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地域経済政策最前線/新たな潮流を好機と捉え、地域経済を全力でサポート

はまの こういち/福島県出身。東京大学法学部卒業。平成元年通商産業省入省、24年経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長、27年大臣官房会計課長、28年石油天然ガス・全国鉱物資源機構副理事長、30年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)、令和2年7月より現職。地域経済産業グループ長兼任。
はまの こういち/福島県出身。東京大学法学部卒業。平成元年通商産業省入省、24年経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長、27年大臣官房会計課長、28年石油天然ガス・全国鉱物資源機構副理事長、30年内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)、令和2年7月より現職。地域経済産業グループ長兼任。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引くなか、地域経済、地域企業はカーボンニュートラルへの対応、デジタル化の推進など、新しくかつ大きな変化の潮流に直面している。関東経済産業局は、自治体や地域金融機関、他省庁とも緊密かつ多角的に連携を図り、社会課題解決や稼ぐ力の向上を目指す企業の支援に余念がない。これら多様な取り組みの内容を、濱野局長に解説してもらった。(このインタビューは2022 年2 月28 日に行われました。)


関東経済産業局長
濱野 幸一氏


地域企業の稼ぐ力の強化を目指して

――2020年年頭以来、コロナ禍が2年経過しました。直近の関東地域の経済動向はいかがでしょうか。

濱野 関東地域の生産・個人消費・雇用の動向を見てみますと、まず生産に関しては、管内の鉱工業生産指数によると、全体としては2020年5月を底として回復傾向にありますが、まだコロナ前の水準には戻っていない状況です。個人消費について管内の小売6業態※の販売額の推移を見てみると、直近21年10~12月平均は前年同月に比してプラス0・4%となるなど回復傾向が見られます。また、管内の有効求人倍率は20年12月を底として改善傾向にあります。このような中、関東地域の事業者からは、オミクロン株の感染拡大による影響のほか、長引く半導体不足など部品の供給制約や原油をはじめとする原材料価格高騰の影響を受けている等の声が寄せられ、足下としては依然として厳しい状況が続いています。
※小売6業態:百貨店、スーパー、コンビニ、家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター

――このような状況下、関東経済産業局ではどのような施策に取り組まれるのでしょうか。

濱野 私たち関東経済産業局は「地域経済の活性化や健全な発展に向けて、信頼される組織、存在価値のある組織、活力あふれる組織を目指していく」という組織理念のもと、〝サポートします‼ 地域経済 ―広域関東圏から日本を元気に―〟というスローガンを掲げて、地域経済の活性化や健全な発展に取り組んでいます。

 地域経済は、コロナ以前から人口減少や少子高齢化といった構造的な課題に継続して直面しています。これらに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況が続いているほか、カーボンニュートラルの実現をはじめとする地球規模での環境対応や地政学リスクが高まるなど、地域経済を取り巻く事業環境は急速に変化しています。こうした状況下において、私たちは地域企業の稼ぐ力を向上させ、地域の雇用維持を通じて、安全・安心に暮らせる地域社会づくりに寄与する取り組みを強力に進めています。

 まずは「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現」に向けた取り組みです。2021年6月に、「ウィズ・ポスト・コロナ時代」を踏まえた地域経済産業政策の在り方についての検討結果が経済産業本省にて取りまとめられました。この検討では、コロナ禍以前からの人口減少・少子高齢化がさらに進展する中で、コロナ禍を契機にデジタル・リモート化が不可逆的に定着するほか、地域課題の取り組みに対する共感が価値の源泉として重要視されるといった地域経済社会の変化への対応が特に指摘されました。このような社会環境の変化をチャンスと捉え、①DXの推進、②イノベーションの推進、③地域の持続可能性を高める取り組みの推進、④地域内外の多様な人材の活躍の推進により、地域経済社会の変革を促していくことが重要であるといった検討結果を踏まえ、関東経済産業局でもこの4本柱を推進するための取り組みを進めています。

(資料:経済産業省)
(資料:経済産業省)

点だけではなく面的なデジタル化を支援

――では、順にご解説をお願いします。

濱野 まずは地域企業に対するデジタル化支援です。これまで関東経済産業局では、各企業のデジタル化のフェーズに応じたきめ細かな対応を行ってきましたが、それを継続しつつ、今後は、地域全体のデジタル化の底上げ支援として、産業集積・サプライチェーン・企業群のデジタル高度化、そしてデジタルを駆使した社会課題の解決など、面的な支援にも力を入れていきます。中でも、地域全体のデジタル化の底上げ支援を目的としてモデル的にスタートした埼玉県内企業のデジタル実装に関しては、2021年10月に県・市、関東財務局など国の機関や商工団体に加え、豊富な企業ネットワークを有する地域金融機関など関係27機関が参画した「埼玉県DX推進支援ネットワーク」が構築されました。本ネットワークに参画する機関が一体となり、埼玉県内企業に対してデジタル専門家派遣やデジタル人材の育成などの取り組みを進めています。引き続きこの枠組みを通じて地域企業のデジタル実装を加速化するとともに、他地域への横展開を検討していきます。

 さらに、この一年で新たに挑戦している取り組みがあります。地域企業のDX化を推進するには、企業内でDXを推進する人材が不可欠ですが、地域にはこうした人材が不足しているというのが実態です。そこで、企業内人材のリスキリングを積極的に図ることでDX人材の育成を目的とした「データ活用人材育成プログラム」を管内の4自治体(さいたま市、長岡市、柏崎市、松本市)と連携して提供しています。プログラムは、参加企業それぞれの実課題をベースに、データ活用によるビジネスプロセスの最適化等につながる実証を行うなど、非常に実践的な内容で構成しています。例えば、プログラムに参加した調味ソースを製造しているメーカーでは、ソース充填後に製品の重量にばらつきがあり一日の生産量が安定しないという課題を抱えていました。プログラムに参加し、ソース充填の際の温度と重量のデータ解析を進め、一日の生産量を最適化させるための実証に取り組んでいます。このほか、顧客データ分析による営業効率化や出荷データ分析による物流サービスの最適化に結び付きつつある事例もでてきています。一人でも多くのDX人材の育成支援に繋がることを期待しつつ、この取り組みを4自治体以外の自治体や支援機関にも広く普及させていきたいと考えています。

――イノベーションの推進に関してはいかがでしょう。

濱野 オープンイノベーションを通じて地域企業の稼ぐ力を強化するため、中小機構と連携して、オンライン上で大手企業等の開発ニーズと地域企業等の技術・サービスをマッチングするためのサイト「OIMS」を開設していますが、2021年度は、これまでの関東地方整備局やジェトロのほかに農林水産省と連携し、「食関連分野」でのマッチングにも力を入れています。また、昨今、世の中の関心が非常に高まっている「カーボンニュートラル」に関する開発ニーズについてもOIMSを活用してマッチングを促進しています。

 さらに、成長志向の地域企業に対して、コア技術や成長ビジョンとの親和性が見込まれるスタートアップとのマッチングを進めることにより、地域企業の既存事業の成長に加え、コア技術の応用範囲の拡張や新市場創出など、新たな価値を創造する取り組みを推進しています。言い換えると地域企業版の「両利き経営」を促進する取り組みと言えるかもしれません。イノベーションの創出に向けては、こうした取り組みも積極的に支援しています。