
2026/10/13
また昨年末、遠藤敬内閣総理大臣補佐官の下で、関係省庁のPFI担当の課長級職員を一堂に集めたタスクフォースが設置され、今回のアクションプラン改定案についても議論が行われてきました。さらに今後、このタスクフォースで民間事業者や自治体からのアイデアを募集し、これを関係省庁の協力のもとで新しいプロジェクトとして実現を図ろう、としております。まずはアイデア段階の新たな事業手法等について募集し、タスクフォースで期待される効果や実現可能性等を吟味した上で、関係省庁のネットワークを通じてそのアイデアを活用できそうな実際のプロジェクトを探して、より具体的な検討につなげていけないか、と考えています。
次に、分野横断型・広域型の事業の推進についてです。関係機関がPFIに関する情報交換・共有を行う地域プラットフォームを各地に設置しているのですが、そこに都道府県や地域金融機関などの参画を促し、広域型あるいは分野横断型の事業実施の普及拡大に取り組んでいきたいと考えています。
地元で独自にサービスを提供したいと考える自治体が多いでしょうから、このような事業の実現は簡単ではありませんが、一定の事業規模を確保しないと、人手不足の中で民間も手を上げませんし、事業の効率も上がりません。例えば複数自治体に分散する施設を統合するような事案について、まずは中心となる市でPFIを実施し、その事業を行うべく設置されたSPC(特別目的会社)が他地域の施設を統合・運用していくような方策を取れれば効率的ではないでしょうか。そうした事例解説の作成なども検討しています。
物価上昇対策というもう一つの課題
もう一つの課題が、建設物価が2015年比で約1・4倍に上るという物価高騰、そして金利上昇への対応です。
PFIは事業期間が長く影響も大きくなるため、この状況変化に適切に対応していかなければ、PFIの持続的発展は困難です。物価上昇は公共主体で事業を行っていたとしても同様の影響が出ているはずであり、公共工事と同様に、不可抗力のリスクとして、発注者側の負担が基本となりますが、実務としては、影響度合いの公平な判定など、容易でない点も少なくありません。アクションプラン改定版においては、PFI法に基づいて閣議決定した基本方針への物価高騰対策の明記、リスク分担ガイドライン見直しの検討などを盛り込んでいます。
全国各地での案件形成に向けた四つの支援
これまで人口規模の比較的大きな都市部でのPPP/PFI導入が先行してきておりますが、全国各地域における多様な案件の形成に向け、政府は以下の支援を行うこととしています。
まずコンセッションの裾野の拡大。これまでコンセッションの案件は空港が多かったものの、最近はアリーナや上下水道、また古民家リノベのような小規模案件でも導入が行われつつあります。コンセッションは民間の創意工夫のインセンティブが働きやすい事業構造になっていますので、さらに多様な分野へ応用していくことが有効と考えています。そこで、これまでコンセッションが行われていなかった施設や分野でも適用可能である旨を基本方針で明示するほか、建設とコンセッションが一体となった〝BT(build& transfer)+コンセッション〟といった複合型の事業手法も生まれてきており、初めてコンセッションに取り組む自治体でも分かりやすくなるように、ガイドラインの記載の明確化を図ることとしています。
次いで、スモールコンセッションの取り組み強化と目標設定を行っています。主に、地方に多数存在する遊休の公的資産等を対象に、これを利活用すべく情報提供等を行い、2031年までに100件のスモールコンセッション事業の具体化を目指します。
三つ目、中小の民間事業者等への情報提供の強化。自治体への情報提供だけでなく、地域の建設事業者や施設管理を行う事業者の方々へ、事例を含めて広く情報発信します。また「PFI事業実施手続き効率化マニュアル」を作成しておりますので、これを地域プラットフォーム等において周知し、発注者側にその積極的な活用を促していきます。
