
2026/07/21
高市政権が掲げる17分野の重点投資対象において、特に重視されているのが半導体だ。進化を続けるAIをはじめ、多くの先端技術に不可欠であり、今後わが国が競争力を保持するための源泉と言っても過言ではない。この半導体産業を育成し、強みを発揮していくにはどのような政策をもって臨むべきか、清水英路室長に、現在の政策動向、その詳細を語ってもらった。
商務情報政策局情報産業課デバイス・半導体戦略室長 清水英路氏
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〝システム to シリコン〟の視点
本年2月24日の衆院本会議で高市総理は、半導体を成長戦略の要として位置付け、いわゆる重点投資対象17分野の筆頭の一つとして取り組んでいく旨を表明されました。この内容を踏まえて現在、日本成長戦略会議において、今後のロードマップを策定し、中長期にわたる計画的な支援を図ることで、民間企業の事業予見性を高め計画的な発展を促していく、という議論をしています。同会議の下に半導体ワーキンググループが設置され、そこで政府としての方針を定め、必要な財政的措置のありようを検討しているところです。
経済産業省では2020年以来5年余りにわたり、わが国の半導体戦略の基本方針に則って市場規模の拡大と半導体の安定的な供給確保に努めてきました。コロナ禍の折に半導体の供給が不安定化した反省を踏まえつつ、半導体が今後のAIの発展も含め、あらゆる産業に不可欠となるだろうとの観点に立つものです。同方針においては、国内半導体生産企業の合計売上高を、20年時点の5兆円から30年段階で15兆円に伸長させるよう目標設定しています。
詳細は後述しますが、方針のステップ1では、生産基盤の強化を図り、熊本のTSMCほか各社への投資および、すそ野に広がる関連部素材や中間品、そしてレアアースなど原料に至る長大なサプライチェーンにおいて、重要な設備投資への支援などを行ってきました。ステップ2では次世代半導体の技術の確立として、最先端半導体の核となる技術と人材を有する企業を育成するべく、研究開発の支援を行いました。北海道のラピダス・プロジェクトもこれに該当します。ステップ3では光電融合技術など、次世代よりさらに先の将来技術開発に、遅れることなく取り組むこととしています。これら1、2、3は順を追うのではなくほぼ同時並行で進め、必要に応じて前倒しを図ります。今後は、これまでの基本方針の内容を踏まえ、さらに将来に向けたロードマップをどう描いていくかが論点となるでしょう。
そうした中、25年12月に開催した「半導体・デジタル戦略会議」では、新たに〝システム to シリコン〟という視点を掲げました。すなわち部品である半導体を使う産業、使った製品やサービスこそ日本経済に重要な産業ではないかとの観点から逆算し、今後重要な産業に必要な半導体の種類とはどのようなものか、その半導体の供給能力はどの程度確保されるべきなのか、これらの点を検証し整備を図るための分析を行っています。
AI・半導体産業基盤強化フレーム
2022年頃のAI革命以降、半導体成長のけん引役はAIに移行し、価格ベースでロジック半導体の比重が高まりました。25年はAI主導の市場拡大フェーズの序章に位置付けられ、以後は同フェーズが拡大していくと想定されています。ただ、ロジックやメモリだけでなく、AIを搭載する自動車やパソコン等のエッジデバイスに必要なオプトエレクトロニクスやセンサーなどもすべて拡大しており、また必要とされる精度水準も上昇しています。
現在、主要な半導体市場では、世界の主要企業に対し、日本企業はアナログ分野で最も強い競争力を保持し、ロジック、メモリでも一定のシェアを確保しています。われわれ経済産業省では、これら半導体の生産や研究開発を支援すると同時に、AI開発やそのために必要なデータセンター整備も支援しています。今後エッジデバイスの需要が高まるにつれて、アナログ半導体の重要性はますます増大するだろうと考えています。
また、こうしたデバイスをつくるための製造装置においても、競争力を有している分野はさらに伸ばしていく方針です。日本企業のシェアが高い領域は相対的に市場規模が小さい装置群が多く、規模が大きい露光装置等では現状大きなシェアを取れていません。製造装置は近年中国などで新しいメーカーも次々台頭しており、市場規模の大きな領域を始め、日本企業の競争力を高めるため、研究開発や量産支援を充実させていきたいと思っています。
加えて、半導体の素材市場においては日本企業が従来から高いシェアを有していますが、徐々に競争環境が変容している分野もあります。原料調達のほとんどを海外依存している分野もあり、技術面での競争力の強化に加えて調達先の多様化や国内での供給能力も強化していく必要があると考えています。
こうした民間支援を行う上での重要なツールが、24年11月に閣議決定された、AI・半導体産業基盤強化フレームです。重要な設備投資に対しては補助金によるインセンティブを付けることが、即効性が高いものと思われ、それを実現するために昨年の通常国会に「AI・半導体分野の財源を確保するための法律」を提出しました。30年までの7年間で10兆円以上のAI・半導体支援を実施し、これを呼び水として10年間で50兆円を超える国内投資を官民で実現する、という枠組みです。今後、より長期のロードマップを組む中で10兆円をさらに超える投資促進も必要になるかもしれません。