
2026/02/13
「交通空白」解消を確実に進めるためには国・地方といった行政だけではなく、民間事業者の協力も不可欠です。そこで24年11月から「「交通空白」解消の官民連携プラットフォーム」を立ち上げました。当初167の団体で発足しましたが、25年10月末の時点で全国約半数の自治体を含め、会員数1319まで大幅に会員が増加しています。民間事業者の内訳をみると、デジタル、エネルギー等むしろ交通系以外の分野からの参加も多く、地域課題を各社が有する技術、ノウハウで解決していく、それがまた今後の事業化につながるという意識が見て取れます。スタートアップ企業も多数参加しており、こうした意欲ある民間事業者の技術やノウハウをプロジェクト化していく〝パイロット・プロジェクト〟を全国各地で進めているところです。
一例として、「九州MaaS」の取り組みが着目されます。通常、QRコードで乗車チケットの認証をするという仕組みは、それぞれのモードごと、事業所ごとに展開するのが一般的なのですが、「九州MaaS」ではモードを超えた認証によりチケットレスで乗車できる仕組みを導入しており、これをさらに広域的に発展させていくべく、仕様の異なるエリアでの標準化を図る取り組みが進んでいます。また、一つの自治体、一つの事業者の枠を超え、共同化・協業化を目指す動きがいくつかのエリアで展開されており、例えば茨城では四つの市が集まって一つの交通モードの共同運営を図る取り組みが進んでいます。
日本で初、「交通空白」調査の実施
25年はこのプロジェクトのさらなるバージョンアップに向け、まずは昨年冒頭より、「交通空白」に悩んでいる地区がどのくらいあるのかリストアップ調査を行いました。このような形での調査が実施された例は過去になく、おそらくわが国で初めての調査となります。その結果、「交通空白」につき何らかの手立てを講じるべき、と当該自治体が認識している地区が717自治体、2057地区にのぼること、当該地区に居住する人口は総人口の12・5%にあたる1407万7000人、面積にして国土の実に26・7%にあたる9万4212㎢に達することが明らかとなりました。これらの結果に加え、未然防止が必要な要モニタリング地区を加えると、合計で約3700地区、全自治体の半数超、総人口のほぼ2割、国土面積の4割強にも及びます。
また、駅、空港、港湾など全国の主要な交通結節点1028地点を対象に、交通結節点からの二次交通である「観光の足」についても同様の調査を行ったところ、半分近い462地点で「交通空白」状態となっていました。やはり要未然防止地点を加えると608地点となります。内容を精査すると、確かにそもそも二次交通が未整備や不十分、仮に二次交通は有っても情報発信が不十分で利用できることが広く周知されていないということで、この両面からの解決が求められることが分かりました。
解消に向けた主要5本柱
国交省では現在、25~27年の3年間を「「交通空白」解消・集中対策期間」と位置付け、これら「地域の足」「観光の足」計約2500地点全てについて「交通空白」解消の目途をつけることとしており、具体的な方針を25年5月に「「交通空白」解消に向けた取組方針2025」として策定いたしました。具体的な「交通空白」解消に向けては、以下の5本柱を軸として総合的な後押しを進めてまいります。
① 地方運輸局等による首長訪問・事業者との橋渡し・伴走支援を引き続き強力に行います。全国に10ブロックの地方運輸局等が「交通空白」を抱える自治体を訪問し、首長と直接意識合わせを行い解決策を探り、さらに関係事業者との橋渡し等を行います。
② 制度・事例等に係る情報・知見の提供も重要です。自治体の方々にさまざまな情報やノウハウの提供をしていきます。
③ 実証・実装等に向けた十分な財政支援により、自治体や民間事業者の取り組みを後押ししてまいります。
④ 「交通空白」解消・官民連携プラットフォームを活用し、お困りごとを抱える地方自治体と民間企業の技術、ノウハウのマッチング等を進め、持続可能な交通の実現を目指します。
⑤ さらに、新たな制度的枠組みの構築も進めます。「交通空白」解消に向けて有効な取り組みの水平展開を加速化するべく、要すれば法改正も視野に入れつつ新しい制度を考えてまいります。
現在、交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会において、地域交通の充実に向けた各種論点を議論しているところです。例えば、①自治体・事業者・産業がそれぞれ単独では課題解決に時間も労力もかかるため、複数の主体の共同化や協業化を通じた地域交通の再構築を促進する制度や、②自治体による地域交通の課題解決に当たり、関係者間の連絡調整や連携の促進に協力する外部組織を位置付けること等を検討しています。
「地域交通DX」の推進
「地域交通DX」の推進も図ります。例えば交通網を使って移動するとき、複数の交通モードを乗り継ぐことが一般的ですが、デジタル技術を活用して一気通貫で事前予約し、QRコード等で移動する、こうした利便性の高いモビリティの実現を図るべく、現在、MaaS(Mobility as a Service)が各地で形成されつつあります。ただ現状では、一つのアプリで提携しているモビリティしか使えない場合が多く、交通網が輻輳する都市部等では複数のアプリを使い分けないとサービスが享受できないのが現状です。そのため事業者の垣根や仕様を超えた連携を探れないか、データの統合と標準化に基づく汎用性の高いサービスシステムを構築できないか、等々の課題について検討していく必要があります。
さらに、自治体がデータを駆使して地域公共交通計画をアップデートしていくことが的確なソリューションを見出すためにも望ましいのですが、このための汎用的な手法は未だ開発されていません。また、事業者間においてもデータの仕様がまちまちであるため効率的な活用が困難、等々の課題もあります。やはり標準化されたデータを有効に二次利用していくことが真のDXにつながりますので、そうした業務効率の向上や水平展開に向けた取り組みを後押しすることが重要だと考えています。
第3次「交通政策基本計画」のポイント
最後に、交通政策基本計画について触れておきます。交通政策基本法では、国は、地域交通のみならず、さまざまな交通に関する政策を定めた「交通政策基本計画」を策定する旨が規定されています。この計画は閣議決定を経て策定することが定められており、およそ5年ごとに見直しが行われます。
25年10月末現在、新たな第3次計画の策定が進められています。第3次計画では、基本認識として「人口減少という危機を好機に変え、一人ひとりが豊かさと安心を実感できる持続可能な活力ある経済・社会を実現」を掲げています。
その達成に向け、交通分野として取り組むべき四つの柱を想定しています。
①地域社会を支える、地域課題に適応した交通の実現。「交通空白」解消もこの柱に含まれます。
②成長型経済を支える、交通ネットワーク・システムの実現。首都圏空港や整備新幹線などの整備、あるいは物流における担い手不足解消、さらには造船や港湾機能強化等も対象となります。
③持続可能で安全・安心な社会を支える、強くしなやかな交通基盤の実現。災害対応や安全対策の向上、気候変動や共生社会等の社会課題への対応なども範疇となります。
④これら三点の柱を実現するために、地域交通DXの推進や自動運転の社会実装をはじめ、デジタル・新技術を徹底活用する、これが四本目の柱となります。
特に、「交通空白」解消は、今、まさに全国いたる所で存在する切実な問題であり、その影響は医療、教育等多方面に及びます。そういう視点からも、関係省庁と密接に連携しながら取り組みを進め、具体的な成果を出していくのが私たちに課せられた使命であると認識しております。
(月刊『時評』2026年1月号掲載)