
2026/04/07
2026(令和8)年中の防災庁設置を控え、昨年末に「防災立国の推進に向けた基本方針」が閣議決定されるなど、国の防災政策はより高まりを見せている。過去の災害事例を教訓に、人的交流の制度づくり、デジタル技術を駆使した情報基盤などを多角的に展開、さらに各地域や産業界の防災意識向上を支援する構えだ。横山政策統括官に、直近の政策状況を解説してもらった。
内閣府政策統括官(防災担当)
内閣官房防災庁設置準備室次長 横山 征成氏
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防災庁設置に向けて鋭意進行
――まずはごく大まかに、防災・減災に向けた基本的方針をお聞かせください。
横山 本年冒頭の相次ぐ地震の発生、豪雪、そして近年浮上してきた大規模森林火災など、わが国における自然災害はより激しさを増し、まさに日常生活において災害が身近にある、というのが率直な状況だと言えるでしょう。当然、政府としてはこうした各種災害の予防と減災にしっかり対応していく、これが従来から変わらぬ一貫した基本方針です。
ただ、災害が発生する地域によって、求められる対応が異なるのは確かです。2024年1月1日に発生した能登半島沖地震では、少子化人口減による地域的課題を抱えたエリアでの災害が発生した場合の対応、被災者の高齢化比率が高い中での災害関連死対策等、抑制に向けたさまざまな課題が認識されました。加えて、平時でも活力の停滞に悩む地域で災害が発生した後、どのように復興に寄り添っていくかという課題も改めて示されました。
こうした状況を背景に、25年6月には改正災害対策基本法を公布しましたが、組織体制としては26年中の防災庁設置が目下のところ主要テーマとなります。直近では昨年末に「防災立国の推進に向けた基本方針」が閣議決定されました。
――防災庁設置に向けた現在の状況などは。
横山 徹底した事前防災を図り、発災時から復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔機能を担う、そのための準備を鋭意進めているところです。事前の準備としては、各地方地域における所与としての条件やマンパワーを含めた現在の体制・状況を前提に、発災後にどのような事態が生じると想定されるか、地域ごとにしっかりしたシミュレーションを事前にしておく、これに本腰を入れていきます。これまでこの種の想定は地域に委ねる面があったのですが、今後は国が組織としても予算規模としても深く関わっていくことになります。そのためにも、事前防災を進めるための交付金を令和8年度の予算案で計上しました。
――復旧・復興に関してはいかがですか。
横山 能登において一部実践が先行していますが、復興のフェーズに関しても国がしっかりフォローする、今後はこれを標準的な方式として具現化することを考えています。これら事前と事後の対応によって、国民が安心して暮らせる国になるよう努力していく方針です。
「ふるさと防災職員」の充実を
――事前防災の重要性は言をまたないところですが、具体的にその体制をいかに高めるかが問われると思います。
横山 これまでの伝統的な考え方からすると、防災への備えはあまねくどの地方もやらねばならないもの、という位置付けでした。つまり地方財政措置をしているので、具体的な内容は地方にお任せするという考え方です。しかし地域力が低下しているところへ激甚災害が発生する現状を鑑みると、地域によって災害対応に差異が生じる場合も現実に起き得るわけです。
それに対しわれわれの目標としては、どこに住まわれていても、いざ発災時に等しく同質の被災者支援が提供される状況にしておかねばなりません。そのためには、時間との勝負という側面があります。すなわち急ぎ各地域の地域防災力向上を図る、その手段として、備蓄をいかに揃えるか、避難所の環境を事前にどう整えておくか等々に関し、補助できる仕組みづくりを目指してきました。
これまでは年度の補正予算、すなわち臨時的に予算措置を講じてきたのですが、前述の通り今回から初めて、当初予算で地域の事前防災を進めるための交付金を措置しました。これは防災庁設置における年度予算の、一つの目玉とも言うべき施策となります。同交付金をしっかり活用してもらって、地域ごとの発災事前シミュレーションを進め、自分たちの地域は何が弱点か気付きを得る、そして弱点を解消するような準備を進めていく、これを望ましい事前防災として促していきたいと思います。
かつ、単に予算を交付するだけでなく、「ふるさと防災職員」という人的対応の充実を図っています。
――これはどのような制度でしょうか。
横山 防災庁設置に向け職員を段階的に増員する中で、各都道府県を担当するカウンターパート職員を育成しています。同職員は平素から各都道府県の防災危機管理担当の職員と密に連絡を取り〝顔が見える関係〟づくりに努め、地域防災について日々アドバイスする役割を担います。言うなれば、国の職員でありつつも地域の防災力強化に、ともに取り組む担当者ということになります。
まだこれからという面もありますが、既に各都道府県の担当者との人的関係はかなり強化されており、また職員数をさらに増員する方向にあるなど、この取り組みには高い期待が寄せられています。
そして実際に地方で災害が発生したとき、「ふるさと防災職員」は真っ先に現地に駆け付ける人員でもあります。ここ1年の間にもトカラ列島の群発地震や八丈島における台風の連続上陸の際には、同職員が現場の役所に急行しました。
――既に顔見知りとなった職員が現場に来てくれるのは心強いでしょうね。
横山 緊急時にも平時の延長線上の位置付けで情報共有や相談を受け付け、その内容を内閣府防災内の各担当はもちろん、関係各省庁にも情報を伝達・共有し、被災地のニーズを迅速に対応する体制が構築されつつあります。防災庁設立による人員増においては、このように量・質とも従来以上に強化された体制で臨めると期待しています。
「被災者援護協力団体」と「災害中間支援組織」
――官民連携、特にNPOやボランティアの方々との連携体制などはいかがでしょうか。
横山 現在の防災・減災は、行政だけではきめ細かい対応に限りがある、これが周知の認識だと思います。他方、1995年の阪神・淡路大震災以来、個人のボランティアを災害現場でどうマネジメントし、復旧等に効果的に活躍いただくか、これも災害が起きるたびに求められてきた点でした。
これまでの災害では、発災後にNPO・ボランティア団体が自主的に現場へ参集してから、どこにどのような支援ニーズがあり、誰が行ってどう活動するのか等のマネジメントを、その時その場を起点にスタートする、という体制までは整えてきました。それに対して今後は、前述の「ふるさと防災職員」のように、あらかじめ関係者や団体同士、人的関係を構築しておけば、いざ災害発生時のマネジメントがより円滑に運ぶのではないか、と構想しています。
具体的には改正災害対策基本法において、「被災者援護協力団体」登録制度を創設しました。各団体はこちらに活動実績や得意分野など、地方自治体からも団体のあらましが明確化するよう事前登録していただくこととなります。
――なるほど、ボランティア団体のフェースシートのようなイメージですね。
横山 さらに言えば各団体同士も、相互に概要や得意な分野を体系立てて見えるようにし、それをもとに事前に意見交換や情報交換等を密にしてもらえれば、緊急時により効果的な連携や人的配分が可能になると想定されます。
そして、被災の現場でカギとなるのが情報と情報、団体と団体のマッチングを図る「災害中間支援組織」です。同組織は現場よりもむしろ、現場に向かう人々のコーディネートを主目的とするもので、こうした機能を持つ団体が各地域で育っていくと非常に心強いことから、国としてもその育成を推進しています。この点は国土強靱化の第一次実施中期計画においても、計画期間内に全都道府県において災害中間支援組織ができるよう取り組むことが、目標として明記されました。まずはモデル事業等を活用しながら、県単位の空白地域を埋めていくよう重点的に組織づくりを支援していくつもりです。