最後に、内閣府所管の官民ファンドであるPFI推進機構による伴走支援です。主に、まだ民間コンサルに予算を使用して業務委託を行う前の段階、つまり、PFI手法を使うかどうかの検討初期段階の自治体への伴奏支援や、地域のオーガナイザーとして期待される地域金融機関などに対する情報提供を行います。日本のPFIの特長として、欧米等と比べて利回りが高いわけではないのですが、中止される案件はかなり少ないと認識しており、これらに出融資するPFI推進機構も黒字を確保しています。これを原資として専門家が自治体への伴走支援を行う、という取り組みです。
これまでのアクションプランにおいては、2022~31年の10年間で30兆円という官民連携投資の事業規模目標を設定していたのですが、今般の改定で10兆円上乗せし、40兆円としました。アクションプランに基づく各種施策を着実に実行していくことで、新たな目標を達成していきたいと考えています。
また、アクションプランの改定と併せて、本年6月に、PPP/PFIの基本方針も18年以来8年ぶりに改正されました。まずは前述の通り物価変動への対応を明記しました。次に、競争性のある随意契約においては事業規模の水準等を事前に公表することができる旨を追記しています。また建設業法など関連する法改正について、公共工事だけでなくPFIにおいてもしっかり対応してもらうことを記載しております。
PFIへの疑問や懸念に対して
最後に、日本のPFIの性格などをより深く理解いただく観点から、よく寄せられるさまざまなご指摘や疑問と、それに対するわれわれの認識をご紹介したいと思います。
まず、「PFIは公共施設を民営化すること?」という疑問についてですが、PFIは公共施設の整備や運営について、民間の資金や技術を活用して効率化を図るもので、民営化ではありません。そのサービスの最終的な提供責任は行政に残ります。
また「民間や外資に公共施設や運営権が売られてしまうのでは?」との懸念も寄せられます。施設の所有権は公共が保有することがほとんどで、民間が第三者に運営権を譲渡しようとする場合も、日本のPFI法上は公共側の許可が必要とされており、民間の一存によって運営権を売ることはできません。
そのほか、「民間事業者が利用料金を徴収できると、勝手に値上げされるのでは?」という疑問もよく聞きます。PFIで民間事業者が利用料金を徴収する場合でも、当該事業者が自由に料金を決められるわけではありません。多くのPFI事業では料金の上限や改定ルールは条例や契約等で定められていて、公共側の承認なしに勝手に値上げすることはできないのです。なお、現実的には公共運営であってもPFIであっても、物価上昇や人口減少に伴い、いずれ値上げとなる可能性はあります。
さらに「民間事業者が途中で撤退したら公共サービスも無くなってしまうのでは?」という疑問も生じるところです。この点、PFIは契約において、安易な撤退ができない仕組みが設定され、また事業者が破綻した場合には事業の引き継ぎに必要な定めがあるなど、公共サービス継続に向けていくつものセーフティネットを設けています。
また、PFIであっても公共主体であっても、いま時点、当面の運営を効率化するという話と、将来どういう継続体制をつくっていくかという話は、双方ともに大切な論点で、それぞれ検討しておく必要があります。いずれにしても、20年、30年後を見据え、持続的な体制構築を早い段階から考えておくことが重要です。前述の通り、実際に宮城県の上工下水道のPFI事業では、地元雇用主体の運営会社の設立など、将来の運営継続体制の確保が図られています。
また海外で新規PFIを取りやめた英国の例や、再公営化するフランスなどの例も報じられますが、一方で、同じ国でも違う地域では同種の事業をPFIで行っていたり、これからPFIを導入しようという地域もあります。各国ともそれぞれ仕組みやルールが異なり、また背景となる社会課題も異なるので一概に比較するのは難しく、実際には、何らかの形で官民連携が行われています。
一方でPPP/PFIに対するさまざまな心配の声があるのも事実ですので、PPP/PFIに対する適正な理解を広め、より多くの関係機関に関心を持っていただきたいと考えています。
(月刊『時評』2026年9月号掲載)