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港湾ロジスティクス強化に向けた施策の方向性/国土交通省 古土井 健氏

ふるどい けん/ 昭和47年11月生まれ、兵庫県出身。東京大学大学院修了。 平成9年運輸省入省。22年外務省在ベトナム日本国大使館一等書記官、25年国土交通省東北地方整備局釜石港湾事務所長、27年港湾局港湾経済課港湾経済企画官、28年港湾局技術企画課技術基準審査官、29年1月鹿児島県観光交流局参事(観光クルーズ船担当)、29年4月鹿児島県PR・観光戦略部次長、令和2年国土交通省港湾局技術企画課港湾保全政策室長、3年港湾局計画課企画室長、5年近畿地方整備局港湾空港部長を経て、令和7年7月より現職。
ふるどい けん/ 昭和47年11月生まれ、兵庫県出身。東京大学大学院修了。 平成9年運輸省入省。22年外務省在ベトナム日本国大使館一等書記官、25年国土交通省東北地方整備局釜石港湾事務所長、27年港湾局港湾経済課港湾経済企画官、28年港湾局技術企画課技術基準審査官、29年1月鹿児島県観光交流局参事(観光クルーズ船担当)、29年4月鹿児島県PR・観光戦略部次長、令和2年国土交通省港湾局技術企画課港湾保全政策室長、3年港湾局計画課企画室長、5年近畿地方整備局港湾空港部長を経て、令和7年7月より現職。

 四面を海に囲まれた世界有数の海洋国家であるわが国。海上物流による貿易量は重量ベースで99%以上を占めるなど経済に与える影響も大きく、それらを支える港湾の重要性は非常に高い。そのため、港湾政策は政府の進める「17 の戦略分野」の一つに位置付けられ、現在「港湾ロジスティクス」強化に向けた取り組みが進められている。近年、海を取り巻く状況が大きく変わる中、港湾の現状から課題・リスク、そして港湾ロジスティクスの強化に向けて、どのような議論が重ねられ、実際にどういった取り組みが進められようとしているのか。今回、国土交通省港湾局計画課の古土井課長に話を聞いた。

港湾局計画課長 古土井 健氏


わが国港湾の役割、ならびに現状と課題

――2025年11月、日本成長戦略本部において17の戦略分野の一つに「港湾ロジスティクス」が位置付けられ、港湾ロジスティクスの強化、また官民連携による施策の実現に向けた取り組みが進められています。では、まずわが国港湾の役割、そして港湾を取り巻く現状と課題についてお聞かせください。

古土井 わが国は四面を海に囲まれた海洋国家であり、その貿易量(重量ベース)の99%以上が港湾を介した海上物流によって行われています。つまり港湾は、国内と海外、海上輸送と陸上輸送の結節点であり、積替拠点として、原材料の調達から輸送、生産、保管、流通に至るまでのロジスティクスやサプライチェーンの一連の流れを支える基幹インフラと言えます。また港湾には、人口や産業が集中しており、地域の基幹産業を強化し、地域の雇用や経済効果を生み出すといった重要な役割も担っています。

 港湾を取り巻く現状と課題についてですが、貿易額ベースで約40%を占める海上コンテナ物流について、直面している課題について説明します。

 現在、世界的に貨物量は増加、過去10年間で1・3倍ほどになっています。しかし日本国内から発生するコンテナ貨物量においては、減少してはいないものの微増という状態です。一方、船会社は輸送効率を上げるため、北米・アジア間や欧州・アジア間などの長距離航路、いわゆる基幹航路において船の大型化を急速に進めています(1990年代:5000TEU※ ⇒ 2020年代:2万4000TEU)。
                                       ※1TEU=長さ20フィート(約6.1m)の海上コンテナ1個分

 このため、海運事業者としては一港で取り扱う貨物を多くする必要があり、結果として貨物量の多い港湾に寄港地を絞り込んだ航路設定を行うようになりました。それ故、大型船に積み込む貨物を十分に用意できない港湾はダイレクト航路ではなく、別の大きな港湾に輸送する、いわゆるフィーダー輸送が必要になるなど物流の形態そのものが大きく変わってきています。

 また船会社も個社ごとで大きな船を数多く維持することが難しくなってきたので、企業間連携、いわゆるアライアンスによるチームとして一つの航路を維持しようという動きがみられるようになりました。こうした一連の動きも目まぐるしく変化していますので、アライアンスの状況や航路設定が変わり続けているというのが近年の状況になります。

 そしてわが国の港湾を見れば、主要港である京浜港と阪神港の基幹航路数は、何とか踏みとどまっているというのが現状です。

(資料:国土交通省)
(資料:国土交通省)

