
2026/07/15
自然災害が激甚化・頻発化する中、砂防分野においては土砂災害から「いのち」と「くらし」、そして「産業・なりわい」を保全する対策が進められている。では、具体的な取り組みにはどういったものがあるのか。また能登半島地震以降、防災DX の活用などで災害対策・対応のステージが上がる中、災害リスクを“自分事化”していくための砂防の取り組みについて国土交通省砂防部の國友部長に話を聞いた。
水管理・国土保全局 砂防部長 國友 優氏
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激甚化・頻発化する自然災害。「いのち」「くらし」「産業・なりわい」を保全するための土砂災害対策とは
――自然災害が激甚化・頻発化する中、砂防分野においては土砂災害から、「いのち」・地域の「くらし」・「産業・なりわい」を保全するための対策が進められています。では、その具体的な取り組みについてお聞かせください。
國友 現在、水災害対策においては、流域に関わるあらゆる関係者が協働して対策を行う〝流域治水〟が進められています。砂防行政においても、流域治水の主要な取り組みの一角として関係者と協働して土砂災害対策に取り組んでいます。その取り組み方針として、砂防分野においては「いのち」・地域の「くらし」・「産業・なりわい」の保全を掲げています。具体的には、まず①「社会生活や経済活動を支える地域の基本的なインフラの集中保全」として、気候変動とともに増加傾向にある「土砂・洪水氾濫、流木対策」をはじめ、道路保全対策や上下水道施設の耐震化などと連携した「インフラ・ライフライン保全対策」、「防災まちづくりと連携した土砂災害対策」を進めることとしています。またこの他に土砂災害発生箇所では再度災害防止対策などもこれにあたります。
特に、人口減少社会に対応し、地域の中でこれからも安全・安心して暮らしていくためには、まちづくりと一体化した防災事業が必要になりますので積極的に対策を進めているところです。
――「まちづくりと一体化した防災事業」とはどういった事業になるのでしょうか。
國友 いわゆる都市部では立地適正化計画が進み、居住誘導区域をどこに設定するかという取り組みが進められています。当然、立地適正化においては、できるだけ災害(ハザード)を回避するように計画されていますが、すべてのハザードが回避可能というわけではありません。例えば水害を避けるために山際に設定すると、今度は土砂災害の危険性があるといった具合です。また、既に主要な道路や鉄道といった産業基盤が構築されている場合もありますし、病院や学校など地域の施設は容易に移すことはできませんので、そうした既存のインフラや施設を活用しながらまち(地域)づくりをしていくとなると砂防施設の整備によって安全性を確保することが不可欠な地域もあります。このようなことを総合的に考えて、まちづくり上必要な対策を計画に位置付け実施するのが、「防災まちづくりと連携した土砂災害対策」に該当します。実際、そうしたまちづくりを進めている自治体も増えていますので、その点については優先的に予算を配分するなど、まちづくりをサポートする取り組みを推進していきたいと考えています。
また中山間地域においては、立地適正化計画に代わるものとして、市町村管理構想において、これからも安全性を確保して生活し続けるといった場として地域生活拠点を計画に位置付けてもらうことで、施設整備に対し積極的に補助することとしています。
――「社会生活や経済活動を支える地域の基本的なインフラの集中保全」に加え、土砂災害対策としては②「地域の防災力を高める警戒避難体制の強化」、③「砂防関係施設の老朽化対策を計画的に推進」、④「デジタル技術による土砂災害対策の高度化、省人化」にも取り組まれていますが、この点についてはいかがでしょうか。
國友 まず②の警戒避難体制を強化するためには、地域のどこに土砂災害リスクがあるのかを明らかにすることが重要になります。砂防分野においては、土砂災害防止法に基づいて全国で土砂災害の危険性がある地域を調査。土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域として指定し、ハザードマップに示してきました。2019年度に調査が、21年度に指定がようやく全国を一巡し、およそ70万区域のハザードを示すことができました。現在はさらなる精度向上を図るべく、詳細な地形図を用いて土砂災害の危険がある箇所を洗い直しているところです。
また危険性の高い箇所を示した後は「いつ逃げるか」が重要になりますので、今年(26年)5月29日から警戒レベルとの関係を分かりやすくした新たな防災気象情報の運用が開始されました。これは、土砂災害を含めさまざまな自然災害の危険性が高まった場合に、自治体の首長が避難指示の判断に迷わないようにするとともに、地域住民にも素早い対応を可能とするための取り組みになります。
また住民の迅速な避難を実現させるには、地域住民に災害(土砂災害)に対する理解を深めていただく必要があります。そのための取り組みとして毎年6月を「土砂災害防止月間」とし、全国各地で防災訓練を実施したり、砂防を知ってもらうためのイベントを開催したりしています。またあわせて子どもたちにも砂防を学び、理解してもらうために学校の先生や教育委員会と連携して、勉強会を開催したり、副読本などをつくって活用してもらったりするなどソフト面からの取り組みも実施しています。
③老朽化対策と④デジタル技術の活用についてですが、他分野と同様に、砂防分野も設置から30年以上経過した施設が増加しています。それを適切に維持・補修していくことがますます重要になります。しかしながら、砂防施設の多くは山間部に設置されており、その施設点検にはどうしても労力が必要になります。このため、まずは直轄事業からUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)による点検を進めています。現在、UAVのレベル3飛行(無人地帯での目視外の自律飛行)による点検が、全国34の直轄砂防事業を実施している水系・山系で始まっていますが、UAVを活用することで作業効率が高まったという報告も上がってきていますので、こうした取り組みを展開していくことで省人化を推進し、より安全で効率的な点検が実現できるようにしていきたいと考えています。
――本年5月下旬から新しい防災気象情報の運用が開始されたとのことですが、どういった部分が変更されたのでしょうか。
國友 これまでの防災気象情報は、警戒レベルと情報との対応が、対象災害ごとに異なる運用になっているため分かりづらいという課題がありました。そのため新しい防災気象情報では、住民の避難行動に対応した5段階の警戒レベルに整合させ、災害発生の危険度の高まりに応じて各情報を発表するものになっています。
具体的にはレベル1は「早期注意情報」となり、レベル2で「〇〇注意報」、これは河川氾濫であれば氾濫注意報、土砂災害であれば土砂災害注意報となります。そしてレベル3で「〇〇警報」、レベル4で「〇〇危険警報」となり、レベル5では「〇〇特別警報」となります。住民の方はレベル3や4の情報が発表された場合には対象災害にかかわらず速やかに避難行動を開始する必要がある、そう認識していただければと考えています。