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【時事評論】G2時代の日本

国際情勢を見極めた国家運営を

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 昨年10月21日に高市政権が成立してから、今年2月でおよそ100日が経つ。

 政治の世界では、新たな政権が成立してから100日程度は世論の期待も強く高い支持率が続く傾向を「ハネムーン期間」と呼ぶ。

 裏を返せば、これからいよいよ「ハネムーン期間」を越えて、高市政権の真価が問われることになる。

 まずもって国民の高い関心事項であるインフレ対策について、政権の掲げる「責任ある積極財政」が成功できるかどうかという問題がある。

 この点について、高市政権はアベノミクスの継承を意識しているようにも思われるが、アベノミクスが発動された当時とは経済環境が異なるので、むしろ日銀のさらなる継続的な利上げと政府の財政規律への信認がキーとなるだろう。

 インフレの主要因となっているこのところの円安傾向と長期金利の急速な上昇は、政府・日銀のマクロ経済政策への警鐘と言っていいだろうが、他方で、わが国の国際的プレゼンスを揺るがしてもいる。

 国際政治は「大国間競争」の時代を迎えつつあり、そうした中で日本が主要プレイヤーであり続けられるかどうかが問われている。

 その際に、重要な要素の一つが国際経済における日本のプレゼンスであり、通貨としての円の評価や日本国債への信認(金利)が指標となる。

 このままでは、日本が貧しくなるとともに、国際政治の主要なプレイヤーの地位を失うのではないかという危機感を持つべきではないか。

 すでに米国と中国による「G2」が国際政治の構図として浮上しつつある中、その狭間にあって「小国化」の危機に直面している日本には、賢明で冷徹な戦略性が求められる。

 日中関係は、高市総理大臣の台湾有事をめぐる国会答弁を契機として著しく悪化している。

 高市総理大臣の答弁は、政府自身が繰り返し述べているように従来の政府の立場を変更してはいないし、現行法の解釈論としても誤ってはいない。

 にもかかわらず、中国が激しく「日本叩き」を国際的に繰り広げているのはなぜかを考えねばならない。

 他方で、日中対立に対してトランプ米国大統領は、同盟国である日本に肩入れすることもなく、むしろ中国への配慮をにじませている。

 強固な日米の同盟関係を謳いながら、中国を大国間競争のライバルと位置付けながら、なぜ米国がそうした姿勢をとるのかを考えねばならない。

 米国は、今年建国250年を迎え、秋には中間選挙がある。景気を低迷させるわけにはいかず、国際的にも自国の優位性を保持したいところだ。

 そのためには、グローバル経済に深く組み込まれた大国である中国との関係に配慮せざるを得ない。4月のトランプ大統領訪中を失敗させるわけにもいかない。

 中国に対して高く振りかざした「関税」という拳が、あげたままで止まっている理由もここにある。

 米国が大豆を中国に買ってもらいたいという「ディール」を考えるとき、自由も民主主義も法の支配も関係ないのである。

 あるいは、1月のベネズエラへの介入に象徴されるように、西半球を米国の影響圏として確保するために、東半球での中国の影響圏を尊重することさえあり得る。

 他方、中国は、2027年に習近平体制が第4期目に入るかどうかという節目を控えて、今年は経済面での苦境をいかに乗り切るか、あるいは国民の不満をいかに抑えるか、という課題に直面している。

 一部の論者が主張するように、このところの「日本叩き」は、中国国民の経済的不満のはけ口となっている面も確かにある。

 また同時に、大規模な軍事演習を含めた台湾統一に向けた動きも、国民の習近平体制への支持を確固たるものとする上で必要なものだと認識されているが故に、高市総理大臣の国会答弁に強烈な反発をしているのだろう。

 しかし、それ以上に、米国が中国との関係を重視せざるを得ない「G2」体制の確立を目指した、したたかな戦略性を見て取るべきだ。

 国際的に中国の地位を高みにのぼらせることは、習近平体制継続のための戦略的な目標となっているのである。

 こうした中で、日中対立に対して米国がどのような態度を示すかは、米国の対中姿勢を試す「踏み絵」となっている。

 以上のような米中「G2」の思惑と駆け引きを冷徹に見据えて、日本は賢明な国家運営を行わねばならない。

 もちろん、経済的縮小による「小国化」の危機を乗り越えることが大前提だが、変化していく国際政治の構図の中で、主要なプレイヤーとして「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」を展開するというならば、徹底したリアリズムに立脚した賢明で冷徹な戦略と振る舞いが必要だ。

 「ハネムーン期間」を越えた高市政権に求めるべきことは多いが、だからこそ期待をしたい。
                                                (月刊『時評』2026年2月号掲載)