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農地の未来を形成する「地域計画」の実践/農林水産省経営局長 小林大樹氏

こばやし だいき/昭和45年7月24日生まれ、兵庫県出身。東京大学法学部卒業。平成5年農林水産省入省、27年経営局協同組織課長、29年内閣官房内閣審議官(内閣総務官室)、令和元年政策統括官付総務・経営安定対策参事官、3年農林水産省大臣官房政策課長、大臣官房新事業・食品産業部長、本年7月より現職。
こばやし だいき/昭和45年7月24日生まれ、兵庫県出身。東京大学法学部卒業。平成5年農林水産省入省、27年経営局協同組織課長、29年内閣官房内閣審議官(内閣総務官室)、令和元年政策統括官付総務・経営安定対策参事官、3年農林水産省大臣官房政策課長、大臣官房新事業・食品産業部長、本年7月より現職。


 2025年春、将来の農業と農地の在り方について針路を示した「地域計画」が、全国の市町村で策定された。農業経営の環境が厳しさを増す中、同計画の確かな実践こそが、食料の安定供給という基本命題の基盤となる。小林大樹局長に、この「地域計画」の意義、そして今後のために何が求められるのか解説してもらった。



農業経営体、10年で半減

――現在、経営局の主要施策として各市町村における「地域計画」策定が推進されています。同施策のあらましと、その背景についてご解説いただけますか。

小林 背景として一番の問題点となるのは、やはり農業を担う方々の減少です。農水省では本年4月に、農業の経営体が、2020年時点の108万から、10年後の30年段階では54万へ半減するのではないかという見通しを示しました。一方で、食料の安定供給という基本は確保しなければならず、それには農業経営体が減少しようとも農業生産自体は維持していかねばなりません。そう考えると、今ある経営体にはより効率的な生産を模索していただき、かつ担い手を着実に確保していく必要がある、こうした問題意識が背景にありました。

 とはいえ、現実として生産性向上や担い手確保を求めるにあたり、地域に小規模な農地がバラバラに分散していると非常に効率が良くない、ならば農地中間管理機構、いわゆる農地バンク等を活用しながら、農地を集約化して省力による生産の実現を図るべきではないか、その集約化に向けた将来目標を具体的な目標地図に示したものが、この「地域計画」です。

――個人の生産者ではなく、文字通り地域内の協議の上で計画を作ることになりますね。

小林 はい、策定過程ではまず10年後の地域の農業の姿を想定した上で、その時にどの農地をどの担い手が利用するのかを関係者皆で地図上に落とし込んでいく〝目標地図〟の作成から始まります。その際、農地の集約が想定されたものの実際の担い手がいなければどう確保していくか、改めて必要な農業インフラ整備は何か等々、対応すべき課題も自ずと明らかになってきます。つまり当該地域における農業の将来像を描き、その実現に向けた対策や方法論を見える化するのが「地域計画」の要諦となります。

――なるほど、目前の農地をどうするかという局所的議論ではなく、地域農業全体というもっと大きな視点で話し合い、見通しを立てていこうということですね。

小林 計画がつくられれば、以後はその内容に沿って各生産者と農地の利用調整を行ったり、状況に応じた協力や連携、分担を検討していくことが可能となります。地域計画は農業経営基盤強化法に基づき、地域内での関係者による議論を前提に市町村が定めることとなっており、まずは本年3月末までを目途に全国の市町村へ策定を呼び掛けました。

――結果のほどはいかがでしたか。

小林 全国の市町村が策定した地域計画は約1万9000にのぼります。われわれが未来に向けて守るべきと想定していた農地は、ほぼすべてカバーされていました。私としても、まずは将来に向けたベースが構築されたと手応えを感じており、たいへん大きな意味があると思っています。一つの市町村で複数の地域計画を策定されたケースも多々ありました。われわれも、地元の皆さま方のご努力がこれらの計画数に反映されたと認識しています。とはいえ、取りあえずは現在がスタートラインです。

(資料:農林水産省)
(資料:農林水産省)

農地バンクの役割に期待

――では次なるステップとしましては。

小林 計画において農地集約の道程が示されたならば、今後はその内容に則り、具体的に集約を進めていただければと思います。が、集約について完成度が高い計画が策定できたのは全体の1割程度で、残る9割については、計画自体は作ったものの、実現に移すにはまだ協議して詰めるべき点や対応の目途が立たない課題が残るなど、内容としてそこまでの完成度に至っていません。

 それに対しわれわれは、地域計画を作って終わり、というのではなく毎年見直しをして完成度を高めていただく活動を展開しています。こうしたブラッシュアップは毎年実施していくべきかと考えています。

 また課題としてもう一つ多かったのが、自分の農地を10年後に誰が引き受けてくれるのか、担い手が貼り付けられない、というケースです。分析したところ、全国約3割の農地が担い手不確定の状況でした。

――地域によっても状況にかなり差異がありそうですね。

小林 確かに北海道などは、計画上、農地面積の約9割で将来の担い手確保の目途が立っているのですが、中国・四国地方では6割の農地が将来の担い手を位置付けられないなど、ご指摘の通り、担い手に関しては地域によって状況が大きく異なります。その点は地域計画のブラッシュアップを進める中で、地域を超えて担い手の確保を図る等、段階別にさまざまな工夫を凝らしていく必要があります。とはいえ、これまで担い手不足の問題を漠然と捉えていたところ、地図に落とすことで、地域の関係者間で具体的問題として認識された、という点で意義があると考えています。

――計画実行に対する支援などはいかがでしょうか。

小林 まずは地域で行われる農地集約に向けた各種活動に対する支援が一つ、それに加えて、集約化を図る上で欠かせない、農地バンクの充実も重要な支援策の一つです。特に令和8年度概算要求においては、農地バンクがより農地を引き受けやすくするなど機能の強化を盛り込みました。

――高齢農家の離農が増えてくると、農地集約における農地バンクの機能が重みを増していきそうですね。

小林 はい、農地バンクの存在、機能に対する期待はこれまで以上に高まっています。10年後に農地をこういうイメージで集めて農業を行いたいと計画する以上、具体的な農地集約に向けた権利設定を担うのは農地バンクですので。

――では、農地が集約された後はどのように。

小林 効率的な耕作に向けて、例えば水田を区切っているあぜ道などを取り払い大区画化するなど、必要に応じた土地改良について支援をしていきます。では、農地が集約されたあと、誰がそれを経営するのか。既存の担い手の方にとっては必然的に経営規模の拡大を意味することとなり、それに見合った農業機械の導入など追加投資を要する部分に対しても、支援を行います。

――集約に始まり、実際に耕作する段階まで伴走的に支援するわけですね。

小林 このとき、問題はやはり担い手確保の目途が立たない場合に帰着します。現実的には地域外から担い手を誘致することとなりますので、これについてもさまざまな支援措置を講じています。条件を整え魅力的な経営環境を整備することで、誘致もしやすくなると考えています。