 では、基幹航路数の減少がどういった問題になるのか。例えば、日本から北米に輸出する場合、京浜港から直航航路でダイレクトに北米に向かう貨物もありますが、釜山港(韓国)にいったん運ばれ、そこで積み替えられ北米に向かう場合もあります。新型コロナ流行時に顕在化した問題ですが、当時、主要港での荷役や背後輸送などが混乱したことで、世界中でコンテナ船の運航ダイヤが大きく乱れるといった事態が発生しました。日本から直航航路で北米に向かう貨物であれば、スケジュールがある程度組めましたが、トランシップ貨物として釜山で積み替えをする場合、いつ北米行きのコンテナ船に積むことができるか予定が立てられず、場合によっては日本から直航で行く場合に比べて50日ほど留め置かれることもありました。

 こうした状況は、日本の立地企業にとって非常に大きな問題になりますし、本件は新型コロナ発生時といった緊急時だけでなく、通常時であっても日本からのダイレクト便と比べてリードタイムが長い、トランシップは在庫を抱えるなどのリスクがあることを関係者に強く再認識させることになりました。

 以上のことからも、日本国内に立地している企業に対する物流環境、立地環境として、基幹航路の有無は非常に重要になりますし、もし基幹航路がなければ、日本の企業立地環境は非常に脆弱なものとなり、ひいては国力の低下につながりかねないということになります。そのため日本の企業立地環境を整備するという点からも基幹航路の維持・拡大は必要不可欠なものだと考えています。

港湾ロジスティクスにおける課題とリスク

――17の戦略に位置付けられた「港湾ロジスティクス」。では港湾ロジスティクスが抱える課題、そしてリスクとしてはどういったものがあるのでしょうか。

古土井 今回の成長戦略は、全分野にわたり共通的なテーマとして「危機管理投資」、「成長投資」に着目して議論を進めることになっています。このため、課題やリスクをまとめ、プロセスを整理しておく必要がありますので、まずは港湾ロジスティクスが抱えるリスクについて触れておきます。

 一つ目ですが、先述した通り、基幹航路は絶対に死守しなければいけないと、これまで施策を進めてきましたが、昨年末(2025年末)に非常にショッキングな出来事がありました。それは邦船社が出資するコンテナ船社が航路再編によって、欧州航路の日本寄港を取りやめるといった発表があったことです。本航路は当時日本から唯一、欧州にダイレクトで行く航路でしたので、欧州航路の消滅の危機という状況に陥りました。その後、別のコンテナ船社(仏:CMA CGM)が新たに欧州航路を新規就航することになったため、欧州航路の消滅という危機はひとまず回避できましたが、1本の航路のみでは盤石であるとは言いがたく、つながった細い糸を太く、強固にしていくことで基幹航路をしっかりと維持・拡大していく必要があります。

 他国経由の物流が悪いというわけではなく、それしか選択肢がないという状況が問題であるということですので、他国に過度に依存しない物流、物流網を形成しなければならないということです。これが一つ目のリスクである「物流を他国に過度に依存することによる非常時等の大幅な物流遅延・途絶等のリスク」(厳しさを増す経済安全保障環境)です。

 二つ目が、何らかのトラブルによる物流そのものの停止です。具体的な事案を挙げると、23年7月、名古屋港のコンテナ搬出入を一括管理するシステム(NUTS)がランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、約3日間稼働停止しました。それ以外にも地震などの自然災害、また大規模停電などが発生することもありますので、こうした事態に備え、何らかのトラブルが発生した場合でも物流が途絶することのないような対応・対策が必要になってきます。そのため「ターミナルオペレーションシステム等へのサイバー攻撃等による物流機能停止のリスク」(厳しさを増す国際情勢とサイバー脅威の増大)が二つ目のリスクとなります。

 そして最後は、少子高齢化が進み人口が減少していますが、港湾の分野も当然例外ではなく、港湾での働き手がいなくなると物流が当然止まってしまいます。これは海上物流によって国の生計が立てられているわが国においては致命的な危機です。既に地方では、こうした事態が起こり始め、人手不足により土日を閉鎖することになった港湾もあります。こうした「港湾ロジスティクスの担い手である港湾労働者等の不足に伴う物流サービス低下・機能停止のリスク」(わが国の少子高齢化・人口減少に伴う労働力人口の減少)が三つ目のリスクになります。以上のリスクについて金子恭之国土交通大臣を座長とするワーキンググループを設置し、議論をさせていただきました。

(資料:国土交通省)
(資料:国土交通省)