
2026/02/18
全国で地方都市の人口流出が常態化する中、北九州市は60年ぶりに社会動態の転入超過を達成した。2023年2月の就任後、市のポテンシャルをあまねく活用すべく、独創的な施策を相次ぎ打ち出してきた武内和久市長による市政の結実だと言えよう。「大きく潮目が変わった」と手応えを感じる市長に、成長の背景を解説してもらった。
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60年ぶり、人口転入超過を記録
――ご就任から3年近くが経ちまして、現在の施政に対するお考え、また広い意味で北九州市そのものへの「思い」などお聞かせください。
武内 北九州市は、さまざまな分野で非常に高いポテンシャルを多々有しているのに、これまで全面的に生かされているとは言い難い状況が続いてきました。しかしこのポテンシャルを可視化し、具体的な成果として昇華できれば、福岡市と並ぶ九州のツインエンジンとして日本経済をけん引する存在になる、私はそう確信し、就任直後から現在まで全力を傾けています。
その結果、短期間で明確なアーリーサクセス事例が少なからず表出してきました。北九州市の〝潮目〟が大きくかつ明確に変わってきたと実感しているところです。
――そのアーリーサクセス事例の筆頭が、60年ぶりに実現した人口転入超過ではないかと思います。
武内 はい、北九州市は1965(昭和40)年以降59年間、全国政令指定市の中で最も長く、人口の転出超過が続いてきました。しかし2024(令和6)年における社会動態(転入・転出に伴う人口の動き)がプラス492人となり、実に60年ぶりの人口転入超過を記録したのです。私たちは〝ふっかつの北九州市〟として大きく事実を発信しました。それまでは他の自治体の例にもれず、当市でも若い女性の流出は依然として多かったものの、後述するように産業・暮らし両面でさまざまな施策を推進した結果、今回、転入超過の要因の一つとなったのは、これら若い女性層や子育て世代の回帰が見られる点です。
もちろん一時的な現象に終わらせるつもりはありません。当市は現在約90万人の人口を擁していますが、このまちの力は、90万人に収まる程度ではないと自負しています。
併せて、23~24年にかけて短期間に、八つの事象で過去最高を相次いで達成しました。
――どのような内容の、過去最高群でしょう。
武内 一つ目、24年度の企業誘致の投資額が2年連続で過去最高となりました。うちIT企業の進出数で24年度は過去最高の年間48社を数えます。さらに、スタートアップ企業の出現率が全国1位です。二つ目、24年の北九州港フェリー貨物量が、過去最高の5292万トンを記録しました。三つ目、北九州空港の貨物量も過去最高です。四つ目、U・Iターン就職者も過去最高でした。五つ目、24 年度の小倉城天守閣入場者数が30万人超となり、過去最高を更新しました。六つ目、北九州モノレールの輸送人員も過去最高。七つ目、24年度のふるさと納税額が24・7億円で過去最高。そして最後の八つ目は市税収入です。24年度は定額減税の影響額を除いた実質的な市税収入は、1851億円で、これが過去最高となりました。
このように、1963年の市政制定以後これだけの目に見える成果が短期間で一気に表出したことは、雌伏の年月を経て市が有するポテンシャルが、具体的に開花してきた証しだと言えるでしょう。
シンプルに〝稼げるまち〟を目指す
――北九州市の歴史や地勢などが、そのポテンシャルの基部を成しているように思われます。
武内 そうですね、周知の通り当市はもともと製造のまちとして発展してきました。そのため現在もテクノロジーが豊富で、年間約3000人の理工系人材を輩出しています。他方で現在、全国の政令指定都市の中で最大の再生可能エネルギー発電量を記録しており、また豊富な水資源に恵まれるなど、先端技術産業における好条件が整っています。かつ空港も新幹線も整備されるなど、陸・海・空の交通インフラがすべて揃っています。
さらにローカル企業よりもむしろグローバル企業が産業界の主体で、それを支える広範な企業群と技術者たちが豊富、加えて大気汚染等の公害克服の歴史を背景としたサステナブルなまちづくりを進めている点など、多種多様な要素を、このまちは備えています。こうした地勢や、産業界の特性などは隣接する福岡市とは大きく異なるため、福岡と北九州が時に相互補完しながら、ツインエンジンとして九州経済をけん引できれば何よりです。
――例えば北九州市は脱炭素の分野でも知られていますね。
武内 加えて今春には国内最大級の洋上風力発電施設が稼働を開始する予定です。また前出のスタートアップ出現率において、分野別の1位のDXに加え、2位として環境関連が続き、3位にロボットが位置しています。
――実に、北九州市らしい順位ですね。
武内 これらのポテンシャルを発露・発展させるべく、私が就任後に着手したのは、まずアテンションとなるポイントをしっかり収集し、市への投資価値を高めることでした。そして進出した企業がDXやGXを通じて付加価値を高め、産業の裾野を広げていく、さらにエンターテインメントや教育の要素を加えていく、これを基本構造としています。
――市長は折あるごとに、北九州市を〝稼げるまち〟にするという、シンプルなメッセージを発しています。
武内 このフレーズを最初に掲げたとき、市職員の方がむしろ当惑していましたね、市役所が何をどう稼ぐのか、というような(笑)。しかし今は、産業振興全般だけでなく、例えば保健福祉分野でどう稼ぐのか、稼ぐための人材をどう育てるのか、というキーワードを念頭に各部局が取り組みを進めるようなマインドに変わってきました。やはり地方創生の基本は、地域・自治体が稼ぐ点にあると思いますし、実際に成果が現れつつあります。
――武内市長が指針として掲げた「構造的な未来戦略」は、そうした理念が反映されていると考えてよいでしょうか。
武内 そうですね、〝稼げるまち〟のビジョンに対し、どのようなステップ、どのような構造をもって実現を図るのか明確に示していく、数字にこだわる、この点を意識して同戦略を打ち出しました。