
2026/03/16
繊維・アパレル、服飾品、住宅・建材・住宅設備、家具・インテリア、生活・スポーツ用品など、私たちの生活に密接に関連する製品について、業種横断的な政策を推進している生活製品課。なかでも繊維分野は“衣食住”といったライフスタイルの根幹をなし、またわが国を代表する伝統的産業の一つでもある。しかし、そんな繊維産業の「衣料品の輸入浸透率」は2024年の数量ベースで98.6%。つまり国内で生産され、消費されたのは1.4%というデータもある。こうした中で、産業としての発展を目指し、22年には繊維産業の30年のあるべき姿を提示した「2030 年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」がとりまとめられ、以降も「繊維産業におけるサステナビリティ推進等による議論の中間とりまとめ」や「繊維製品における資源循環ロードマップ」などが示されている。今回、生活製品課の渡邉課長に繊維産業の現状と課題、また課題解決に向けた取り組みについて語ってもらった。
製造産業局生活製品課長 渡邉 宏和氏
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繊維産業を取り巻く現状
――繊維や皮革、住宅建材、家具、生活・スポーツ用品など日常生活に密接に関連する製品について、業種横断的な政策を進める生活製品課。なかでも繊維分野は、産業・社会構造の転換による影響が大きく、現在もさまざまな施策が展開しています。改めて、わが国繊維産業を取り巻く現状についてお聞かせください。
渡邉 繊維産業についてですが、衣料品の国内市場は、1990年代から減少傾向にありました。2000年代以降は基本的に横ばい状態が続いていましたが、新型コロナの影響もあって20年以降、国内市場規模は減少しており、現在(25年)も完全に回復できていない状況にあります。
国内供給拠点と衣料品の輸入浸透率については、1990年代は約20億点が国内供給されていましたが、そのうち輸入品の占める割合である「輸入浸透率」は数量ベースで98・6%(2024年)。つまり国内で生産したものを国内で消費したのは1・4%ということになります。われわれとしてはこうした中で、産業をなんとか発展・向上できるよう取り組みを進めているところです。
また金額ベースでみると、74・5%が国内生産になっていますので(24年)、「量から質へ」の転換を進めることで、この数字についても好転させていければと考えています。
そうした繊維産業の発展・向上に向けた施策として、22年には、国内外における環境変化を踏まえ、30年のあるべき姿などを提示する「2030年に向けた繊維産業の展望(以下、繊維ビジョン)」がとりまとめられ、それ以降も24年には「繊維産業におけるサステナビリティ推進等による議論の中間とりまとめ(以下、中間とりまとめ)」や「繊維製品における資源循環ロードマップ(以下、ロードマップ)」などが繊維産業小委員会で示されています。こうしたビジョンやとりまとめ、ロードマップを基に、官民連携しながら産業の発展に努めているというのが現状になります。
――「繊維ビジョン」をはじめ、「中間とりまとめ」や「ロードマップ」などさまざまな施策、取り組みが進められているわけですね。具体的な進捗などがあればお聞かせください。
渡邉 マクロ経済指標でいいますと、賃上げ、そして国内投資は30年ぶりの高水準を達成していますし、名目GDPでは600兆円の大台に達しています。その流れを繊維産業にも波及、展開できればと考えています。そのための施策として「中間とりまとめ」を策定しましたので、それに基づいて対応、取り組みを進めているところです。
サステナビリティの取り組みについては、企業競争力の強化という点からも重要な課題だと思っています。すでに欧州の一部のアパレル企業、特に有名ブランド企業においては、自社の人権、それから環境に配慮した取り組みを証明するために第三者の認証機関が担保する国際認証の取得が進んでいます。このようなことから今後、国際社会においてサステナビリティの確保に向けた法整備が進む中で、わが国の繊維産業、企業がグローバルに産業競争力を維持・強化していくためには企業における環境配慮、そして人権尊重に向けた取り組みは不可欠だといえます。
そのため24年に策定された「ロードマップ」に基づき、官民連携して取り組みを推進しているところです。例えば衣料品のリサイクルについては、国内製品メーカーを中心とした連携による複合品の分離リサイクル技術の研究開発と実証事業を進めています。25年10月には「繊維資源循環の実現に向けたコンソーシアム」が設立されましたので、コンソーシアムを中心に技術的コスト的な制約がある混紡繊維についても直接繊維へのリサイクルである「繊維to繊維」を推進していきたいと思っています。
繊維産地のサプライチェーン強靱化と外需獲得に向けた取り組み
――2025年7月には「繊維産地におけるサプライチェーン強靱化に向けた対応検討会」報告書が提示されています。報告書ではどういったことが取りまとめられたのでしょうか。
渡邉 繊維産地の課題はさまざまですが、報告書では課題を四つに整理しています。具体的には、①「企業の収益構造の硬直」、②「産地企業の事業継承の困難」、③「産地内企業に対する支援体制の弱体化」、④「消費者の認知不足」――です。
これらの課題に対しては、複数の方向性、そして対応策が考えられますが、報告書では大きく三つの項目が示されました。それが「産地の持続性強化・魅力向上に向けた、産地内における多様な主体の連携」であり、「事業継続・製品価値向上に向けた産地と他産地との連携」。
そして「外需の獲得に向けた積極的な取組」です。中でも外需獲得については、内需縮小に歯止めがかからない現状において、それを補う点からも非常に重要な取り組みだといえます。そして報告書では、産地を中心とした繊維産業の発展の方向性として「次世代の産地のリーダー企業(中核企業)による変革と、共に起こす新たな投資」、そして「産地企業の経営戦略と産地の成長・強靱化戦略のシナジーによる、産地独自の成長モデルの構築」の重要性にも触れています。