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2025大阪・関西万博開催最前線/経済産業省 茂木 正氏

多彩な魅力の発見と、今後のビジネス創出の好機として ―大阪・関西万博開催を前に―

もぎ ただし/昭和41年5月23日生まれ、静岡県出身。北海道大学工学部卒業、同大学院工学研究科修了。平成4年通産省入省、25年経済産業省製造産業局化学課長、28年同素材産業課長、29年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課長、30年中小企業庁長官官房総務課長、令和元年大臣官房参事官(技術・高度人材戦略担当)(併)危機管理・災害対策室長、2年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長、4年商務・サービス審議官(併)商務・サービスグループ長、6年7月より大臣官房政策立案総括審議官(併)現職。
もぎ ただし/昭和41年5月23日生まれ、静岡県出身。北海道大学工学部卒業、同大学院工学研究科修了。平成4年通産省入省、25年経済産業省製造産業局化学課長、28年同素材産業課長、29年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課長、30年中小企業庁長官官房総務課長、令和元年大臣官房参事官(技術・高度人材戦略担当)(併)危機管理・災害対策室長、2年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長、4年商務・サービス審議官(併)商務・サービスグループ長、6年7月より大臣官房政策立案総括審議官(併)現職。

 いよいよ4月13日(日)から10月13日(月)にかけ、大阪夢洲にて2025 大阪・関西万博が開催される。以前、大阪で万博が開催されたのは1970年。それから55年、世界で社会・経済・技術・価値観が大きく変動する中、再び大阪の地で展開される未来社会のショーケースは、どのような意義を有し、多種多様な効果をもたらすのか。イベントの枠を超えた世界的なつながりの機会として、開催直前の万博の魅力を茂木首席国際博覧会統括調整官に発信してもらった。

首席国際博覧会統括調整官 茂木 正氏

55年ぶりに、大阪の地へ

――大阪・関西万博がいよいよ開催直前となりました。期待感も高まるばかりと思いますが、改めまして今回の万博の概要についてご紹介をお願いします。

茂木 はい、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、世界の多様な価値観が交流し合い、世界的な危機や課題を乗り越え、いのちの在り方を見つめ直すことで、未来への希望を世界に示す万博を目指しています。

 核となるシグネチャープロジェクト(いのちの輝きプロジェクト)の下、各分野の最前線で活躍する8人のプロデューサーが主導する「シグネチャーパビリオン」が八つ、日本館や関西パビリオンなどの「国内パビリオン」が四つ、多様な分野がそろいバラエティに富んだ「民間パビリオン」13カ所、そして160を超える国・地域・国際機関が最新技術や独自の文化を紹介する「海外パビリオン」多数、そのほかデジタル、バーチャル、グリーン、スマートモビリティの各部門で最新技術を紹介する「未来社会ショーケース」、また会期中の毎日没後に行う水上ショー「アオと夜の虹のパレード」をはじめ、各種ナショナルデーやスペシャルデーを相次いで開催するなど、さまざまなイベントを実施していきます。

 会場のランドマークとなるのは、一周約2キロメートル、高さ12メートル、内径約615メートルに及ぶ、世界最大の木造建築「大屋根リング」です。リングの屋上から眺めてもらうと、瀬戸内海に臨んで万博会場が海と空に囲まれているのを実感していただけると思います。

――まさに今世紀の日本で屈指の一大プロジェクトですが、再認識の意味も込めて、同万博が大阪で開催されるに至った経緯、そして開催の意義について教えてください。

茂木 今回の万博は、遡ること2017年から誘致が始まり、翌18年の博覧会国際事務局(BIE)パリ総会で、ロシアとの決選投票を経て獲得しました。そういう意味で今回の万博は日本政府が自ら手を挙げて〝勝ち取った〟万博であると言えるでしょう。それ故に日本政府が責任をもって、素晴らしい万博として結実させていかねばなりません。

 万博には、「登録博」と「認定博」の2種類があり、前者はいわゆる総合的な万博として5年に1回開催されます。日本では1970年の大阪万博、2005年の愛知万博に続いて、今回55年ぶりに大阪の地に戻ってきました。他方で「認定博」は直近27年に横浜国際園芸博覧会が控えています。

