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国土強靱化実施中期計画の主要ポイント/国土強靱化推進室次長 山本 巧氏

やまもと たくみ/昭和41年12月12日生まれ、大阪府出身。京都大学大学院工学研究科修了。平成3年建設省入省、30年国土交通省道路局高速道路課長、令和2年同企画課長、4年東北地方整備局長、6年道路局長、7年7月より現職。
やまもと たくみ/昭和41年12月12日生まれ、大阪府出身。京都大学大学院工学研究科修了。平成3年建設省入省、30年国土交通省道路局高速道路課長、令和2年同企画課長、4年東北地方整備局長、6年道路局長、7年7月より現職。

 2025年6月、第一次国土強靱化実施中期計画が閣議決定された。今後26~30年度までの5年間、投資規模約20兆円強を目途に実施される。防災・減災は、平素の弛まぬ強靱化への取り組みなくしては決して実現できない。同計画はどのような点が新たなポイントとなるのか、山本巧次長に解説してもらった。




主要施策、五つの柱

――まずは国土強靱化政策の経緯について教えてください。

山本 国土強靱化の取り組みとしては、これまでに、三か年の緊急対策、五か年の加速化対策が実施され、全国各地で着実に効果が積みあがってきています。

 一方で、能登半島地震や全国各地での豪雨災害の発生など自然災害が激甚化・頻発化する中、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの巨大地震の発生リスクも高まっており、さらに加速的に進行するインフラの老朽化の対策も待ったなしの状況です。

 このため、2025年6月に閣議決定された、投資規模を20兆円強程度とする「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づき、国土強靱化の取り組みを切れ目なく推進していくこととしています。

 具体的には、5年間の計画期間中に、特に推進すべき施策として、五つの柱のもとに114施策毎に達成目標(KPI)を設定して進めることとしています。このために必要となる投資が概ね20兆円強程度となります。

――五つの柱のあらましをお願いします。

山本 まずは「国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理」。治水・治山施設等の整備、河川管理施設等の地震・津波対策、土砂災害・水害等の災害時における避難対策などが施策項目となります。

 次いで「経済発展の基礎となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」。交通・上下水道・通信・電力等のライフラインの老朽化・多重化対策を進めます。

 三つ目が「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」。国土強靱化を進める際にデジタル等の新技術を積極的に活用します。CCTVカメラや可搬型機器、衛星通信装置等による遠隔からのインフラ状況の確認、衛星やAIを活用した、線状降水帯・台風等の気象情報予測の高度化などを進めます。
 
 四つ目が、「災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化」。住宅・建築物の耐震化や保健・医療・福祉支援の体制・連携強化、立地適正化計画と連携したまちづくりの推進、等が主要項目です。

 最後が「地域における防災力の一層の強化」。国によるプッシュ型支援物資の分散備蓄の強化、避難所や教育の現場となる学校等の耐災害性強化、発災時における民間・NPO・ボランティア等の活動環境の整備、等々多岐にわたります。

資料:内閣官房国土強靱化推進室
資料:内閣官房国土強靱化推進室

――これら各施策のうち、いくつか強化すべき項目などはありますか?

山本 一つは、公共インフラの老朽化対策の一層の推進です。25年1月28日に八潮市で発生した道路陥没事故が、老朽化した下水道管の破損に起因するとみられるように、インフラ老朽化が加速度的に進む中、道路や上下水道等の公共インフラの老朽化対策を一層推進していく必要があります。二つ目は、「フェーズフリー」の考え方の導入です。キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー等を平時から登録制度に登録・データベース化することにより、発災時の迅速な支援が可能となるよう平時・危機時の境界無く両面で使える可動性コンテナの備蓄。三つ目は、避難所環境の改善など地域防災力の強化です。発災後の避難所においてトイレの充実や温かい食事などを提供できるよう、市町村における物資の事前備蓄を含めた環境整備も盛り込まれています。

――徐々に改善されているとは思いますが、確かにプライベート空間が確保されない避難所の様子等が災害のたびに繰り返し報道されます。ともすれば諸外国の避難所の方が、その点進んでいる部分もあるかと思われます。

山本 そうですね、避難所の改善は大きな課題の一つであり、国際基準から見ても不十分な面があると認識されていました。それに対し、石破前総理が24年11月の所信表明演説で、避難所においてスフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)を満たすよう表明されたのを機に、避難所での基準準拠が求められるようになりました。

 ただ、いざという時、被災現地に対応すべき資材が無いと困るので、それぞれの地域ごとにストックを保有し、緊急時いつでも展開できるように目指します。スフィア基準を満たす避難所を設置するために必要なトイレ、ベッド等の災害用の物資・資機材の備蓄をしている市区町村の割合を、24年度時点のゼロから30年時点で100%となるよう取り組みを進めます。

〝危機管理投資〟の一部として

――高市政権においても、国土強靱化の推進は重要政策であるとの位置付けは不変のようですね。

山本 「危機管理投資・成長投資による強い経済」の実現が高市内閣の政策運営の主要な一つの柱となっています。総理をヘッドに設置された日本成長戦略会議において、「危機管理投資、成長投資による戦略分野」の一つに、「防災・国土強靱化」が位置付けられています。国土強靱化の取り組みは、自然災害等から国民の生命・財産・暮らしを守るだけでなく、経済の発展基盤を支える交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化を通じて、強い経済を実現していく「危機管理投資」です。

 第1次国土強靱化実施中期計画においても、ライフラインの強靱化として、道路、上下水道、港湾などの公共インフラの老朽化対策などの官部門の取り組みのみならず、地域電力の安定供給を確保するための送電網の多重化やデータセンターの地方分散によるリスク分散といった民間部門の投資についても積極的に進めることとしており、官民による危機管理投資により、強い経済の基盤を作っていくこととしています。

 第1次国土強靱化実施中期計画については、令和8年度を初年度とする計画でありましたが、11月28日に閣議決定された「経済対策」において、「初年度については令和7年度補正予算から必要かつ十分な額を措置する」とされたところであり、前倒して取り組みを進めることとなりました。

資料:内閣官房国土強靱化推進室
資料:内閣官房国土強靱化推進室