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地方創生の新たな展開/地方創生推進事務局長 髙橋謙司氏

―経済活性化と再起動した特区制度―

たかはし けんじ /昭和43年6月12日生まれ、愛知県出身。京都大学法学部卒業。平成3年建設省入省、29年国土交通省住宅局住宅総合整備課長、30年土地・建設産業局建設業課長、令和2年大臣官房総務課長、3年水管理・国土保全局次長、4年大臣官房総括審議官、5年内閣府政策統括官(防災担当)、7年7月より現職。
たかはし けんじ /昭和43年6月12日生まれ、愛知県出身。京都大学法学部卒業。平成3年建設省入省、29年国土交通省住宅局住宅総合整備課長、30年土地・建設産業局建設業課長、令和2年大臣官房総務課長、3年水管理・国土保全局次長、4年大臣官房総括審議官、5年内閣府政策統括官(防災担当)、7年7月より現職。


 2025年6月に閣議決定された「地方創生2.0」基本構想は、今後の地方創生に向けて特区を再起動させていく、という方針を打ち出した。また現在の高市政権においても、特区は日本経済全体の成長に向けた推進力と位置付けられている。では現在、どのような特区が全国各地で展開されているのか。今回、髙橋謙司事務局長に、特区を中心とする地方創生推進の新展開について解説してもらった。


特区制度は新たなルールを作る、使う

 まず、現在の地方圏と東京圏に関する状況につきまして。コロナ禍に一時、東京への転入数が落ち込みましたが、その後再び転入超過基調を描いて現在に至ります。転入数約11万人のうち、半数超の6万人を女性が占めていることから、地方においても、若者に加え、女性が働きやすい環境づくりが重要であり、地方創生における主要課題の一つに位置付けられています。

 他方、年代別では50代後半~60代に関しては転出超過の傾向にあり、働き盛りを過ぎた後、故郷あるいは他の地方で第二の人生を送ろうとするニーズが根強いものと推察されます。こうした方々をしっかり応援しながら、地域でご活躍いただくことも大切だと考えています。

 また、いわゆる三大都市圏とそれ以外の地方圏という捉え方でGDPの比率を見ると、日本全体のGDPのうち半分強を地方圏が占めており、地方圏の経済が日本全体の経済成長を図る上でも極めて重要であることが分かります。

 地方の活性化に取り組むべく、われわれ地方創生推進事務局はちょうど10年前の2016年に設置されました。ただ、事務局の主要な取り組みである構造改革特区や都市再生は小泉政権時代の02年にいち早く実施されるなど、既に四半世紀近い歴史を有しています。事務局では現在、「規制改革」「都市機能の充実」に加え、「地域再生等の推進」として、地方自治体が地方創生に活用できる地域未来交付金や、企業版ふるさと納税などを担当しています。

 では、そもそも特区制度とは何か。「国と自治体・事業者が協力し、規制改革を行うことで、地方創生や日本の国際競争力の強化などにつなげる制度」です。全国一律に適用されている規制や制度が、個別地域の実情に合っていない、技術の進展やビジネスの実態と適合していないといった問題を背景に、特区制度を活用して新しい規制の特例を提案・創設し、特例の活用と横展開を図り全国的な規制緩和を目指す、そうすることで地域課題の解決や新たな市場サービスの創出に資する、これが同制度の理念となります。例えばドローンなどは、ちょっと前まではそうしたものが世に出現すると想定されていなかった面があり、どのような基準で安全確保しながら社会実装していくべきか、特区を活用しながら実証を行っていくのが適していると思われます。

 いわば特区制度は「新たなルールを作ること(全国ルールや特例の創設の提案)」と「作られたルールを使うこと(特例の活用)」に大別されると言えるでしょう。そして「特例の活用」を行う場合、全国どこの自治体でも活用できる「構造改革特区の特例」と、指定された区域で活用できる「国家戦略特区/総合特区の特例」に分類され、それぞれ特色を有します。

