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地方・地域の持続的な発展を、人の活力で支援/株式会社タイミー

◆内閣府地方創生推進政策最前線

おがわ りょう/2017年、20歳でアパレル関連事業の株式会社レコレを創業、翌年事業転換を決意。18年8月に「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスポットワークサービス「タイミー」をローンチ。社会のニーズをとらえ早期にPMFを実現し、大きく成長を遂げる。2024年7月には創業7年・27歳3カ月にして東証グロース市場へ最年少ユニコーン上場(※独立の企業として)。
おがわ りょう/2017年、20歳でアパレル関連事業の株式会社レコレを創業、翌年事業転換を決意。18年8月に「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスポットワークサービス「タイミー」をローンチ。社会のニーズをとらえ早期にPMFを実現し、大きく成長を遂げる。2024年7月には創業7年・27歳3カ月にして東証グロース市場へ最年少ユニコーン上場(※独立の企業として)。

 スポットワークという新たな概念を労働市場に普及させ、急速な成長を実現した㈱タイミー。短期アルバイトの枠を超え、全国のさまざまな分野で今日も同社を通じてマッチングしたワーカーが、生産活動を支えている。特に人口減が深刻な地方、そして一次産業等ではその存在が地域の存立を左右すると言っても過言ではない。地方創生の担い手として可能性がふくらむ同社の現在と今後を、小川嶺代表に語ってもらった。

代表取締役 小川 嶺氏





急速な成長は社会課題との表裏

――既に御社名はCM等で広く知られているところですが、創業のいきさつと事業概要を簡単にご紹介いただけますか。

小川 私が大学2年生だった2017年に前身となる企業を創業、翌年8月からタイミーを開始しました。当時は私自身、日当のアルバイトを重ねる日々の中、アプリケーションによって当面の人手を求める事業者側と、短期短時間等のいわゆる〝スキマ時間〟を活用して働きたい人材のマッチングを提供できれば、労働市場にそれまで無かった新しいサービスを確立できるのではないかと着想したのです。

 基本的なフレームは、事業者サイドとワーカーの方、双方が事前登録の上アプリを介して条件、業務内容、場所と時間、賃金などを確認した上で働き手が仕事に申し込み、勤務終了後に即日で給与を受け取るという方式です。

 当初は飲食店を中心とした展開でしたが、コロナ禍に飲食産業が停滞したことで物流にシフト、以後は小売り、ホテル、農業などさまざまな方面に提供分野が広がり、現在は15万9000社の企業・法人、約1000万人のワーカー、すなわち求職者の方々に登録をいただいています。もともとは学生さんの活用を念頭に置いていたのですが、そこから主婦・夫層、会社員の副業、そしてシニアと、年を追うごとに多様な年代や社会的立場の利用へと広がりました。

――スポットワークという、新たな概念が普及し、定着したわけですね。以後の展開について小川代表の率直なご所感はいかがでしょうか。

小川 自分としても、これほどの潜在需要の発露は確かに想定を超える拡大ではありますが、やはりマクロの視点で見ると日本が抱える最大の社会課題、すなわち少子化人口減を背景とする担い手不足との表裏であると実感します。事業展開の過程で働き方改革も同時に始まり、残業の抑制、在宅ワークの増加など、労働環境の激変がスキマ時間の発生とスポットワークの需要に結び付いているのだと思われます。

――生産人口が減少していく中でも、人による実作業、人が接する業務は依然、労働市場で大きな比重を占めています。

小川 ご指摘の通り労働集約型産業はその傾向が顕著で、かつ担い手不足が最も深刻な分野でもあります。特に農業などは生産者の高齢化が拍車をかけていますので、若年層を中心とした労働力確保はより一層ニーズが高まると想定されます。

(資料:タイミー)
(資料:タイミー)

一極集中解消と、地方の課題

――今般、地方においては特に人口減が顕著で、それ故に歴代政権ともさまざまな形で地方活性化に取り組み、石破政権でも「地方創生2・0」を打ち出しています。産業界の視点から、こうした政府の政策推進についてご所感などいかがでしょう。

小川 東京一極集中の解消に向けた各種施策の推進には、大いに賛同しています。人口流入が続く東京では、平時は地価の高騰に歯止めがかからず、また大規模災害時の被害拡大リスクは年々増加するなど、経済、社会活動の維持に向けた安全・安心を確保できるとは必ずしも言い難く、BCP(事業継続)の観点からも地方分散を積極的に進めるべきです。この危機意識は、おそらく経済界にほぼ共通しているのではないでしょうか。結論として、東京だけをビジネスの主要舞台に据える時代は終焉を迎えていると思います。

――東京での、災害発生後の脆弱性は各方面から指摘されているところです。

小川 東京に本社を構えている企業が大多数だとは思いますが、移転は叶わずとも東京と地方都市との二拠点体制などが進めば、BCPに資するのはもちろん、東京への流入抑制などに一定の効果が期待できるのでは。それを国が政策としてどこまで経済界を後押しできるかが重要なポイントです。

 他方、地方・地域にはそれぞれ魅力である産業、文化があり、それらを次世代や後世に継承していくためにも、やはり一定の人口数確保が必要です。それには産業の活性、雇用の創出などが欠かせません。

――御社は、地方の現状と社会課題についてどのように捉えておられますか。

小川 人口減や第一次産業の衰退など共通の課題を抱える一方、一言で地方と申しても、個別の状況や問題の種類等は千差万別です。また特色や強みにフォーカスしても、観光需要の強い温泉街や農業が地元経済を支えている地域など多種多様ですので、そうした独自性を背景に、強みの伸長と課題の解決に向けて人的資源をどのように関与させていくべきか、今は各自治体とも模索の渦中にあると思います。それ故に、われわれタイミーが何らかの形でお力添えできる部分も、また多いと言えるでしょう。

 例えば仙台市で、就職を控えたある学生さんが東京への上京を志望しているとのこと、理由を問うと地元に仕事が無いとの由、しかし足元では地元企業において人手が来なくて本当に困っているのですから、まさに矛盾そのものだと痛感します。その主因の一つは情報の非対称性が起きている点にあるわけですから、そこでタイミーのサービスを使い、学生のうちから地場の企業で働く機会をつくれば、地元にも企業がたくさんあると再認識され、ならばそこで就職しようという選択の契機につながると思われます。