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世界に誇る日本の文化、繊維産業のさらなる発展を目指して/経済産業省 渡邉 宏和氏

――外需獲得については、25年10月に「繊維産地から目指す次世代繊維企業の外需獲得に向けた研究会」が立ち上がりましたが、研究会ではどのような議論がなされているのでしょうか。

渡邉 持続的なサプライチェーンを実現させていくためには、国内需要が縮小していく中でインバウンドを含む外需を獲得していく必要があります。わが国の産業においても外需獲得は以前から進めてきた取り組みではありますが、このタイミングで、改めて、何ができるのかを考えてみようという試みになります。

 わが国の繊維製品の輸出は、依然として糸や繊維から作られる布や織物といったテキスタイルが多く、製品(衣料品)の割合は小さいといった特徴があります。一方、20年代以降、主に衣料品やその他二次製品(最終製品)の輸出額が増加しており、日本製の最終製品は一定の評価を得ています。このようにわが国の高い技術力に裏付けられた高品質なテキスタイルは、多くの海外一流ブランドからも評価されていますので、従来のやり方にとらわれず、さまざまな手段を活用することで一層の販路拡大が期待できると考えています。

 しかし現状は、一部の事業者が個別の手法で海外進出をしているというのが実情です。そのため、わが国繊維産業の国際競争力、そして各産地や工程における強みとは何かについて、実際に海外展開を進めている企業や産地の中核企業、商社といったさまざまな主体の取り組みを踏まえて検討していくというのが研究会立ち上げの意義になります。繊維産業の方とも議論を重ねていますが、やはり企業、そして産地が連携して海外需要を確保していける形にしていきたいと思っています。

(資料:経済産業省)
(資料:経済産業省)

担い手不足対策 ――外国人材活用

――少子高齢化や人口減少などもあり、わが国の製造業における労働力(担い手)不足は深刻な問題になっています。繊維産業(業界)における対応などについてお聞かせください。

渡邉 現在、わが国は人口減少、そして少子高齢化など構造的な要因に直面しています。そのため労働人口の縮小が生産能力の低下を通じて供給面に制約をもたらす可能性があります。そうならないためにも、まずは若い労働者に繊維業界を選んでいただけるように職場環境の改善を図ることが基本だと思っています。その上で、繊維業においては2024年9月から特定技能制度に業種追加したため、一定の専門性技能を有して即戦力になれる特定技能1号において、繊維産業も追加要件を満たすことで受け入れが可能になっています。さらに繊維産業で課された特定技能制度の追加要件がありますが、国際的な人権基準に適合して事業を行うという項目の対応として、25年3月に繊維産業の監査要求事項・評価基準を策定しています。いわゆる「JASTI(Japanese Audit Standard for Textile Industry)」と呼ばれる制度ですが、翌4月には第三者の監査制度として運用監査をはじめています。特定技能1号の外国人を受け入れるというのも進んでいますし、熟練した技術技能を有する業務に従事する外国人材の今後の受け入れの在り方について、引き続き検討していきたいと思っています。

 また、人手不足の分野における人材育成確保を目的とする育成就労制度が27年4月から開始される予定です。本制度には特定技能制度で課されている追加要件が同様に課される予定ですが、制度を円滑に適用できるように業界とも連携しつつ、要件の一部柔軟な運用を検討しているところです。そして人材不足に悩む中小企業の売り上げ拡大と生産性向上を後押しするために中小企業省力化投資補助金やものづくり補助金、そして生産設備の自動化支援策(デジタル化・AI導入補助金)なども用意していますので、そうした支援策も是非、活用していただきたいと思っています。

(資料:経済産業省)
(資料:経済産業省)

繊維産業以外の取り組みと今後の展望

――生活製品課では繊維以外にも、皮革や住宅建材、家具などさまざまな分野を所掌していますが、そうした分野の取り組みについてはいかがでしょうか。

渡邉 繊維産業だけではなく、当課で担当している皮革、そして住宅建材や家具分野においても、産業として同様の課題を抱えています。そのため解決策も似通ったものになりますので、政策の横展開を進めていければと考えています。また各業界が相乗効果といっていいのかは分かりませんが、産業界にとってもプラスになるような企業間、あるいは業界間での連携が進んでいくような取り組みを考えていく必要があります。

 現政権が目指す「強い経済」の実現に向けて、外需獲得を含めた経済産業政策、成長戦略の重要性は高まっていますので、その点からも連携と政策の横展開を進めていきたいと考えています。

――産業・社会構造が大きく変化する中で、われわれにとって身近な産業なだけに、その影響も大きい生活製品産業。最後に繊維産業をはじめとした生活製品産業の発展に向けた意気込み、施策実現に向けた思いなどをお聞かせください。

渡邉 生活製品産業というのは衣食住、つまりライフスタイルの根幹となるものです。そのため厳しい国際競争で培われてきた卓越した技術力、そして繊細な表現力によって生活の質を向上させ、生活文化を発展させることができるものだと考えています。

 わが国の繊維製品をはじめとする生活製品の価値をさらに高め、次世代に引き継いでいくためにも、業界関係者の声をしっかりと聞きながら、官民一丸となってさまざまな課題に取り組んでいきたい、そう思っています。

――本日はありがとうございました。
                                               (月刊『時評』2026年2月号掲載)