数多く活用されている国家戦略特区

 そのうち現在数多く活用されているのが国家戦略特区です。国と自治体、事業者、民間有識者等の協力の下、地域の実情に応じた規制改革を進め、地方創生と日本全体の国際競争力の強化等につなげる制度で、2013年の制定以来、さまざまな分野で多くの規制改革を実現してきました。特に令和に入ってからは各地で課題解決型の特区を進めているところです。

 自治体や事業者などからの提案を受け、その提案を所管省庁とともに検討します。総理をヘッドとする国家戦略特区諮問会議の議論を踏まえながら、最終的に提案が認められれば規制改革を実施していく、というスキームで進めています。

 例えば東京都では、都市計画の手続きをワンストップで行う特例を使っていただいています。大規模な都市開発を行う際には、都や区がそれぞれ管理する道路や公園なども含めて多角的に調整する必要があるのですが、これらをワンストップで進めることができるという特例で、通常のプロセスに比べ数カ月程度、期間の短縮が可能となります。東京都はこれまで同制度の活用により数々の大規模都市再生プロジェクトを実現してきました。また国家戦略特区の特例を使う場合、国際関係や医療関係の施設を対象に設備投資を促進する税制の特例措置を設けるなど、税制でも支援しています。

 次いで、福岡市のグローバル創業・雇用創出特区をご紹介します。福岡空港は市街地近くに位置しており、航空法の制限により高い建築物が建てられない規制になっていたのですが、国家戦略特区制度を使い、航路の安全性を確保した上で高層建築物の建築を実現した事例です。これにより、これまで約70棟のオフィスビルや商業施設を建設してきました。活用開始から現在まで15年ほどの間に、高層ビルの固定資産税などで税収が1・5倍に増えたとのことです。

 またスタートアップの創業支援も行っており、外国籍の方が新たにスタートアップ企業を立ち上げる時の要件やファンドからの資金調達規制などを緩和しています。またスタートアップ企業に対して税制の特例措置も設けており、その効果もあって開業率は高水準で推移していると承知しています。

国家戦略特区による課題解決

 他方、課題解決型の国家戦略特区も、地域を厳選しながら各地で展開されています。茨城県つくば市や大阪府・市のスーパーシティ構想、宮城県や熊本県における半導体関連産業の新たな拠点形成などが代表的な事例となります。また三つの自治体が連携して、健康・医療分野で革新的な事業を実施していく取り組みもあります。

 このうちスーパーシティ構想は、データ連携基盤を整備し、多様で先端的なサービスを実現していく取り組みです。つくば市では、AIやビッグデータなど先端技術を活用しながら、パーソナルモビリティの最高速度の引き上げを目指したり、地域内外の医師とオンラインで連携して小児かかりつけ医体制を実現しています。大阪府・市では、空飛ぶクルマの社会実装を目指したりAIを活用した気象予報を利用するなど、独自の方式で市民生活の利便性の向上を目指し、さまざまな実証を進めています。

 特に、大阪府・市では、多数の民間企業をつなぐデータ連携基盤を構築し、物流・観光・防災等あらゆるデータを行政と民間部門で共有し、新たなサービスやビジネスを創出する方針です。また、府外の都道府県とも広域連携して新たなサービスの展開を図り、まずは今年度より滋賀県と広域観光などのデータの共同利用を開始しました。

 自治体の枠を超えた連携という例では、石川県加賀市、長野県茅野市、岡山県吉備中央町が連携し、デジタル田園健康特区を形成しています。これは地理的に離れた三つの市町がデジタル技術を活用して健康・医療の課題解決に重点的に取り組むもので、国家戦略特区の一つである革新的事業連携特区(バーチャル特区)として指定されました。官民データの相互利用の円滑化によるサービス開発の推進、デジタル版の健康手帳交付、中山間地域における貨客混載タクシーで医療品等の効率的配送などに取り組んできています。

(資料:内閣府)
(資料:内閣府)