 1970年の大阪万博はある意味、歴史に残る万博でした。当時の入場者数は約6400万人とされ、その後2010年上海万博が更新するまで実に40年間、万博史の記録を保持していました。それほど当時の日本は万博に熱狂し、今でもその記憶をとどめている方は数多くいらっしゃいます。その万博がまた大阪で開催されるのは、21世紀の中後期に向けて関西圏全体が再活性化していくためにも大きな意味があろうと思います。

万博に必ずある、〝未知との遭遇〟

――しかし情報通信の急速な発展は世界を狭くし、動画や映像であらゆるものが居ながらに見られる時代、なぜ今万博の開催なのかという指摘もあります。

茂木 冒頭紹介しましたように、世界の大多数の国・地域が一堂に会して文化を発信する機会は他になかなかありません。訪れて初めて知る国、思わぬ発見が得られる国などが多々あり、そうした思わぬ出会い、いわば〝未知との遭遇〟が万博には必ずあると認識しています。

 70年大阪万博に出展した国・地域は77、愛知は120、しかし今回〝グローバルサウス〟と呼ばれる国々だけで約80カ国が出展しています。が、おそらく多くの日本国民はそれらの国々を詳しく知らないと推察されます。しかし会場内である国の展示に触れたとき、こういう国がありこういう文化を有している等、これをきっかけにその国に興味を持つ可能性が広がります。つまり自ら行動することで未知の何かを感得する、それこそが万博の魅力であり意義でもあると考えています。

 実際に愛知万博の時、オリジナルの建築物はゼロだったのですが、今回は50強のオリジナルのパビリオンが建築されるなど、各国はまたとない絶好のアピールの機会として、非常に注力しています。

――とはいえ、2020年からのコロナ禍、その後の紛争等、万博開催に障壁となる事態が相次ぎました。

茂木 国際社会がそうした多くの課題を抱えるからこそ、出展した各国とも「大屋根リング」の環の下に集ってお互いの国をよりよく知り、かつ日本も世界を知り、または各国関係者がもっと日本を知る機会となるなど、万博が相互に目を開く機会になれば何よりです。

――ご指摘に則ると、オリンピック・パラリンピックだけでなく、万博もまた平和の祭典という側面もあるのでは。

茂木 結果としてそうした面は確かにあると思われます。もともと万博初期は開催国の国威発揚が色濃い内容でした。その後時代とともに万博の性格も変容し、さまざまなテーマについて各国からの叡智を結集して解決を目指す、政治や体制を超えて未来に向けて語り合う場へ存在意義を変えてきました。今回のテーマである〝いのち〟についても、解釈は国や文化によって千差万別で、各国とも自国の特性を打ち出しながらも〝いのち〟をどう捉えているか表現を凝らしているわけです。

 また期間内に順次開催するテーマウィークでは、各ウィークそれぞれ〝いのち〟を中心とする八つのテーマについて、世界中の有識者がシンポジウムなどで討論する機会を設けています。これには日本の政府、企業だけでなく各国も参加して、討論で得た気付きを各国に持ち帰ることになっています。エンターテインメントで来場者を沸かせる一方、同じ会場内では、世界と未来について真剣に議論もしている、ということです。

――巨大な規模であることも手伝い、見どころと言うか目玉展示が絞り切れないという声もあります。

茂木 目玉だらけなので、それもまた必然というところです(笑)。確かに、万博の目玉が何かというお訊ねをよくいただくのですが、それに対しては「大阪・関西万博見どころベスト9」という資料を作成して発信しています。これだけ見ていただいてもお分かりのように、ベスト1ではなく、アートやエンタメ、食体験も含めてベストが9もあるのです。すなわち、来場された人によって目的とする目玉がそれぞれ違うので、最新技術だけが見どころではなく、イベントやショーを目的に来る人、各国の食を体験しに来る人、エンタメを推す人など、来場の理由はさまざまで、あえて特定分野の絞り込みをせず、全方位的な関心にお応えできる態勢を整えています。

 また、3月下旬に『大阪・関西万博 公式ガイドブック』が作成されました。そのほか旅行誌各社さんがそれぞれ万博ガイドを発刊しておりますので、縦横に眺めて、興味のありそうなスポットやイベントなどをいくつもチェックしてもらえればと思います。その上で、ぜひ来場してご自身なりの目玉やイチオシを見つけてもらい、さらに魅力の発見と体験を発信していただくことを期待しています。

見どころベスト9(資料:経済産業省)
見どころベスト9(資料:経済産業省)