
2026/10/19
2026年7月、「防災庁設置法」が成立し、今年中の設置が決まった。近年、自然災害が激甚化・頻発化しているが、今後発生が予測される大規模災害(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や南海トラフ地震など)の被害想定は過去経験したどの災害よりも甚大なものになるという。こうした背景もあって防災庁設置に向けた取り組みが進められてきたが、防災庁の役割・所掌業務はどういったものになるのか。また、その組織体系とはどういったものなのか。防災庁の設置に向けてこれまでさまざまな取り組みを進めてきた前 内閣官房防災庁設置準備室参事官(現 国土交通省建設振興課長)の寺前氏に話を聞いた。
国土交通省不動産・建設経済局建設振興課長
(前 内閣官房防災庁設置準備室参事官) 寺前 大氏
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防災庁設置の背景
―― 防災庁については先日(2026年7月)、設置法が成立し、今年中の設置に向けた取り組みが進められています。では、改めて防災庁設置の背景、そして設置に向けたこれまでの流れについてお聞かせください。
寺前 防災庁設置の背景ですが、東日本大震災( 発生:2011年3月、死者数:約2万人)をはじめ、近年、甚大な被害をもたらす災害がいくつも発生しています。しかし、今後高い確率で発生が予想される「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」(想定数値(以下同)死者数:最大約19・9万人、避難者数:約60万人)、「首都直下地震」(死者数:最大約1・8万人、避難者数:最大約410万人)、「南海トラフ地震」(死者数:最大約29・8万人、避難者数:最大約650万人)などは想定死者数、避難者数だけをみても、これまで経験したどの災害よりも桁が一つ、あるいは、それ以上になるとされています。
これまで経験したことのないような甚大な被害をもたらす自然災害に対して、被害を最大限減少させるため、そして、より的確な災害対策・対応を実施できる組織の必要性が高まったこともあり、防災庁の設置が進められてきました。
設置に向けた流れとしては、石破政権発足直後の24年11月に防災庁設置準備室が発足。翌25年1月から防災庁設置準備アドバイザー会議が開催され(同年6月まで)、防災庁は内閣直下に設置するなど、さまざまな取りまとめがなされました。以降、アドバイザー会議の取りまとめなどを基に設置に向けた作業を進め、25年12月には「防災立国の推進に向けた基本方針」が閣議決定されています。
この基本方針に基づき、法律にすべき事項については令和8年特別国会に関連法案を提出し、4月から審議を重ね、7月の公布というのがこれまでの流れになります。また法律の施行自体が今年中とされていますので、防災庁は26年中に設置される予定になっています。
防災庁の機能と役割、そして組織体系について
――防災庁の機能や役割、また組織体系はどういったものになるのでしょうか。
寺前 今回、「防災庁設置法」と「防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の二つが成立しましたが、防災庁設置法に防災庁の所掌事務の記載があります。この所掌事務には、①内閣補助事務と②分担管理事務の二つがありますので、それぞれについて触れておきます。まず一つ目の内閣補助義務とは、内閣の重要政策に関して各省の横串を通すような事務を指します。そのため防災庁では「防災の施策に関する基本的な方針及び計画、大規模な災害への対処に関する企画立案・総合調整、関係行政機関が講ずる施策の実施の推進等」の事務を行うとしています。
そして二つ目の分担管理事務は、国土交通省や農林水産省などの各省庁が所掌する行政事務を分担して管理・処理する業務になりますので、防災庁においては「・中央防災会議、災害対策本部等の防災に関する組織の設置及び運営、・国-地方公共団体-民間事業者等が防災計画等に基づき実施する事前防災の推進、・被災者や被災自治体の支援、・千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震等への対応等」がその内容になります。
基本的に防災庁では、各省から事務を持ってくることはせず、内閣府防災がこれまで行ってきた所掌事務を引き継ぐ形になりますので、分担管理事務については基本的にこれまでの内閣府防災と変わりません。一方で、内閣補助事務の「関係行政機関が講ずる施策の実施の推進」の部分が従前から拡充されることとなっています。現在、防災施策については各省庁がそれぞれ行っていますが、内閣府防災では、そうした各省庁の施策実施を調整することはできても個別施策の実施を推進することはできませんでした。しかし今回、施策実施の推進が可能になりましたので、例えば国土交通省にはこうした防災施策を実施してほしいであるとか、文部科学省にはこうした防災施策を進めてほしい――といった要望を出せるようになったことは若干権限が強化された点と言えます。
では実際、どのように実施するかですが、今回「内閣補助事務を遂行するため、防災大臣に、関係行政機関の長に対する勧告権を付与し、当該勧告権に基づく勧告を受けた際の関係行政機関の長における尊重義務を規定する」ことが明記されましたので、この勧告権を使って、具体的な提案・要望ができるようになっています。
また組織体制については、現在の内閣府防災は定員220名、局長級の政策統括官が一人という体制で業務を行っています。そのため有事の際には全員が対応に追われ、災害対応以外の業務が事実上止まってしまう状態でした。しかし防災庁として独立することで定員は352名に増員、統括官は4名体制となり、それぞれ①総合政策部門、②災害事態対処部門、③防災計画部門、④地域防災部門を総括することになります。そのため有事の際は②の災害事態対処部門が中心となって対応し、平時からの事前防災を遅滞なく進めることができるようになります。