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地方創生の新たな展開/地方創生推進事務局長 髙橋謙司氏

新たな取り組み「連携〝絆〟特区」

 もう一つの「連携〝絆〟特区」は、地域における産学官等の多様なプレーヤー同士の連携の下、共通の課題を有する他の地域とも連携しながら、規制・制度改革を進め、地域課題の解決を目指すという、地方創生における新たな取り組みです。2024年6月に、福島県・長崎県が新技術実装連携〝絆〟特区に、宮城県・熊本県が産業拠点形成連携〝絆〟特区に、それぞれ指定されました。

 福島県・長崎県の新技術実装連携〝絆〟特区は、ドローンによるオンデマンド配送の実現や、住宅地における圧縮水素の貯蔵量上限の緩和が主な取り組みです。特に、長崎県では昨年11月、日本で初めてドローンのエリア単位でのレベル4飛行、つまり2点間ではなく面的なエリアでの有人地帯での目視外飛行を実現しました。続く12月には福島県で2例目の実証飛行を実現しました。福島県では、ロボットテストフィールド(RTF)という実証の場が整備され、ここでスタートアップ企業などがさまざまな実証活動を展開しています。東日本大震災後の浜通りに、現在ロボット関連企業が80社ほど集積しており、新たなビジネスやサービスの創出が期待されるほか、浪江町では脱炭素電源による地域運営を目指す再整備事業が進んでおり、その一環として圧縮水素の貯蔵量の上限緩和に向けた基準づくりと実証・実装を進めているところです。

 一方、産業拠点形成連携〝絆〟特区において、特に熊本県では、半導体関連産業の一大拠点が形成されつつあります。同時に半導体関連産業の現場では、数多くのエンジニアを確保する必要があり、このうち優秀な外国人エンジニアが早く日本で活動できるよう、出入国在留管理庁が担当している審査の一部を県が実施することで、在留資格認定証明書交付申請の審査の迅速化を図るほか、関連産業のスタートアップ企業が活動しやすくなるよう、開業ワンストップセンターの設置などの取り組みを進めています。

(資料:内閣府)
(資料:内閣府)

全国どこでも使える構造改革特区

 次いで、構造改革特区についてご説明します。これは全国どこでも使える制度であることが大きな特長で、これまでの四半世紀に及ぶ取り組みで今春まで760件もの規制改革を実現してきました。また、規制の特例措置後に全国展開した例も150件近くにのぼります。

 活用されたメニューのトップは、おそらく多くの人が耳にしたことがあるであろう〝どぶろく特区〟こと、「特定農業者による特定酒類の製造」です。そのほか、公立保育所の3歳未満児に対する給食について、保育所外で調理し搬入することを可能とした特例なども、構造改革特区の枠を超えて令和9年度から全国どこでも取り組める制度にするため、その準備を進めています。

 また、〝ワイン特区〟こと「特産酒類の製造事業」により、各地で自治体が連携してワインづくり等が盛んになりました。従来は年間6キロリットルつくらないと酒税免許がおりないという最低醸造量の規制があったのですが、これでは小規模な新規醸造者は参入できません。そこで最低醸造量を引き下げることで、参入しやすくしたというものです。同事業は地元特産の果実などを使用することで地方創生とも親和性が高く、地域の新しい特産品としても高く期待されています。そのほか企業が学校を運営したり、農地を取得して農業に乗り出す事例なども各地で広がっています。

 また、総合特区制度に関しては、提案があれば国家戦略特区で応援するという形が定着していることもあり、基本的には現在のところ新規の指定はしておりません。ただ、現在も全国で22件が指定されており、国際戦略総合特区における税制上の支援措置などが活用されています。

 以上のように特区とは、規制緩和を図りビジネス上の課題を解決することに主眼が置かれているわけですが、そのためにも安全・安心を担保するような技術開発や実装に向けたエビデンスの調査・実証なども必要となります。そうした点を支援するための国による調査予算も確保しており、特区における新しいサービスの実装に向けて国費で実証し、新しいルールづくりを自治体や事業者とともに進めています。また、財政支援としての地域未来交付金、金融支援としての利子補給などのメニューもそろえており、中でも最近の金利上昇局面により、この利子補給は注目を集めているところです。

