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今年中の設置を進める「防災庁」、その概要と役割・組織体系について/寺前 大氏

――新設される各部門についてお聞かせください。

寺前 まず①の総合政策部門ですが、防災庁は庁として独立した形になりますので、予算や会計、人事、広報など各省にあるような官房機能に加え、防災技術の研究開発・実装なども行う庁全体の政策の調整、取りまとめる部門になります。②の災害事態対処部門は、先述した通り、大規模な災害が発生した際の対処、または訓練や人材育成を行います。③防災計画部門では、大規模災害に対する災害リスク評価や計画の企画・立案などを実施。国会でも話題になりましたが、この災害リスク評価は各地域での災害リスクを評価するといった防災庁の目玉施策でもあります。そして④の地域防災部門は、デジタル技術の活用や産官学民の連携による対応や支援体制の構築、そして普及啓発や防災教育などを担う部門になります。

 今回、組織体制が見直されることで有事の対応と事前防災の役割を分けることができるようになりました。防災庁設置に際しては、防災庁に平時の役割はないのではないかという声もありましたが、自然災害が激甚化・頻発化する中、災害の発生自体を止めることはできません。であれば、その災害にどう対応するか、そのための事前準備、事前防災が非常に重要になってきます。いつ発生するかわからない災害への備え、その重要性をこれからも訴求していきたいと思っています。

資料3 防災立国の推進に向けた基本方針 (資料:内閣官房防災庁設置準備室)
資料3 防災立国の推進に向けた基本方針 (資料:内閣官房防災庁設置準備室)

地方機関として関心を集める「防災局」

――地方機関として「防災局」を置くことが示されていますが、防災局の役割などはどういったものになるのでしょうか。

寺前 「防災立国の推進に向けた基本方針」に、防災庁には地方機関を設けることが明記されています。当面は日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震および南海トラフ地震に対応するための地方機関とされていますが、これが防災局になります。国会答弁でも当面は2カ所を念頭に検討していくこととされ、その場合は、各地震への対応として1カ所ずつ設置する形になるのではないかと思います。また設置時期については、公布から2年以内とされていますので防災庁とは異なり、今年中ではなく、28年7月までの設置を想定しています。

 やはり本庁と同時期の設置となると細部に気が回らないといった事態にもなりかねませんので、まずは本庁の設置を先行させ、防災局についてはある程度落ち着いてから設置する形になるかと思います。

 また防災局の具体的な業務ですが、大きく二つあります。まず一つ目が、災害リスク評価や各地域が普段行っている防災対策については、防災局が主流になって地域の防災力向上のために伴走・支援するというものです。そして二つ目が、大規模災害発生時に政府の業務継続性や被災者支援体制の構築に向けた現地対策本部の最前線機能を持たせるというものになります。こうした業務・役割については現状確定しているわけではなく、その機能や規模については今後も議論・検討をしていく必要があると考えています。

 また、この点については附帯決議も多く、なかでも防災局の設置場所や管轄区域については多数の要望・意見が寄せられていることから、災害リスクなどを踏まえて慎重に検討するとともに、その選考プロセスや基準の明確化、透明性について留意するとしています。現在、約40を超える地域、自治体から要望を受けていますが、当然、その全ての地域に配置できるものではないので、要望している地域の方にも納得いただけるようなプロセスが必要だと思います。そういった部分もしっかりと示し、検討し、必要なプロセスを踏んだ上で遅くとも28年7月までに設置することとしています。

――防災庁設置法と同じく今国会で成立した「副首都構想」ですが、この副首都構想と防災局との関連についてはいかがでしょうか。

寺前 副首都構想と防災局との関連については、牧野防災庁設置準備担当大臣が会見で触れています。記者から防災局の設置に副首都が紐付くものかという質問に対して、牧野大臣は副首都関連法については自身の所管でないことから分かる範囲で回答するとした上で、副首都関連法は首都の中枢機能の代替のため立法されたもので、この機能には当然、防災も含まれるが、首都中枢機能と政府の災害対応の継続性については同一のものではないと考えている。特に防災局における機能は、平時から自治体の防災体制の支援強化を図る点にあるため、一部の機能は重複しているものの全くの同一というわけではない。いずれにしても防災局については効果的で効率的な役割を果たせるように今後も検討を進めていきたい――と回答しています。

 この点については、国会でもたびたび質問されたものではありますが、防災局の設置場所の検討に当たっては、副首都構想の動きも見ながら進めていく必要があると考えています。

防災庁設置と同時に進む取り組み、そして今後の展望

――防災庁設置に向けた準備が着々と進んでいます。そうした準備と同時に進行している施策、取り組みなどがありましたらお聞かせください。

寺前 人材の確保・育成については既に開始しています。防災庁自体はまだ発足していませんが、経験者採用については既に実施し、20名ほどが活躍しています。また今年は官庁訪問も実施し、新卒の学生15名ほど採用する予定です。そして防災庁の目玉施策の一つに、専門人材の育成がありますので、新卒や民間の即戦力となれるような人材の確保や育成についても引き続きしっかりやっていきたいと思っています。

 それ以外にも、災害リスク評価について、その精度向上や高度化に係る手法、シミュレーションに基づく災害リスク評価手法について検討する有識者会議「定量的弱部分析手法等検討会」を開催し、7月にはガイドライン案を公表しています。また予算の面では、シミュレーションに基づく災害リスク評価を通じた防災計画の見直し、資機材や運用体制など地方自治体への防災対策支援の抜本的強化として35億円。防災庁の設置・運営に必要な経費として45億円が今年度予算に新規に組み込まれています。

――日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や南海トラフ地震など、大規模災害の発生が予想されています。最後に設置間近の防災庁の取り組みに向けた意気込み、そして今後の防災政策実現に向けた思いなどについてお聞かせください。

寺前 防災庁の設置については、法案審議でもいろいろな質問を受けました。また全会一致ではありませんでしたが、多くの議員に賛成していただき成立したこともあり、その期待の大きさを感じています。また期待が大きい分、期待を裏切ってしまった場合の反動が大きなものであることは言うまでもありませんので、期待に応えられるような防災庁が設置できればと考えています。そして議員だけではなく、一般の方にも「防災庁があってよかった」と思っていただけるような組織にしていきたいと思っています。

 また防災庁の役割の一つに事前防災がある点については先述した通りです。新設される防災庁ですが、具体的に何をしているのか、平時には必要ないのではないかと思っている方がいることは承知しています。そうした方に事前防災の重要性や防災庁の役割、業務について知っていただき、万が一、有事の際も防災庁があるから安心だと思っていただけるように防災庁の存在をアピールしていきたいと思っています。

――ありがとうございました。
                                           (月刊『時評』2026年9月号掲載)