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2025大阪・関西万博の成功に向けて

経済産業省大阪・関西万博最前線

いのうえ まなぶ/昭和44年1月17日生まれ、平成3年通商産業省入省、平成25年経済産業省通商政策局経済連携交渉官、28年商務流通保安グループ博覧会推進室長、29年観光庁参事官(兼)国際観光課MICE推進室長(兼)内閣官房観光戦略実行推進室参事官、令和元年大臣官房参事官(調査統計グループ・総合調整担当)、3年商務・サービスグループ2025年国際博覧会統括調整官、4年7月より内閣官房国際 博覧会推進本部事務局次長(全体総括)。
いのうえ まなぶ/昭和44年1月17日生まれ、平成3年通商産業省入省、平成25年経済産業省通商政策局経済連携交渉官、28年商務流通保安グループ博覧会推進室長、29年観光庁参事官(兼)国際観光課MICE推進室長(兼)内閣官房観光戦略実行推進室参事官、令和元年大臣官房参事官(調査統計グループ・総合調整担当)、3年商務・サービスグループ2025年国際博覧会統括調整官、4年7月より内閣官房国際 博覧会推進本部事務局次長(全体総括)。

 2025大阪・関西万博の開催まで残り2年半となり、諸準備が徐々に整いつつある。1970年の大阪万博開催以来、半世紀余り。万博に期待される国際的意義は時代とともに大きく変化した。その変化に対応しつつ開催を成功に導くため、関係機関は今どのような課題を乗り越えようとしているのか。最新動向を井上統括調整官(当時)に解説してもらった。

前 経済産業省商務・サービスグループ 2025年国際博覧会統括調整官
井上 学氏


四つの観点から成る万博の意義

井上氏資料1.jpg

 まずは改めまして、万博の概要についてご説明申し上げます。大阪・関西万博こと2025日本国際博覧会は、2025年4月13日から10月13日まで約半年間、大阪市此花区夢洲(ゆめしま)をメイン会場として開催します。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、「Saving Lives(いのちを救う)Empowering Lives (いのちに力を与える) Connecting Lives(いのち をつなぐ)」のサブテーマが続き、開催を機にさまざまな社会実験を行うという意味を込めた「People’s Living Lab(未来社会の実場)」がコンセプトであります。

 20年末に、マスタープラン「基本計画」を策定・公表後、これに基づき、参加国、国際機関への招請活動や企業・団体・自治体・市民団体等の参加と協創を促進するとともに、各事業の実施計画の策定や具体的な取り組みを精力的に推進している、これが現在の状況です。23年にはパビリオン敷地の引き渡し、前売り入場券の販売も始まります。

 この大阪・関西万博の意義は、大きく四つの観点から成り立っています。

 まず「いのち輝く未来社会へ」。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界各国において社会制度、生活様式の大きな変革が生じました。そこで開催を機に、個人のいのちが輝くような生き方についてのアイデアを世界から持ち寄ろう、というものです。次に、「SDGs達成・SDGs+beyondへの飛躍の機会」。万博開催年は、15年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の5年前に当たることから、その進捗を確認すると同時に、30年のSDGs達成を超えた先、つまりbeyondに向けた展望を打ち出します。3番目が「Society 5.0 実現に向けた実証の機会」です。官民で全力を挙げている超スマート社会の実現に向けて、各種の新技術、サービスやシステムの社会実装を加速化させる、〝未来社会の実験場〟と位置付けています。最後が「日本の飛躍の契機に」です。万博会場において、DX(デジタルトランスフォーメーション)による社会変革の新たな形や地球環境問題への新たな挑戦を示すとともに、経済、社会、文化等あらゆる面において、大阪・関西のみならず、日本全体にとってさらなる飛躍の契機にしたいと考えています。

 万博の推進体制ですが、内閣官房に総合調整を行う博覧会推進本部事務局が置かれ、博覧会推進室を設けた経産省、官民から成る公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、そして地方公共団体が中心となって推進を図り、それぞれ関係省庁が各種役割分担を担うという構図になっています。会場内のさまざまな準備につきましては協会が行い、経産省は協会の指揮監督に当たる、という体制で進めています。

 また、会場デザイン・運営、テーマ館の企画立案・展示を具体化のため、分野ごとに計8名のプロデューサーを任命しており、多彩な分野の方々が専門知識を生かして各分野の企画・進行の指揮を執っていきます。別途、専門知識や技術、文化等の観点から助言を受けるため、15名のシニアアドバイザーも設置しています。さらに、20年2月に「2025年国際博覧会協会アンバサダー」を任命いたしました。

会場を構成する三つのワールド

 オリンピック・パラリンピックの場合はスポーツという核となるコンテンツを前提として関連施設を整備するわけですが、万博の場合はコンテンツ自体をゼロベースからつくり上げる、これが会場での準備における大きな違いです。では、夢洲はどのような会場デザインとなるのか、これはパビリオンワールドを中心に、グリーンワールド、ウオーターワールドの三つのエリアで構成されることになります。

 「パビリオンワールド」は文字通り各国パビリオンを展示する、会場の花形と言うべきエリアです。外国館、企業館、テーマ館などがひしめき合うこととなるでしょう。「グリーンワールド」は、緑地を舞台にさまざまなイベントを実施するエリアです。三つ目の「ウオーターワールド」は、水上で各種イベントを実施するエリアですが、大阪・関西万博は臨海地で開催することから〝空と海の万博〟という側面もあり、そういう意味では同エリアがむしろ万博の特色を表わしていると言えるかもしれません。

 パビリオン展示は、以下の5種類の分野で構成されています。
 
 ① 公式参加者パビリオン。各国政府・国際機関の参加を公式参加と呼んでおり、その展示エリアです。

 ② テーマ事業パビリオン。8人のテーマプロデューサーが企画するパビリオンで、1970年大阪万博開催時の「太陽の塔」がこれにあたります。各テーマプロデューサーには、それぞれ〝いのちを知る〟〝いのちを育む〟などのサブタイトルを提案し、それに基づいて各位にパビリオンを設計してもらいます。これから2年半あまりの間に、非常に興味深いパビリオンができるものと期待しております。

 ③ 日本政府館。本年3月に日本館基本計画を策定し、2020東京オリンピック・パラリンピックの聖火台をデザインされた佐藤オオキ氏を総合プロデューサーとして、4月から建築の実施設計・展示の基本設計を実施しています。「いのちと、いのちの、あいだに ―Between Lives―」をテーマに、〝循環(いのちのつながり)の体験〟〝循 環とともにある社会の実現に向けた要素の展示体験〟を展示コンセプトとして、「炭素中立型の経済社会」や「循環型社会」といった未来社会の実現に向けたアクションを促していきます。一言で言えば、「循環型社会」とはどのような社会なのか、実際に日本館で体験・実感してもらおうではないか、これが日本館のコンセプトとなります。

 ④ 自治体館。大阪府と大阪市が連携した、「大阪館」のほか、「関西広域館」も出展予定です。

 ⑤ 企業パビリオン。民間企業等が自由に企画するパビリオンで、本年2月10日に、大阪・関西らしい企業等を中心に、計13者の採択を決定しました。