
2026/09/15
こうした背景により、ワットすなわち電力、およびビットすなわち情報通信の融合に基づく需要と供給の一体化を図るという意味で、ワット・ビット連携の推進が強く求められているのです。
具体的には、まずDCを新設できるところ、すなわち大規模送電線の建設が不要で早期に電量供給を開始できる場所を示した「ウェルカムゾーンマップ」をもとに、各電力会社から、この場所ならこのくらいの電気を提供できる、という地域が公表されています。例えば栃木県のとあるエリアでは10万キロワットならば供給可能、つまりそのくらいの需要規模のDCなら立地等を検証しつつ何とか新設可能、ということを意味しています。しかし逆の視点としては、それ以上の電力需要を要する大規模DCを立地できるところはほぼ無い、ということも示しています。ならば関東から離れて、他の地域に適地を求めるべきという方向になります。
加えて、前述のようにDCへの供給電力は可能な限り脱炭素電力が望ましいというニーズがあります。従って地域偏在性と脱炭素電源をどうつなげていくか、これも大きな課題の一つです。
そこで昨年6月、経済産業省・総務省連携でワット・ビット連携の大きな方向性を取りまとめました。実現に向け、時間軸ごとに三つの段階に分けて推進を図る方針です。
まず、とにかく今必要だという足元のDC需要への対応。これはウェルカムゾーンマップを活用しながら、小規模で良いので早期新設が可能な地域を事業者にご紹介しながら整備を誘導すること。次いで、2030年代くらいを念頭に、ギガワット級の新しいDC集積地への立地を図ります。これは後述する「GX戦略地域制度」の中で、地域の公募をかけながら選定していくこととしています。三番目は長期的視点で、必要な電力を少なくできるような技術革新を進めながら、APN(オール光ネットワーク)を全国的に整備したり、需要の偏在性を解消して平準化を図ったりするなど、立地にとって大きな支障とならないようなネットワークづくりを目指す、というものです。
なぜ、単なる地域分散を超えて、「DCの集積地」が求められるのか少し補足しますと、まずは、電力・通信の両インフラを集中的に整備することにより、複数のDC事業者でインフラを共有する設計なども可能となることです。さらに運用保守事業者やITベンダーなど関連企業の誘致にもつながり、DCの建設や設備更新に関わる地元建設業、物流、飲食業等への需要増も想定されるなど、地域経済への波及も期待できるところです。世界的にも、米国や中国、ブラジルなどではDCの集積地域が各地に形成されつつあります。従ってこうした集積地を上手く整備していくことが日本の競争力の源泉になると思います。
他方で、DC建設に反対するような地域トラブル等も発生しつつあることから、やはり自治体が関与しながら地域の理解を得ること、また電力会社から見て一定期間内に系統整備を行うことが可能か等、多角的な観点から課題を解決した上で集積を進めることが重要だと認識しています。
「GX戦略地域制度」の三つの類型
こうした流れから生まれたのが、「GX戦略地域制度」です。「GX2040ビジョン」において、地域にGXの集積地を造っていくという方針を打ち出しました。これに基づき、産業資源であるコンビナート跡地や地域に偏在する脱炭素電源等を核として、自治体や起業の発意で「新たな産業クラスター」の創出を目指す「GX戦略地域制度」を創設しました。
同制度では、以下の三つの類型を想定しています。
一つ目はコンビナート等再生型。日本全国に残るコンビナートの跡地などを有効活用し、産業クラスターを形成します。個々の企業の判断を超えて地域で集積し、副生ガスの活用や共同火力などを面的に取り組むことで競争力を発揮していく、そのためにコンビナートという既存のアセットに、新しいGX型の産業を呼び込みながら、跡地の活性化を図ることが目的です。特に化学関係や素材関係のスタートアップなどは、規制をクリアできていて一定の用地のある治験プラントがどこかにないか探しているケースもあるため、そうした需要に類型を上手く当てはめられればと思います。
二つ目はこれまで申し上げてきたデータセンター集積型。電力・通信インフラ整備の効率性を踏まえたDC集積、およびそれを核とした産業クラスターの形成を図ります。
三つ目が脱炭素電源活用型です。脱炭素電源を活用した団地を整備し、当該電源を核とした産業クラスターを形成する〝GX産業団地〟の実現を目指します。原子力や再エネなど脱炭素電源を擁する自治体が、当該地域に産業を呼び込むことで雇用創出など地域経済活性化を図っていこうという構想です。脱炭素電源の供給地が元気になることによって、脱炭素電源の整備がさらに進むという好循環を期待しています。
昨年末から各類型における地域選定に向け自治体からの公募を開始し、4月下旬に有望地域を公表、以後も計画の洗練や最終審査をかけてきました。この夏には候補地域が最終決定される予定となっています。
また前記三類型とは別に、個別企業が申請するタイプとして脱炭素電源地域貢献型を設定しています。これは脱炭素電源を活用し、当該電源の立地地域に貢献する事業者の設備投資を応援するという枠組みで、いわば類型三番目のGX産業団地と表裏を成すものです。このような形で地域の努力、事業者の努力をともに応援しながら、GX戦略に基づく地域づくりを進めていく方針です。同類型に対しては現在、脱炭素電源地域貢献型投資促進事業として、製造事業者やDC設備投資等への支援を対象に、国庫債務負担行為を含め5年間で総額2100億円を措置しています。こちらも7月中旬から公募を開始する予定です。
これらの類型を活用し、脱炭素電源の立地地域に新規の設備投資を呼び込む一方、DC事業者からは脱炭素電源を活用した産業を新たな企業活動の源泉とするという相乗効果を求めています。さらにこうした取り組みを応援することで、地域における新たな投資や雇用の創出を進め、それがDCに対する地域の理解促進、そしてさらなる脱炭素電源供給の拡大、脱炭素型の国際競争力ある産業の創出へ、将来に向け段階的に発展していくことを期待しています。
(月刊『時評』2026年8月号掲載)