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広域リージョン連携と持続可能な地方自治/総務省自治行政局行政課長 植田昌也氏

◆総務省地方自治行政政策最前線

うえだ まさや/昭和47年10月12日生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業。平成7年自治省入省、平成29年総務省自治行政局行政経営支援室長、30年(併)同行政課2040戦略室長、令和2年同市町村課長、4年自治税務局市町村税課長、5年自治行政局住民制度課長、6年7月より現職。
うえだ まさや/昭和47年10月12日生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業。平成7年自治省入省、平成29年総務省自治行政局行政経営支援室長、30年(併)同行政課2040戦略室長、令和2年同市町村課長、4年自治税務局市町村税課長、5年自治行政局住民制度課長、6年7月より現職。


 成長やイノベーション創出を目的として、都道府県域を超えた民間主導の官民連携である「広域リージョン連携」の取り組みが進められている。他方で、人口減に伴う職員不足と、相反して増大する業務量により、市町村中心の事務処理は深刻な状況下にある。事務処理の共同化等を進めながら、国や都道府県の役割の再定義を含め、いかに持続可能な地方行政を実現していくか、これは今冬はじまった第34次地方制度調査会でも議論の核心となる。地方自治の現状と今後の展望について、植田昌也課長に語ってもらった。



広域連携の新たな枠組みとして

 「広域リージョン連携」は、2024年末に日本経済団体連合会が行った「バーチャルな道州圏域ごとに独自施策を実行できる仕組み」を、柔軟に推進するべきとのご提言も参考にして、25年1月より議論を開始した新しい施策です。これまでも、道州制に関連した提言はさまざまなレベルで行われましたが、区割りや市町村との関係などに議論が集中しがちでした。今回は、道州という形式を取らなくても、関西や九州といった広域リージョンの単位で官民プロジェクトが進む環境整備を行う方が、実を取れるのではないかと考えられ、議論が進められたものです。

 政府内での議論や経済界との意見交換の結果、同年6月に今後10年にわたる構想として定められた「地方創生2・0基本構想」において、「広域リージョン連携」の枠組み創設が明示されました。その要諦は、複数都道府県の区域における地方公共団体と経済団体等の多様な主体による構成体が、複数のプロジェクトに連携して取り組む枠組みとして「広域リージョン連携」を創設し、その枠組みで実施するプロジェクトに対しては省庁横断的な支援を行って、成長やイノベーション創出のための取り組みを面的かつ分野横断的に広げる、というものです。その上で当面の目標として、先行して3カ所の広域リージョンにおいてプロジェクトを開始し、全国展開を目指すこととなりました。同年6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」でも「広域リージョン連携」の推進を目指すこととされ、同年末に閣議決定された「地方創生に関する総合戦略」においても、引き続き「広域リージョン連携」を推進することが改めて明確になっています。今後も官民で情報交換しながら、この枠組みをしっかり育てていく方針に変わりはありません。

 こうした背景の下、総務省では同年9月2日に広域リージョン連携に関する推進要綱を制定し、26年1月28日に国の支援措置に係る部分を中心に改正しました。要綱において、主体となるのは複数都道府県の区域における自治体と経済団体等の多様な主体による構成体ですが、対象事業は産業政策や観光振興など点から面に展開すべき複数のプロジェクトとし、手続きとしては、まず構成団体が共同で広域リージョン連携宣言を実施し、その上で広域リージョン連携ビジョンを策定していただくこととしています。

 各リージョンのプロジェクトに対する国からの支援としては、通常都道府県1団体当たり申請上限が10件・15億円とされている地域未来交付金(地域未来推進型)について、広域リージョン分として1リージョン当たり5件・10億円まで追加して申請可能とするとともに、7府省27の補助事業等において、優先採択を行う等があります。そのほか、令和8年度地方財政計画で創設された4000億円規模の「地域未来基金費」の活用、地域の要望を踏まえた規制の緩和、リージョンごとの総務省職員による伴走支援等も行います。

広域リージョンの先行例

 こうした流れを受け、同年2月5日時点で、想定を上回る7地域において広域リージョン連携宣言を実施済みで、それぞれ独自のプロジェクトの検討を進めています。これに対し総務省では、各リージョンにそれぞれ2名ずつの担当者を割り振って、助言や各府省との連絡調整を行っています。

 例えば「九州地域戦略会議広域リージョン」では、半導体関連産業の発展と人材育成を図る「新生シリコンアイランド九州」を目指しています。現在、半導体は熊本が注目されていますが、これを県内にとどめず九州全体にどう波及させていくかが、同広域リージョンにおけるプロジェクトの眼目となります。またベンチャー企業支援や、感染症対策等がこれに続き、いずれも個別の自治体、企業で完結することなく、面的広がりを目指すという方針で一貫しています。

 また「北陸三県広域リージョン連携」は、富山、石川、福井各県それぞれの強みである「医薬・ヘルスケア」「ものづくり」「繊維・宇宙」等を核として、グローバル・スタートアップの輩出を目指しています。北陸新幹線の延伸による三県の連携深化が背景にあると思われます。

 そのほか、「関西広域リージョン」は、関西地域各府県と政令市の計12団体に加え、関西経済連合会や各団体によって構成され、多様な取り組みを手掛けています。同連携は、関西広域連合の枠組みで、実績も積んできました。現在、公設試験研究機関のプラットフォーム事業を推進していますが、これは連携コーディネーターによる主導のもと、域内11の公設試験研究機関と、大学・金融機関等が連携して、府県域にとらわれずに企業の新規事業開発を支援するという仕組みです。また昨年盛況のうちに閉幕した大阪・関西万博のレガシーをどう生かしていくか、これも同連携において議論されています。

 これら広域リージョン連携におけるプロジェクトを円滑に実施していくため、企画の策定から事業の実施・推進までを一体的に行う、いわゆる「シンク・アンド・ドゥー・タンク」が実施主体となることも考えられます。その代表例である福岡地域戦略推進協議会では、先行的にMICEの推進や規制緩和に取り組まれています。

(資料:総務省)
(資料:総務省)

行政職員の人材不足が深刻化

 次いで、2024年11月から25年6月まで開催された「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」についてお話しします。その主要な論点は、人口減少に起因する人手不足への対応と国・都道府県・市町村間の役割分担です。00年に施行された地方分権一括法をピークに地方分権改革が進められましたが、当時は未だ人口減が大きく問題視される前の時期でした。住民に最も身近な市町村が、できる限り多くの行政サービスを完結的に提供するべきという観点で改革が進められました。その中で10年ほどの期間を掛けて、市町村数がそれまでのほぼ半分、約1700団体に集約される〝平成の大合併〟が行われました。

 しかし人口減が深刻化している現在、行政職員を含め人材不足が大きな問題です。7~8年前は、高齢者人口がピークとなる40年頃からバックキャストして議論していましたが、出生数も下振れし、もはや目の前の問題です。特に行政職員の年齢構成で多数を占める団塊ジュニア世代が退職したあと、新卒の若者の数が大きく減っている中で人材をどう確保していくか、今でさえ募集をかけてもほとんど応募が無い専門・技術職の人材不足にどう対応するのかは喫緊の課題です。

 他方で地方自治体に求められる行政需要は、人口減への対処や社会情勢等の変化に伴う新しい事務をはじめとして、多様化・複雑化の一途、つまり人は減って仕事は増えている状況です。計画策定なども、義務付けられた計画以外に「できる規定」のものも実質的な業務増につながっています。直接住民に提供するサービスのみならず、住民が求めているかどうかにかかわらず、実施が必要な仕事が増えている、これが自治体現場の実情です。