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【末松広行・トップの決断】江口文陽(東京農業大学学長)

“環境学生”を育む、幅広な農学の学び舎として

えぐち・ふみお 1965年群馬県生まれ、1993年東京農大院博士後期課程修了、博士(林学)。日本学術振興会特別研究員、医薬系大学研究員、高崎健康福祉大助教授(2001年)、教授(2004年)を経て2012年東京農業大学教授、2016年「食と農」の博物館長、2020年森林総合科学科長。2021年から東京農業大学長。
えぐち・ふみお 1965年群馬県生まれ、1993年東京農大院博士後期課程修了、博士(林学)。日本学術振興会特別研究員、医薬系大学研究員、高崎健康福祉大助教授(2001年)、教授(2004年)を経て2012年東京農業大学教授、2016年「食と農」の博物館長、2020年森林総合科学科長。2021年から東京農業大学長。

わが国農学系の私学としては、もっとも古い歴史を有する東京農業大学。本年4月より世界的な林産学・応用薬理学の研究者・江口文陽氏が学長に就任し、新たな歴史を刻もうとしている。コロナ禍により授業や研究の制約が続く中、世田谷、厚木、北海道オホーツクの3キャンパス連携を打ち出し、多様な環境下による豊かな感性の涵養を目指すという。自ら研究成果の社会実装を実践してきた江口学長の、農学教育に懸けた思いを聞いてみたい。



東京農業大学学長
江口 文陽

社会実装こそ建学の精神

末松 まずは改めて、東京農業大学の歴史や校風などをご解説いただけましたら。


江口 はい、東京農業大学は1891(明治24)年に創設された、日本の農学系の私学では最も歴史の長い大学です。農学部を有する大学は数多くありますが、総合的な観点で農学に取り組む大学が基本的にはほぼ無い中で、東京農業大学はやはり総合的な農学、すなわち農林水産に関わるありとあらゆる学問を中心にしつつ、さらに領域を広げた幅広な総合農学を網羅しています。

 本学を建学した榎本武揚は、広く国際的視野を有しつつ政治分野にも精通していましたので、その精神に則った実学主義、あるいは学問と同時に産業界とどのように連携していくか、その道筋を探るというのが基本的な考え方だと言えるでしょう。学問や研究の成果をいかに社会・国民生活に実装していくか、この精神は榎本先生によって初代学長に就任した農学者・横井時敬先生にも伝わりました。以後横井先生が唱えた〝人物を畑に還す〟という、まさに実学主義的な理念が本学を支える基盤として継承され、今日に至っています。

末松 実学に力を入れておられるとのご指摘通り、学部の構成も生命、食料、環境、健康、エネルギー、地域再生まで含めて6学部23学科と多岐にわたっていますね。私も、農・工問わず学問や研究は世の中の役に立てるべきものと考えておりますが、その点東京農業大学は、例えば林業部門でも多様な林産物研究まで視野に入れるなど、農学の可能性を幅広く追及しているのが大きな特色だと思います。


江口 はい、われわれが掲げる〝総合農学〟とは、まさしく山の頂上に始まり森林から里山、田畑、都市を経て海洋に行き着くという大きな生態系の中に組み込まれた学問であり、生活に密着した領域をあまねくカバーして、人間生活のあらゆる衣食住に関わる部分を網羅的に研究することを目指しています。それは同時に今般、理念として掲げられるSDGs(持続可能な開発目標)の理念を建学の時代から実践してきたとも言えるでしょう。

(聞き手)末松広行氏
(聞き手)末松広行氏

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