お問い合わせはこちら

【末松広行・トップの決断】 株式会社アルビオン/小林 章一氏

駅ビルにおける新たな展開

末松 海外にも同様の研究拠点を設置されているそうですね。

小林 はい、スリランカに設けています。約1万6000㎡の畑を借りて、東京農業大学さま、佐賀大学さまと共同で植物の栽培を進め、来年には同地産のエキスを配合した商品を発売する予定です。

 また、マダガスカルにおいては畑での栽培ではなく、自然林からの採取活動を行っています。その場合はやみくもに採取すると自然環境にダメージを与えますので、植物学の専門家に帯同してもらい指導を受けながら、負荷を与えない範囲で植物を採取するという方法を採っています。また、植物を調達するだけではなく、2016年に創業60周年事業の一環で、現地に小学校と中学校の校舎、および図書館を寄贈しました。主要都市からも車で悪路4時間を要する遠路なのですが、竣工の時は現地の教育大臣が一緒に植樹するなど大変喜んでいただきました。学校の看板にもALBIONと掲げてありました。

 原料を調達するばかりではなく、その地元に対し何らかの社会貢献をしていきたいですね。このように、原料にこだわるということは結果として、SDGs に結び付くのではないかと考えています。

 また最近、沖縄にも新たな研究所をつくったところです。県の支援を得て研究機材を揃えることが出来ました。これは企業が活動を進める上で大変ありがたく、今後は同研究所が南方植物の研究を統括する位置付けになっていくと想定しています。逆に、北海道でも各地で植物の栽培を進めており、これら北方植物については秋田の白神研究所が統括していくことになるでしょう。

末松 やはりSDGs は経営においても常に念頭に置いておく時代になりましたね。

小林 その意味では、弊社は売り上げに対する返品率が2%台と、一般的なメーカー各社に比べてごく少なく、この点でもSDGs に資するものと考えています。前述のとおり出荷額ではなく店頭の売れ行き動向を基準に生産数を調整しているので、極力、過剰生産を回避することが可能です。あいにく返品率をゼロにすることは現実的に難しく、返品は廃棄するしかありませんので、少ないほど環境負荷が少なくて済むわけです。使用している容器も、配合比率は品目によってそれぞれ異なりますがバイオマス由来のプラスチックを取り入れています。この比率をさらに上げつつ、より環境に良い素材にシフトしていく、あるいはそもそもプラスチックの量を減らすために容器を薄くすることなども検討しています。

 また冒頭来、高級品志向と希少性の追求を申してきましたが、出荷数が少ないこともまた資源消費の抑制につながります。大手化粧品会社の年間出荷数が約2億5000万個ほどであるのに対し、弊社は3000万個に抑えています。やはりマス・マーケットを手掛けると、当然ながら使用するプラスチックの量、廃棄せざるを得ない量も増えることになります。高級品志向は、実はSDGs に貢献する理念であるとも言えるでしょう。

アルビオン ドレッサー 金沢店(提供:アルビオン)
アルビオン ドレッサー 金沢店(提供:アルビオン)

末松 最後に、店舗の新たな出店先として、駅ビルに注目されているとか。

小林 はい、やはり駅は人流・物流の結節点ですので、大型駅の駅ビルなどは出店先として非常に好立地です。ただ、化粧品の専門店さまは大手駅ビル会社との交渉に長けていない部分もあるので、弊社が店舗を運営し、時には専門店さまと組んで駅ビル会社と交渉しつつ専門店さまからスタッフを派遣していただく、こういう新しい業態の店舗『ALBION DRESSER』を進めているところです。現在30店ほど出店しています。

末松 実に多彩な展開ですね。本日はありがとうございました。

インタビューの後で

 小林社長とはコロナ禍以前の、インバウンド最盛期の頃にお話したことがあり、その時点で品目数も店舗数も絞り込みをかけていると聞いて、当時はその真意がなかなかわかりませんでしたが、いざコロナが発生し、かつ本日の高級品・希少性の体現を目指すという戦略をうかがってみると、戦略の背景とともに、小林社長の先見性が改めて明瞭になった気がします。コロナによって新たな手法を講じる企業が多い中、基本の姿勢からブレることなく自社の方式を貫徹する、という姿勢もむしろ新鮮でした。
 原料となる植物の栽培や研究を地方で行っているという解説がありましたが、確かに地域と結び付くと地元でも力を入れますので、企業と自治体がウィン・ウィンとなる理想的な関係だと思います。今後は、こうした地方、企業、大学や研究機関の連携が各地で進むことを期待しています。
                                                  (月刊『時評』2022年8月号掲載)

すえまつ・ひろゆき 昭和34年5月28日生まれ、埼玉県出身。東京大学法学部卒業。58年農林水産省入省、平成21年大臣官房政策課長、22年林野庁林政部長、23年筑波大学客員教授、26年関東農政局長、神戸大学客員教授、27年農村振興局長、28年経済産業省産業技術環境局長、30年農林水産事務次官。現在、東京農業大学教授、三井住友海上火災保険株式会社顧問、等。