すること、貨物の入出荷量の適正化を図ること、配車計画や運行経路の最適化を行うこと、このような取り組みに向けて協議があった場合には協力し、社内でも関係部門間の連携を図ることなどが具体的な取り組み事例として判断基準などに明記されました。
②荷待ち時間の短縮については、貨物の入出荷・納品日時の分散やトラック予約受付システムの活用などによるトラックの到着日時の調整、また寄託先への入出庫の前倒しにより寄託先における貨物の受け渡しを行う日時の分散を行うことなどが判断基準に記載されています。
③荷役等時間の短縮については、標準仕様を含むパレットの導入フォークリフトや荷役等作業員の適切な配置による荷役などの効率化を図ること、荷役情報の事前通知や検査を効率的に実施するための機械の導入などによる検査の効率化、荷役などを円滑に行える環境整備などが判断基準に記載されています。
加えて、26年4月1日施行内容として、物流効率化への寄与度が大きい一定規模以上の荷主・物流事業者を「特定事業者」として指定します。特定事業者は、原則5年間ごとに物流効率化へ向けた今後の取り組むべき事項をまとめた中長期計画や判断基準で定める努力義務の具体的内容の取り組み状況を記載する定期報告書の提出(1年ごと)が義務付けられます。また特定事業者のうち、荷主やフランチャイズチェーンの本部のような連鎖化事業者には、物流統括管理者(いわゆるCLO)の選任が義務付けられます。物流統括管理者には、物流全体の持続可能な提供の確保に向けた業務全般を統括管理する役割が期待されます。