 本年1月、国家戦略特区制度に関し、新たな運営方針が示されました。政府は現在、17の戦略分野を掲げ、この夏を目途に分野ごとの成長戦略を策定する予定となっていますが、これら17分野における戦略的投資の促進においても、特区制度をより効果的に活用していく方向です。その一環としてこの4月まで、産業クラスターの形成につながる規制改革提案の集中募集を受け付けました。

 例えば宇宙・航空分野に関しては、ロケットを飛ばすために必要な火薬や高圧ガスの取り扱いなどに関する提案が寄せられました。こうした提案については、私たちとしても関係省庁と連携しながら実現に向けて取り組みたいと思っています。事務局では特区諮問会議のほか、有識者による特区WGを設けており、月に2~3回という頻度で関係省庁や提案者に、規制の要不要や実現に向けた方策等についてヒアリングや調整を行っています。

交付金から税制まで各種支援メニュー

 先ほど一部触れました地域未来交付金について。これは自治体の地方創生の取り組みを、特別な予算で支援するもので、令和8年度は当初予算で1600億円、7年度の補正で1000億円が計上されました。同交付金は、いわゆるソフト事業や、また拠点整備として道の駅の販直施設やコミュニティスペースをつくる、といった内容にも幅広く使えるのが大きな特長です。全国4カ所で展開中の半導体等の拠点において、例えば熊本のJASMの工場周辺の道路が渋滞しているといった課題があり、同交付金の地域産業構造転換インフラ整備推進型を使って道路の整備事業を支援するといったことも行っています。

 また、税制面での支援措置もあります。まずは地方拠点強化税制。東京23区から地方に事務所や研究所などを移転する際の優遇措置である移転型と、地方において既存の施設を拡充する場合などを応援する拡充型があります。移転型ですと税額控除7%、拡充型でも4%の減税措置が講じられ、全国ですでに800件超が認定されています。また令和8年度税制改正において、一定の新規要件を満たす場合に両措置の控除をさらに8%、5%へと上乗せする措置が講じられたほか、中古資産の購入・改修においても活用できるようになったのは大きな拡充だと言えるでしょう。

 税制措置のもう一つが、企業版ふるさと納税です。企業が自治体に1000万円寄付したとき、最大900万円の法人関係税が軽減されるというもので、2020年から税額控除の割合が現行まで引き上げられ、24年度の活用は630億円超となりました。社員を自治体に派遣し、人件費分の寄付を行う人材派遣型もあります。

 また、特区に関連して一部前述した利子補給制度は、特区だけではなく、県や市町村が策定する地域再生計画に資すると最大0・7%の負担軽減が図られます。全国で100以上の指定金融機関が同制度を取り扱っていますが、それ以外の金融機関でも指定可能なので、詳細など私たちにご相談いただければと思います。

 さらに、都市再生緊急整備地域においても、法制・財政・金融・税制にわたり特別措置を講じており、近年は大都市圏だけでなく地方都市でもこれらの措置を活用するケースが増えてきました。また、「中心市街地活性化基本計画」におけるメニューも多数取り揃えています。

 最後に、地方創生SDGs 官民連携プラットフォームについて。自治体におけるさまざまな課題の解決に取り組む民間企業のマッチングをするプラットフォームで、現在は地方自治体が1200団体以上、民間企業等7000団体超に登録いただいています。ネット上だけではなく年に数回リアルなイベントを開催するなど多様なマッチング手法を駆使しています。

 本年は7月の8~10日まで東京ビッグサイトにて開催予定で、事前に各自治体より課題内容を提示していただき、それに対しその内容ならうちのサービスや技術が使える、という企業の皆さまに当該自治体のブースに来てもらい、対面でやり取りしていただくという方式で実施します。地方創生の取り組みは企業の皆さまの支援なくしては成り立ちませんので、ぜひご協力を頂ければと思います。
                                                (月刊『時評』2026年6月号掲載)