お問い合わせはこちら

【末松広行・トップの決断】出雲充(ユーグレナ社長)

食から燃料まで~大学発バイオベンチャーは可能性に満ちている

いずも・みつる 昭和55年1月生まれ、広島県呉市出身。平成14年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。17年株式会社ユーグレナ創業、代表取締役社長へ就任。同年世界初の微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)YoungがGlobal Leader 2012選出、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」ほか受賞多数。経団連審議員会副議長。著書に『サステナブルビジネス「持続可能性」で判断し、行動する会社へ』(PHP研究所)など。
いずも・みつる 昭和55年1月生まれ、広島県呉市出身。平成14年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。17年株式会社ユーグレナ創業、代表取締役社長へ就任。同年世界初の微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)YoungがGlobal Leader 2012選出、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」ほか受賞多数。経団連審議員会副議長。著書に『サステナブルビジネス「持続可能性」で判断し、行動する会社へ』(PHP研究所)など。

東大発のバイオベンチャー企業である株式会社ユーグレナはその名を社にも冠した微細藻類ユーグレナ(和名・ミドリムシ)の研究開発や、食品の販売等を行う。ユーグレナは植物と動物、両方の性質を持つ不思議な生物だ。幾多の困難を乗り越え2012年に東証マザーズ、14年に東証一部に上場した同社、今年は使用済み食用油とユーグレナ等の微細藻類由来の油が原料となったバイオ燃料「サステオ」で飛行機を飛ばす実証にも成功した。出雲充代表取締役社長はポスト・コロナの世界をどう見つめているのだろうか。

株式会社ユーグレナ
理事長
出雲 充

コロナ禍が引き起こした人々の意識変容

末松 早速ですが、今般のコロナ禍が事業に及ぼした影響はいかがでしたか。

出雲 今社会に起きている変化は、ユーグレナ社の事業においてはむしろプラスの要素が多く現れており、自社商品の売り上げも過去最高を達成しました。コロナ禍以降は社会全体で健康や免疫が強く意識され、従前から私たちが掲げてきた社会のサステナビリティや健康寿命などのウェルエイジングといった相関する考え方にも共感して、ユーグレナの商品を評価してくださる方が急増しているのだと思います。

これまで食品販売ではベンチャー企業でも参入しやすい通信販売を中心に展開してきて、毎月定期購買をしてくださるお客さまが28~29万人に達したあたりで伸びは落ち着いていたのですが、コロナ禍ではこの〝根強いファン〟が30万人を突破しました。消費者の生活において健康に直結する〝食〟の優先順位が高くなったことに加え、外出自粛や緊急事態宣言の影響で通販利用の垣根が下がったことも追い風です。

末松 ユーグレナが食としてだけでなく、燃料としても利用可能になった時は驚きました。おっしゃる通り、最近ではSDGs(持続可能な開発目標)の概念も広まって世界中で地球環境への真剣味がぐっと増したわけですが、燃料自体を培養系から作る取り組みの反響にも変化があったのでは。

出雲 確かに、08年の頃は「燃料に出来れば良いね」といった反応が大半でしたが、この数年で切実に「実現しなければならない」と意識が変わってきました。本気でグリーン社会を目指す論調はほんの数年前までありませんでしたが、今では数値目標すら定められて、温室効果ガス排出量を30年に46%削減、50年には実質ゼロを目指すなんて、こんなにも急な時代の変化が可能なんだなと感慨を覚えます。

実はユーグレナといっても品種は100以上あり、それぞれに個性があるので、私たちは日々いろんな新品種のユーグレナを見つけてきては、「これにはカルシウムが入っているな」とか「これはビタミンが多い」とか、栄養素の観点から機能性の評価をしていました。あるとき非常に大きな、ぽっちゃりしたユーグレナを見つけて、例えば、もしもビタミンCが通常の100倍含まれているとしたら目覚ましい発見になると意気込んで調べたのですが、結局中身は食用にならない油ばかりだったので当時は使い道がなくてお蔵入りさせていたのです。そんな折、08年に新日本石油(現・ENEOS)の方から「バイオ燃料の研究でユーグレナの油分もテストしてみたい」とご相談があったので、例のぽっちゃりしたユーグレナならたくさん油が入っていて調べやすいだろうと提供してみたら、すぐに連絡がありました。「これはバイオジェット燃料にもなり得る」と。ユーグレナの油が国産のエネルギー源になり得る良質な炭化水素を持っていると判明して、すぐに当時の新日本石油や日立プラントテクノロジー(現・日立製作所)と共同研究をスタートさせ、NEDOなどの国立研究開発法人から協力を得られるようになっていきました。

末松 食から燃料まで多角的に事業を広げておられますが、今後は世界に進出されるのでしょうか。

出雲 私たちが現在参入しているヘルスケア事業とバイオ燃料事業、すべての事業で世界に打って出たいですし、各国が競ってグリーン社会を目指し、健康に関心が高まっている今、やっと機が熟したという確信もあります。

ただ私の考えでは、既に関係を築いた間柄であればオンライン会議ツールも便利ですが、どんなにデジタル化が進んだ時代になっても最初は会いに行って信頼を構築する労を惜しむべきではありません。ユーグレナのような全く新しいものを売り込むときはなおさらで、例えばアメリカの石油会社の社長に、面識もないわれわれが画面越しでユーグレナの燃料利用について説明をしても、契約につながる成果を挙げることは難しいでしょう。コロナ禍が終息するまでは簡単に海外へ飛んで行けないので、もうしばらくの辛抱ですね。

貧困問題に衝撃を受けた高校生の決意

ユーグレナのバイオ燃料「サステナ」を使ったフライトに成功。(提供:(株)ユーグレナ)
ユーグレナのバイオ燃料「サステナ」を使ったフライトに成功。(提供:(株)ユーグレナ)

末松 改めてなぜユーグレナに出会うことになったのか、いきさつをお聞かせください。

出雲 振り返ってみると起点となったのは……(続きはログイン後)

(聞き手)末松 広行
(聞き手)末松 広行

全文は、研究会員になることで読むことができます。

ログインはこちらから