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国土交通省/砂防政策最前線

激甚化する自然災害、砂防政策の新たな展開
―「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」をはじめとする新しい砂防の取り組み―

国土交通省 水管理・国土保全局 砂防部長   今井 一之氏
国土交通省 水管理・国土保全局 砂防部長 今井 一之氏

 気候変動に伴い激甚化・広域化する自然災害。昨年(2020 年)も「令和2年7月豪雨」をはじめとする多くの自然災害に見舞われ、全国各地で甚大な被害が発生している。また災害以外にも新型コロナウイルス感染症の蔓延などもあり、それらが政策や経済に与えた影響は決して小さなものではなかった。では自然災害や新型コロナウイルス感染症は砂防政策にどういった影響を与えたのか。そして「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が実施される中、新しい展開をみせる砂防政策について国土交通省水管理・国土保全局砂防部の今井部長に話を聞いた。

――「災害列島」とも呼ばれるわが国。自然災害が激甚化・広域化する中で昨年も「令和2年7月豪雨」をはじめ多くの自然災害が発生しています。改めて昨年発生した自然災害の概要、そして砂防を取り巻く状況についてお聞かせください。

今井 まず砂防を取り巻く状況ですが、昨年(2020年)は全国で1319件の土砂災害が発生しています。土砂災害発生件数の推移を10年ごとに区切ってみると、ここ10年(2011~20年)とその前の10年(2001~10年)では、発生件数が約1・5倍になっていますし、令和2年7月豪雨では被害が37府県と広範囲に及んでいることからも災害が激甚化・広域化してきているのではないかと考えています。また7月豪雨では、球磨川流域(熊本県)での被害が甚大で、川内川では土砂・洪水氾濫も発生しています。土砂・洪水氾濫とは豪雨により上流域から流出した多量の土砂が谷出口より下流の河道で堆積することにより、河床上昇・河道埋塞が引き起こされて土砂と泥水の氾濫が発生する現象ですが、近年では毎年のように各地で発生しています。

 また昨年は新型コロナウイルス感染症が政策や経済にさまざまな影響を及ぼした年でもありました。砂防分野においては、感染防止に係る必要な費用の適切な設計変更や検査・打合せに際して可能な限りWEB会議システムなどを活用した遠隔臨場に取り組むなど感染症対策を徹底していましたので、工事現場などで大きな影響があったとは聞いていません。一方、コンサルタント業務においては、意見聴取や現地調査、用地交渉などで対人対応が必要になる場面があるため影響があったところもあるようです。

 近年、激甚化・広域化する土砂災害については、気候変動の影響が顕在化していると考え、「気候変動をふまえた砂防技術検討会」を発足し、現在、課題を整理して対応策を検討しているところです。昨年6月には、技術検討会の中間とりまとめを公表し、そこで整理された課題
や方向性などから、検討会の有識者とともに気候変動を踏まえた砂防事業のあり方の検討、研究・技術開発を引き続き実施していくことにしています。