
2026/04/06
こんなに盛り上がる街頭演説は初めてでした。1月23日の衆議院解散による総選挙期間中、多くの候補の街頭演説を取材しました。言うまでもなく、テレビによく出る党首が応援演説をすると、一気に人が増えます。なかでも高市早苗首相は誰よりもはるかに人気がありました。集まる人は数百人規模ではなく、数千人、数万人です。一体、この人気はどこから来るのかを理解するためにいくつか取材をしました。結論から言えば、高市さんは今の日本社会が求めているリーダーの姿にぴったりではないかと思います。多くの日本人の支持者をインタビューして、そういった結論に達しました。
高市さんは初の女性首相です。ガラスの天井を破った女性というイメージが非常に強い。私の母国は「男女平等を達成した国」とよく言われますが、実はいまだに女性大統領は誕生していません。その面では日本の方が進んでいると言えます。「せっかく女性が首相になったのだから応援しよう」と思う日本人女性は多いのですが、彼女たちに政策の中身について聞くと、高市政権や自民党の公約をそれほど重視しておらず、ともかく物事を進めるために勝ち馬に乗ろうといった回答が多くありました。同時に、男女問わず「反対、反対ばかりで、野党はだめだ」という意見も少なくありません。反対し、違う意見を言う野党とマスコミは与党の邪魔だと考えるのでしょう。「彼らの意見が正しければ勝ちますが、考え方が間違っているから負けてしまうのです」といった回答も得ました。
高市さんはやる気があり、働き者であり、エネルギーに溢れていて、常に笑顔を絶やさない首相なので、国にとってイメージ的に良いと感じる日本人もたくさんいます。例えば、G7の首脳写真が世界中の新聞の一面に掲載された時、自国のリーダーを「カッコいいな」と思えれば、誇らしくて気持ちの良いことだと理解できます。今までの歴代首相は高齢男性が多かったので、この点は確かに違います。エマニュエル・マクロン氏がフランスの大統領に39歳で当選した時は、大勢のフランス人もその若さを重視し、G7の写真を見て自分の国の首脳はカッコいいと喜んでいました。
有権者は、高市さんの話も気に入っていると思います。街頭演説では「日本(ニッポン)」および「日本人」という単語を何度も発言していました。景気の良くない期間が長すぎて、自分の国は大丈夫かと不安を感じる日本人は多いと思われます。厳しい安全環境を背景に、「日本列島を、強く豊かに」と繰り返す高市さんは、まさに日本人に明るい未来を期待させます。暗闇の時代を過ごす国民は、その状況の原因を説明されるよりも、明るい夢を語る政治家を信じがちです。野党は、与党を批判しながら国が直面する深刻な課題を語って現実を認識させようとしましたが、有権者はそういった話をあまり聞きたくなかったのでしょう。日本の力を強調する高市さんは、ポジティブな物語を聴きたい国民の心に響きました。
選挙に勝つために、国民が望んでいる話に応じるのは大事です。高市さんにその政治的なセンスがあるのは間違いありません。安倍晋三元総理もそうでした。「責任ある積極的財政」は、まさにそのやる気を示す表現です。「責任」は「よく考えた上で実施する投資」を意味します。「積極的」は「前を見て迷いなくやる」。安倍元首相の「やっている感」を思い出しました。成果はともかく、全心全力でやっている姿勢を見せるのが大事だと強調していました。「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と言った高市さんは「やっている感」に溢れています。
「日本の外交を取り戻す」と言いながら、中国に対して強い姿勢を示すと同時にトランプ大統領の応援を得ている高市さんは、ファンに非常に高く評価されています。選挙中に非現実的な話をするのは仕方がありません。どの国でも、どの政党でも実現できないことを公約します。有権者も知っています。全ての公約を信じてしまえば失望する可能性が高い。しかし、高市さんの発言や姿勢は自民党の歴史的な圧勝につながりました。つまり多くの国民は公約を信じ、高市さんなら実現してくれると確信している可能性が高いのです。
ただ、高市フィーバーはずっとは続かないと予想できます。物価高対策で早いうちに具体的な政策とその成果が見られなければ、無党派層は高市さんから離れるリスクがあります。高市内閣の支持率が下がった場合、存在感がほぼなくなった左派の野党は受け皿になりませんから、ポピュリスト的な政党が強くなるリスクが高くなります。そうならないように自民党の党内野党が出てきて、日中関係の改善のために働きながら、日本がトランプ大統領の全ての要求に無条件で従わないよう、ブレーキの役割を果たすことが必要ではないかと思います。
(月刊『時評』2026年3月号掲載)